2025.12.10 Wed
大学院TOPICS
【理工学研究科】海洋ベントス学研究室の大学院生2名が日本生態学会東北地区会の学生発表賞を受賞しました
理工学研究科 生命科学専攻の海洋ベントス学研究室(研究指導教員:阿部 博和 准教授)に所属する高橋 陽大さん(修士課程1年)と大見川 遥さん(修士課程2年)が、日本生態学会東北地区会第 70 回岩手大会において研究発表を行い、それぞれ最優秀発表賞と優秀発表賞を受賞しました。
日本生態学会東北地区会第70回岩手大会は2025年12月6日(土)〜7日(日)に岩手大学およびいわて県民情報交流センター(アイーナ)で開催され、80名を超える参加者が集いました。
▲最優秀発表賞を受賞した高橋 陽大さん
発表タイトル:「コケゴカイ(環形動物門:ゴカイ科)における生殖群泳と生殖変態の初記録—長年知られなかった繁殖生態の解明—」
発表者:高橋 陽大・上野 綾子(日本国際湿地保全連合)・菅 孔太朗(岩手医科大学)・ 阿部 博和
【発表概要】
コケゴカイは国内に広く分布する「日本の干潟を代表する多毛類(ゴカイの仲間)」ですが、1940年に国内で初めて記録されて以降、繁殖生態については未解明のままでした。コケゴカイが属するゴカイ科の多毛類では、繁殖時に遊泳に適した形に変化(生殖変態)し、雌雄が同調して遊泳しながら放卵放精を行う生殖群泳という繁殖方法が多くの種で知られていましたが、コケゴカイではこれまで遊泳の記録はなく、生殖群泳は行わないものと考えられていました。今回の研究では、コケゴカイの繁殖生態を明らかにすることを目的として調査を行ったところ、本種が夏の夜中に生殖群泳を行うことが初めて観察され、そのタイミングや群泳の典型パターン、独特な生殖変態の様式について明らかとなりました。この研究により、国内初記録から80年間以上にわたって謎であったコケゴカイの繁殖生態の核心部分が解明されたと言えます。
発表者:高橋 陽大・上野 綾子(日本国際湿地保全連合)・菅 孔太朗(岩手医科大学)・ 阿部 博和
【発表概要】
コケゴカイは国内に広く分布する「日本の干潟を代表する多毛類(ゴカイの仲間)」ですが、1940年に国内で初めて記録されて以降、繁殖生態については未解明のままでした。コケゴカイが属するゴカイ科の多毛類では、繁殖時に遊泳に適した形に変化(生殖変態)し、雌雄が同調して遊泳しながら放卵放精を行う生殖群泳という繁殖方法が多くの種で知られていましたが、コケゴカイではこれまで遊泳の記録はなく、生殖群泳は行わないものと考えられていました。今回の研究では、コケゴカイの繁殖生態を明らかにすることを目的として調査を行ったところ、本種が夏の夜中に生殖群泳を行うことが初めて観察され、そのタイミングや群泳の典型パターン、独特な生殖変態の様式について明らかとなりました。この研究により、国内初記録から80年間以上にわたって謎であったコケゴカイの繁殖生態の核心部分が解明されたと言えます。
▲日本生態学会東北地区会第70回岩手大会で
発表を行う高橋さん
【高橋 陽大さんのコメント】
今回の研究発表は多くの方々に支えられて成し遂げられたものでしたので、最優秀発表賞という名誉ある賞を頂戴し、大変嬉しく光栄に思います。本研究では、コケゴカイの繁殖生態を明らかにするために真夜中の干潟で長時間の観察を頻繁に行う必要がありましたが、このような過酷な調査にもかかわらず研究室のメンバーは快く調査に協力してくれました。また、共同研究者をはじめ多くの方々から重要なアドバイスをいただき、自分の研究を深く見つめ直すことができました。この場を借りて感謝申し上げます。
今回の学会では、陸の生態学分野の研究を行っている方々が多く集まっており、「ゴカイ」のことを知らない方がほとんどだったと思います。その中で、これまでの研究活動や学会発表の経験を通して培った「伝える力」を最大限に発揮し、多くの方にゴカイ類の生態の魅力を伝えることができたと実感しております。この受賞を励みとし、今後はさらに研究を発展させ、論文も執筆できるように精進してまいります。
今回の研究発表は多くの方々に支えられて成し遂げられたものでしたので、最優秀発表賞という名誉ある賞を頂戴し、大変嬉しく光栄に思います。本研究では、コケゴカイの繁殖生態を明らかにするために真夜中の干潟で長時間の観察を頻繁に行う必要がありましたが、このような過酷な調査にもかかわらず研究室のメンバーは快く調査に協力してくれました。また、共同研究者をはじめ多くの方々から重要なアドバイスをいただき、自分の研究を深く見つめ直すことができました。この場を借りて感謝申し上げます。
