2021.06.11 Fri
研究TOPICS

【大発見!!】沿岸域海底の環境保全のために

本学理工学部の高崎みつる教授が、海底生態系の回復を導く細菌のパートナーシップを大発見しました!!
今回の成果は、海底堆積物の嫌気生態系機能が回復する過程を初めて解明したことで、沿岸域海底の新しい保全・管理技術の確立に大きく貢献することが期待されます。
なお、この成果の詳細は、2021年6月3日(米国時間)に国際学術誌「Environmental Science & Technology」にオンライン掲載され、世界に発信されます。
【高崎みつる教授のコメント】
まず、この研究が取り上げられることが大変嬉しいです。
東日本大震災は、石巻のみならず、日本に大きなダメージを与えました。しかし震災後、海の底から普段見ることができないヘドロが現れたことで、思わぬ大発見につながりました。
研究の過程で、まず、酸素を利用して増殖する細菌から研究を始めました。こちらはすぐに答えが出ましたが、深いところに酸素を送るのは非常にエネルギーがかかるので、実用性がありません。そこで、地球誕生に作用している化学合成細菌(酸素を使わずに化学合成をすすめる細菌)を使う方向に変えました。
まだ海底にはヘドロが溜まっています。ヘドロを土砂に変え生物が住みやすい環境を整える研究が、「どうやったら海の生態系を支えられるか」という大きなテーマについて考えるきっかけとなればと思います。
最後に、この研究ができたのは、パートナーシップを結んでいただいた産業技術総合研究所や東京農工大学と、深い信頼関係友情があってこその成果です。
この場をお借りして、感謝申し上げます。これからもよろしくお願いいたします!
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【概要】
国立研究開発法人 産業技術総合研究所【理事長 石村 和彦】(以下「産総研」という)環境創生研究部門【研究部門長 鳥村 政基】環境生理生態研究グループ 青柳 智 研究員、堀 知行 主任研究員は、学校法人専修大学 石巻専修大学【学長 尾池 守】理工学部 高崎 みつる 教授と国立大学法人 東京農工大学【学長 千葉 一裕】片山 葉子 名誉教授と協力し、東日本大震災の津波によって打ち上げられた海底堆積物を試料に、硫黄成分のやり取りに関わる細菌同士の協力関係(パートナーシップ)を明らかにし、海底の嫌気生態系が持つ有機物の分解機能が回復していく過程を解明した。
海底に堆積した有機物層では、上層のごく一部分を除いて酸素が枯渇しているため、嫌気性微生物が有機物の分解を担っている。しかし、過剰な有機物の流入が原因で、嫌気生態系が十分に機能せず、海底環境が悪化することがある。
本研究は、分解機能が低下した海底堆積物に硝酸塩を添加することで(概略図中央左)、硫黄酸化細菌と硫酸還元細菌の間で炭素源の伝達を介した協力関係が形成され(概略図中央右)、その結果生じる多様な嫌気分解微生物の活性化(概略図右端)を明らかにした。