職種について知ろう

 これから就職先を探していくにあたってもうひとつ重要な視点に「職種」があります。職種とは、実際に企業の中で日々行う“仕事”をその内容によって分類したものです。職種の数は実は数百種類もあり、皆さんがこれまで聞いたこともないような仕事がたくさんあります。自分が社会人になったら、どんなことを日々の仕事として行ってみたいのか、また、自分の特性や希望にあった仕事を探そうと考えた時、職種は大きなヒントになります。

職種についての考え方

 職種研究を進めるにあたっては、以下のような点に注目してみましょう。

1 .まずは「募集職種」を調べよう

 自分が携わってみたいと思っている職種系統(営業職、スタッフ職、研究職、開発職等…)をその企業が募集しているのかを調べてみましょう。また、やってみたいと思っている職種であっても、新入社員からいきなり携わることができない難しい職種も中にはあります。その会社の中で、どのようなキャリアを積んでいけば、自分が希望するような仕事に携わることができるのかも同時に調べてみましょう。

2 .具体的な業務内容を知るための重要なヒント「顧客」

 通常、会社の仕事はどんな部署・職種であれ「顧客(クライアント)」がおり、その顧客への対応に多くの業務時間を費やすことになります。営業や技術職ならば、その製品やサービスを求めている直接のお客様、また、内勤の間接部門であっても、自社の社員がある意味の「顧客」ということにもなります。日々、どんなお客様に対応する仕事なのかが、その仕事の業務内容を大きく左右するひとつの要因でもあります。業界や企業によって、顧客層が変わってきますので、「自分が対応すべき“お客様”とはどんな人たちなのか?」に注目して職種研究を進めてみましょう

3 .職種は長期的なスパンで考えよう

 ずっと一部署、一職種のみに携わり続けるということはあまりありません。いくつかの部署や仕事をこなす、いわゆる「ジョブローテーション」をしながら経験を積み、新たな難しい仕事に取り組んでいくのが仕事になります。新卒でまず携わる仕事と、そこからどのように経験を積み仕事の幅が広がっていくのかまで想定して職種のことを調べる必要があります。
 OB・OG、あるいは社員の方に、どんなプロセスで将来にわたって仕事をしていけば良いのかを確認してみると良いでしょう。なるべく大きな絵を描いて職種について考えてみましょう。

それぞれの職種の中身は?

 文系の学生が目指す職種にはどんな種類があるのでしょうか。また、具体的にどのような仕事に携わることが一般的なのでしょうか。仕事の大まかな種類ごとに見ていきましょう。

「考える」仕事

 まだ世の中にないもの、これから生み出されていくものを構想し、新しい価値を創造していく仕事です。つまり「市場を知り、売れるサービスや製品を作る仕組み」を考えることが仕事のミッションになります。

商品企画
世の中のニーズをキャッチし、“売れる”新商品・サービスを生み出す仕事です。市場の情報収集、アイディア出しから始まり、経営陣へのプレゼンテーション、生産部門との調整、価格決定、販売戦略と業務は多岐に渡るため、社内のあらゆる部門との折衝が必要とされます。アイディアやセンスだけでは務まらない仕事です。
市場調査
企業が販売活動をより有効にするために、市場に関する様々な情報を収集する仕事です。調査の対象や方法は様々で、消費者のライフスタイル動向、購買意向、価格の動きなどをアンケートで統計的に分析したり、直接インタビューしたりしてその動向をつかみ「売れる商品を作る仕組み」を構築します。
「つくる」仕事

 新たに構想されたサービスや製品を実際に“顧客の手元に届く商品”として完成させるまでのプロセスを担います。商品化計画、販売計画、価格設定、販促手段など業務は多岐に渡ります。またIT分野では、システムエンジニアが構想した要件をプログラムとして組み上げるプログラマーという仕事もあります。

マーチャンダイザー
企画・構想された商品やサービスを実際の顧客の手元に届けるための具体的な商品化計画・販売政策を担います。「何をどのようにお客様の手元に届けるのか」という、商品・サービス販売構想の権限の一切を握るため業務範囲は非常に広く、営業・販売経験者がつくケースが多い職種です。

「つくる」仕事

プログラマー
技術系職種ですが、理系学生だけでなく文系出身者も非常に多く活躍しています。システムエンジニアが顧客から持ち帰った要件をプログラム技術を駆使してシステムとして組み上げ解決する一連の過程には、プロジェクトマネジャーやITシステムコンサルタントというより専門的なIT職種もありますが、まずプログラマーとしての基礎を学んでからキャリアアップしていくケースが一般的です。
「販売する」仕事

