ご挨拶

Welcome to the dawn!

 私たちは,新たな融合的心理科学の創成を目指します。平成23年度から5年間,文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業,研究拠点を形成する研究に採択されました。「融合的心理科学の創成:心の連続性を探る(Frontiers of Integrated Psychological Science: Exploring Mind Continuity)」が本研究プロジェクトとなり,人間科学部心理学科の専任教員に加えて,東京大学から長谷川寿一教授を迎え,本学社会知性開発研究センター内に心理科学研究センター(Center for Psychological Science)を立ち上げました。

 心理学は,実験心理学の祖であるWilhelm Maximilian Wundt が1879年にドイツのライプチヒ大学に初めて心理学研究室を設立して以来,近代心理学として発展し続けています。学問として発展していく中で,知覚,認知,学習,生理,発達,社会などに細分化していきます。20世紀後半にはDarwinの進化論から端を発した進化心理学が確立します。進化心理学は研究手法に,いち早くベイズ定理(Bayes’ Theorem)を取り入れています。

 一方で応用心理学と言われる分野は,臨床心理学,犯罪・矯正心理学,教育心理学,異常心理学(わが国では広がっていませんが),リハビリテーション心理学をはじめ,広告心理学,災害心理学,環境心理学,スポーツ心理学など数多くの「心理学」が存在しています。これだけ細分化してしまうと,もはや学問大系としての心理学が薄れてしまっている感は否めません。

 なおも,心理学を学問として,学生へ向け社会知性の開発の一役を担うためにも,融合的心理科学を創成し,今こそ心理学大系を構築すべきと考えます。では,どうすれば融合的心理科学を創成し得るのでしょうか。本学人間科学部心理学科は,知覚,認知,学習,生理,臨床,そして,心理統計の専門家を擁するわが国でも希少かつ貴重な体制を有しています。細分化した心理学を大系たるためには,まず各分野で共通する手法を用いることによって,研究大系ができあがり,さらに研究から得られた知見を教育にフィードバックすることにより,本学が掲げる社会知性の開発にも寄与するものと考えます。共通する研究法として,上述の通り,すでに進化心理学では取り入れられているベイズ定理を用いることで,細分化された心理学を融合的心理科学として学問大系たることができるのではないかと考えます。

 本プロジェクトはまさに,新たな融合的心理科学の創成,いわば心理学大系の夜明けなのです。

心理科学研究センター研究代表者 人間科学部心理学科教授
長田 洋和


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