学長挨拶
2025年9月より、学長に就任することになりました、馬塲杉夫(Baba Sugio)です。歴史ある大学の学長の任にあたり、双肩にかかる重みをずっしりと感じております。専修大学は、1880(明治13)年に創設されました。相馬永胤、田尻稲次郎、目賀田種太郎、駒井重格の4人の創立者たちは、アメリカのコロンビア大学、エール大学、ハーバード大学、ラトガ-ス大学に留学し、帰国後、自ら学んだ経済学や法律学を社会に還元すべく「専修学校」を創立しました。当時、官立の専門学校には、高い学費と、「洋語に達し、原書に通ずるにあらざれば就学するを得ざれ」、という二つの大きな障壁が設けられていました。創立者たちは「創立趣旨」のなかで、こうしたハードルを取り除き、広く学ぶ意欲のある学生を募ると、専修学校創設の意義を高らかに謳いあげています。つまり、日本語による専門教育を展開することにより、近代国民国家の屋台骨を支える人材を幅広く育成しようとしました。
創立から145年以上が経過したとはいえ、本学の歴史は決して平坦なものではありませんでした。なかでも関東大震災や第2次世界大戦の惨禍、2011(平成23)年の東日本大震災、近年ではコロナ禍など、さまざまな困難に直面した歴史を持っています。しかしこれらの困難を克服し、その都度再起することができたのは創立者たちの大学への熱い想いと、それを受け継いだ教職員・卒業生・学生、そのご父母・保護者たちの尽力によるものでした。これからも関係各位の期待に応え続けていきたいと思っております。
本学では21世紀ビジョンとして「社会知性の開発」を掲げ、創立者たちの志を再解釈し、新しい時代にふさわしい高等教育機関としての教育目標を提起しました。それは現代の社会に生起するさまざまな課題に対して地球的視野に立って、深い人間理解と倫理観を持ちながら、自ら主体的に課題を発見し、進んで解決する能力を身につけることです。こうした目標に基づき、本学では学部・学科の新設や再編を積極的に推し進め、「社会知性の開発」の可視化及び具現化を図ってきました。
近年では、2022(令和4)年からは全学部で「Siデータサイエンス教育プログラム」を開始し、2023(令和5)年度からは「応用発展レベル」も展開いたしました。Society5.0で必須のスキルを全学部で修得できるように整えたこのプログラムは、おかげさまで文部科学省「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度(応用基礎レベル)」に全学が認定されました。社会知性の開発を支えるスキルとなることを確信しております。
こうした大学づくりには、キャンパスの整備も避けて通れません。時代の要請に応えつつ計画的に整備を進める中、直近では創立140周年の2020(令和2)年に、専修大学の新たなシンボルとなる神田キャンパス10号館(専修大学140年記念館)が誕生しました。生田と神田の2つのキャンパスが知の発信拠点としての役割を果たしつつ、地域に開かれた空間としての機能を担っていくことも期待しております。また、2024(令和6)年度より「SiUグローカル・スマートキャンパス」の運用が本格的に開始となり、必要な時にいつでも、どこからでもデジタルアクセスを通じてクラウドや情報資源を利用できるようになったほか、AIが支援する「e学修ポートフォリオ」を全学生に提供し、将来の進路や適性に合わせた履修科目選択を支援することも計画しています。
これらの学修環境整備に加え、国家公務員採用総合職試験をはじめとする各種公務員採用試験や公認会計士などの資格取得のための講座等によるバックアップ体制も着実に充実していっており、目覚ましい成果をあげています。加えて、キャリア形成支援、就職支援という万全のトリプルサポート体制を組み、それぞれの局面で学生が社会知性の開発を実現していくための援助を惜しみません。
社会知性の開発に近い取り組みであるSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)へも積極的に取り組んできました。本学での日々の講義やゼミ活動に加え、本学が「カーボンニュートラル達成に貢献する大学等コアリション」に参加する大学として、キャンパス・地域・人材育成に関わるアクションの強化も継続していきます。
本学の社会知性の開発を目指したあらゆるプログラムを通じた成長体験を積み重ねることによって、入学した頃と比べて、卒業時には見違えた自分に出会える大学が専修大学です。これからも、「社会知性の開発」の具現化を引き続き加速し、教育・研究の発信力を強め、専修大学がさらなる飛躍を遂げるよう全力で取り組んでまいります。
専修大学長 馬塲 杉夫
2025年9月掲載