今回の学会では、陸の生態学分野の研究を行っている方々が多く集まっており、「ゴカイ」のことを知らない方がほとんどだったと思います。その中で、これまでの研究活動や学会発表の経験を通して培った「伝える力」を最大限に発揮し、多くの方にゴカイ類の生態の魅力を伝えることができたと実感しております。この受賞を励みとし、今後はさらに研究を発展させ、論文も執筆できるように精進してまいります。
▲優秀発表賞を受賞した大見川 遥さん
発表タイトル:「行動観察による海産等脚類の球体化の捕食回避機能および乾燥耐性機能の評価」
発表者:大見川 遥・阿部 博和
【発表概要】
等脚類では、ダンゴムシのように球体化を行う種が陸と海で見られ、球体化は複数の系統で独立に進化した特徴であるといえます。陸のダンゴムシ類では、「球体化は乾燥や天敵から身を守るため」と説明されることが多いですが、どれほど生存率の向上に寄与しているのか定量的に評価した例はほとんどありません。
今回の研究では、海の等脚類であるイソコツブムシ類の球体化が捕食回避として働くのかを検証したところ、球体化がカニ類に対する捕食回避行動として機能していることが示されました。また、イソコツブムシ類とオカダンゴムシの球体化に乾燥から身を守る機能があるのかを検証したところ、両方の種において乾燥条件に反応して球体化行動を行う可能性は低いことが示されました。以上の結果から、等脚類の球体化は乾燥から身を守る手段としてではなく、捕食者に対抗するための防御手段として進化した可能性が考えられます。
発表者:大見川 遥・阿部 博和
【発表概要】
等脚類では、ダンゴムシのように球体化を行う種が陸と海で見られ、球体化は複数の系統で独立に進化した特徴であるといえます。陸のダンゴムシ類では、「球体化は乾燥や天敵から身を守るため」と説明されることが多いですが、どれほど生存率の向上に寄与しているのか定量的に評価した例はほとんどありません。
今回の研究では、海の等脚類であるイソコツブムシ類の球体化が捕食回避として働くのかを検証したところ、球体化がカニ類に対する捕食回避行動として機能していることが示されました。また、イソコツブムシ類とオカダンゴムシの球体化に乾燥から身を守る機能があるのかを検証したところ、両方の種において乾燥条件に反応して球体化行動を行う可能性は低いことが示されました。以上の結果から、等脚類の球体化は乾燥から身を守る手段としてではなく、捕食者に対抗するための防御手段として進化した可能性が考えられます。
▲日本生態学会東北地区会第70回岩手大会で
発表を行う大見川さん
【大見川 遥さんのコメント】
この度は優秀発表賞を頂くことができ、大変光栄に思います。これまで続けてきた研究活動が受賞という形で実を結び、嬉しい気持ちでいっぱいです。このような賞をいただけたのも、普段から海洋ベントス学研究室のメンバーとお互いの研究について議論し合える環境があったからだと思います。研究活動の中では、一人で実験を行い、一人で熟考するという場面が多いですが、その考えを多くの人と議論することで研究のクオリティがより良いものへと洗練されていくと実感しています。そのため、研究について議論できる仲間がいる今の環境は非常にありがたく、感謝の気持ちでいっぱいです。
次の目標は今回の研究結果を論文として発表することです。研究は学会で発表して終わりではなく、論文として世間に公表することで初めて人類共通の知識となります。そのため、「受賞したから満足だ」とならないように、より一層気を引き締めて研究活動と向き合い、論文執筆に励みたいと思います。
この度は優秀発表賞を頂くことができ、大変光栄に思います。これまで続けてきた研究活動が受賞という形で実を結び、嬉しい気持ちでいっぱいです。このような賞をいただけたのも、普段から海洋ベントス学研究室のメンバーとお互いの研究について議論し合える環境があったからだと思います。研究活動の中では、一人で実験を行い、一人で熟考するという場面が多いですが、その考えを多くの人と議論することで研究のクオリティがより良いものへと洗練されていくと実感しています。そのため、研究について議論できる仲間がいる今の環境は非常にありがたく、感謝の気持ちでいっぱいです。
次の目標は今回の研究結果を論文として発表することです。研究は学会で発表して終わりではなく、論文として世間に公表することで初めて人類共通の知識となります。そのため、「受賞したから満足だ」とならないように、より一層気を引き締めて研究活動と向き合い、論文執筆に励みたいと思います。