研究科長座談会

人生100年時代の生涯学習に、
人文社会科学系の総合知を。
相互に刺激し合い広がる、多様な学びの場。

——現代社会において、専修大学大学院がリカレント教育に取り組む意義とはなんでしょうか?

坂口:リカレント教育やリスキリング等、社会人の学び直しが注目される昨今、本学も社会のニーズに対応するためリカレント教育に取り組んでいます。生涯学習時代へと移行し、人材の需要もグローバルからローカルへ、効率性重視から多様性重視へと変化する中で、社会人の価値観も変化しています。新しい経済・社会の変化に対応し、社会人として自分なりの問題解決を図りたいと大学での学び直しを志す方々に、学びの場を提供することが我々の役割だと考えています。

馬塲:人生100年時代と言われる中で、職業を変えたり、経験を活かして異なる分野へ展開したりすることへの期待感が強まっていると感じています。生涯変わらず同じ仕事を続ける社会人は実はそれほど多くなく、働くうえで限界を感じ、少し違うことに取り組みたいと思ったときに、新たな道へ踏み出すきっかけの一つとして、学び直しがあります。ここまで社会科学系や人文系の専門家が揃っている大学教育機関は稀だと自負していますから、その特性を活かして貢献していきたいですね。

鹿住:近年はビジネススクールや専門職大学院が増えています。それらも社会人のネットワークを広げる場として大いに役立っていると思いますが、本学には修士課程を修める大学院だからこその多様な刺激があります。学部から進学してきた若い学生と実務経験豊富な社会人がともに学ぶ機会は、双方にとって非常にプラスになるでしょう。

——具体的にはどのような学びの場として展開していきたいですか。

坂口:一つは、論文を書くということを通して、学びを体系化することを体験してほしいですね。大学院では、広く浅い学びから、自分自身の興味・関心・課題を発見し、掘り下げていく学びへと進化させることができます。経済学分野では、産業・企業、労働、環境、ジェンダー、国際など現実経済に即したテーマを扱っています。それらを実生活と繋げながら学びを深め、自分の主張を作り出すことで、知の社会的な広がりを感じてほしいと考えています。

内藤:法学分野でも、従来よりさらに広い範囲での法律家の需要が高まっているという背景があります。現在、本学では行政書士の業界団体と協定を交わし、科目等履修生として受け入れ、法理論的・実務的視点から学びを提供しています。このように、より広い範囲で知識を必要としている専門職が増加しているのです。これに対応するため、研究者たちが蓄積してきた研究業績やスキルを駆使し、再度スキルを高める場として展開していきたいですね。

伊藤:文学研究科ではリカレント教育の一環として、2023年4月、日本語日本文学専攻において日本語プロフェッショナルコース(修士課程)を設けました。アナウンサーやライター等の日本語のプロを対象に、自らのスキルを言語学的視点から再度分析し、ブラッシュアップすることを目標としています。今現在の日本語の学びを知ってもらうことで、現場に生かし、知識をグレードアップする場として活用していただきたいです。

馬塲:経営学研究科では、ビジネスマンの気付きの場になればと考えています。現実にビジネスで悩んでいる方が、我々研究者と話す中で気付きを得て現場に戻っていくというシーンは多く、大学院の経営学のニーズは非常に高いのではないかと感じました。大学院として、専門家と連携を取りながらワンランク上の価値をつけて学びを展開し、社会人の知識需要を満たすべく検討を重ねています。

鹿住:商学研究科にも、実務経験が豊富な教員陣が揃っています。商学の全体的な学びに加え、実務に即した面を学べることが大きな魅力です。また、現場で活躍する社会人だけでなく、70代の受講生の方は、退職後に自身の振り返りの場として活用されています。大学院だからこそのメリットを生かして、知識の体系化に取り組んでほしいですね。

——専修大学大学院ならではの魅力・付加価値とはなんでしょうか。

内藤:本学は経済・法・文・経営・商の5研究科を擁する人文社会科学系の総合大学です。これらが連携し、人文社会科学の総合知を連関性を持たせながら学べるというのは非常に大きな特徴です。単位互換や他科履修も可能ですから、一つの分野だけでは捉えられない側面が、別分野の学びを取り入れることで見えてくるでしょう。

鹿住:地域に広かれた大学であることも魅力の一つですよね。神保町にある神田キャンパスの立地も社会人にとっては利便性が高いですし、オンライン受講などより学びやすい環境が整ってきています。学生と社会人が触れ合いながら学ぶことで相互に刺激を受けられるメリットがあります。

伊藤:学生と社会人が刺激を受け合っている姿から、教員もまた良い刺激を受けるんですよ。教員陣は質・量ともにとても充実していると思います。

内藤:大学は学問の共同体です。より多様な人たちと自身の経験や課題を共有することで相互かつ総合的に知を追究できるというのが大きな魅力でしょう。

——今後の展望をお聞かせください。

坂口:大学院というと、研究者養成のイメージを持つ方が多いと思います。だからこそ、リカレント教育に大学院を活用できるということをより多くの人に知っていただきたいです。学びたい内容と進学先がうまく結びつかず悩む人もいますから、より良い選択ができるようメニューの明示を検討しています。

鹿住:より通いやすい仕組みづくりも課題です。社会人への情報告知だけでなく、企業への理解促進も図ることで、よりリカレント教育に参加しやすい社会づくりを進めたいです。

馬場:本学では、21世紀ビジョンとして「社会知性(Socio-Intelligence)の開発」を掲げています。社会知性の中には、倫理観や人間性、広い視野といったことを標榜していますから、我々教員は、これからの時代に地球的視野で考えることのできる人材の輩出を目指していきます。

内藤:困難な課題が山積みになり、混とんとした現代社会において、倫理観は非常に重要ですよね。それらを普遍的な問題に落とし込み、個を俯瞰することがリカレント教育には必要であると考えています。これからの社会に希望を持ち、将来を語れる人材を育成していきたいですね。

——これからリカレント教育に取り組もうと考えている社会人の皆さんにメッセージをお願いします。

坂口:「論文を書く」ことは、自らの主張を次世代に受け渡す作業です。自分の研究が橋渡しとなり、社会的貢献を体験するチャンス。自分を広げるきっかけとして、ぜひリカレント教育の場を活用していただきたいです。

内藤:ぜひ、果敢に知的なチャレンジをしてみてください。

馬場:もし何か興味を持っている事柄があるなら、その知的好奇心をきっかけに、まずは学びの扉を開けてみませんか。その学びの追求が、あなたの人生を豊かにしてくれるでしょう。