 販売する仕事は企業の中核に位置する主軸の職種であると言えます。販売する仕事はどの企業でも花形の職種ですが、その理由は“直接利益を生み出すことのできる唯一の職種”だからです。この職種につく人の動きに企業の盛衰はかかっているため人材に対するニーズも高く、また、売れる現場を知っているということからその後のキャリアアップの道が広く開かれている職種でもあります。

営 業
あらゆる企業の中核に位置する職種で、顧客に商品やサービスの必要性を提案し、信頼関係を築き上げていく点が特徴です。営業職には企画職の色合いもあり、後のキャリアアップの際に営業職での経験を重視する企業が多いのは、常に商品・サービスの最前線で顧客と折衝を行ってきた実績が重要であるためです。

「販売する」仕事

広報・IR
企業と商品のイメージを上げる、いわば「値段のつかない価値」を生み出す仕事です。情報発信する対象は一般顧客に限らず、社員や家族、株主や地域住民など多岐に渡り、常に広報制作のコストを上回る広報効果を生み出すことが求められます。
システム
エンジニア
プログラマー同様、文系出身者が非常に多い職種です。顧客の業務を分析したり、プログラマーを束ねてシステム開発プロジェクトを指揮したりと、ITを駆使して顧客に問題解決の方法を提案するため、コンピューター知識もさることながら、顧客のかかえる問題を正確に分析し、適切な解決手段を提案する点で営業職に通じる仕事をこなすことが多い点が特徴です。
「フォローする」仕事

 フォローする仕事は、基本的にヒト・モノ・カネ・情報といった企業活動を円滑にするための要素を総合的に管理し、企業全体に対するサポートを行う仕事です。「内勤職の業務負担は軽い」と勘違いする人もいますが、うまくいって当たり前、逆に社内で問題が起これば責任が問われる重要な仕事とも言えます。

財務・経理
いずれも企業のお金を扱います。経理は日々のお金の出納、給与の支払いなどルーチンの仕事が多く、財務はもう少し大きなお金を扱い、未来の企業経営を数字で表す仕事です。会計学の専門知識が重視され、高い専門性が求められます。

財務・経理

総務・人事
企業活動全体をサポートします。総務は株主総会、取締役会などの重要会議の運営や社員名簿、株主名簿、印鑑、不動産、動産などの管理、社内規則の改定などを、人事は社員採用、教育研修、労務管理といった、働く人に関わる仕事を全般的に行います。

総務・人事

経営企画
将来の企業像を描きます。常に変化している社会の動きに対応し、社内の「ヒト・モノ・カネ・情報」をいかに活用して会社経営を発展させていくか、大きな経営戦略を策定するのが主な業務です。経営層の直轄として置かれていることが多い部署です。

経営企画

職種選択に関するアレコレ

1.業界・企業によって違う職種の中身

 同じ「営業職」という職種であっても、業界や企業によって実際に行う仕事の内容は大きく変わってきます。例えば、顧客のところに直接出向く営業もあれば、ショールームを訪れた人に対して提案を行う営業、個人を相手に行う営業、法人を相手に行う営業など、扱う商品・サービスによってそのやり方は様々です。実際に自分がどんなスタイルで仕事を行うことになるのかを知ることが、職種研究ではとても重要です。

2.職種別採用

 企業によっては、採用試験の申込時に「どの職種で受験するか」を選択させるケースがあります。後の採用試験で、なぜその職種を選んだのかを詳細に聞かれることになりますので、職種をぼんやりと名前だけで把握するのではなく、実際に何をやるのか、なぜその職種を選んだのかを明確にしてから採用試験に臨むことが求められます。

3.コース別人事管理制度について

 企業によっては、勤務地・昇進・教育訓練などの雇用システムをコース別に分けて採用を行っているケースがあります。

名 称 コースの特徴
総合職 企業の基幹となる業務に携わり、企画立案、対外折衝など総合的な判断を要する業務に従事します。将来の幹部候補になるため色々な部門を経験します。転居を伴う異動があり、昇給、昇進は他のコースに比べ早くなっています。
準総合職 総合職に準ずる業務に従事します。特定エリア内での異動はありますが、転居を伴う異動はありません。地域限定総合職、特定総合職などと呼んでいる企業もあります。
一般職 主に定型業務に従事し、総合職の補助的な仕事を行います。転居を伴う異動はなく、昇給・昇進が限られるケースが多くなっています。
専門職 医者、公認会計士、不動産鑑定士、秘書、キャリアカウンセラー、アナウンサー、デザイナーなど資格や研修を受けて専門的な能力を備えた人が就く職種です。