キャンパスハラスメントコラム 2019年度

なにがハラスメントか(ニュース専修2020年3月号掲載)

2019年秋のオペラ来日公演でちょっとしたハプニングがありました。予定されていた4公演のうち3公演が終了し、残り1公演というタイミングで主役のテノール歌手が突然降板したのです。公式発表では体調を崩したためとされました。オペラ公演でキャスト変更は珍しいことでもないのですが、それまでの公演を元気に演じていた彼が急に体調を崩したというのは腑に落ちない感じがしました。
数日後、イギリスの大衆紙が「彼は出演者に痴漢行為を行ったため降板させられた」と報じました。彼はカーテンコールで妊婦役だったダンサーの詰め物をしたお腹を指で突いたようなのです。その場にいた友人は、何かもめているような感じはしたけれど、特に問題とも思わなかったと言います。数ヶ月たってオペラ劇場による調査結果が出ました。結果はクロ。彼はそのオペラ劇場の公演から降板となりました。
観客の目前で起こった「事件」、彼自身はハラスメント行為を行なったという意識はもちろんなかったでしょう。その「事件」を目撃した何千という観客もまさかその行為がハラスメントとは思いませんでした。それまでに被害者側と彼の間で何らかのトラブルがあったのかもしれません。ともかく、たった一瞬の行為で彼はキャリアの多くを失うことになってしまったのです。どういった行為がハラスメントにあたるのかは、それぞれがどのように感じるかによるという顕著な一例だったと言えるでしょう。

(キャンパス・ハラスメント対策室員 砂山 充子)

混浴の理論とハラスメント(ニュース専修2020年1月号掲載)

明白なセクシュアル・ハラスメントや人格否定の発言が言語道断なのは当然ですが、そうでなくとも「これはハラスメントか」という微妙な場面があります。私の担当する刑法の講義では、難解な概念の理解促進のために度々例えを用いますが、その過程でヒヤッとした経験があります。

刑法では、故意と過失をどう区別するのかという問題があります。講義では、「二つの段階の別々の審査を経て区別される」と説明するのですが、「一度区別したものを、なぜまた区別する必要があるのか」などとなかなか伝わらないことから、師匠の受け売りの「混浴の理論」で補足しています。「故意は男、過失は女。入り口で男女の区別は一応するが、混浴を認めるので温泉内では男女が混在している。だからもう一度区別の必要がある」との例えです。ここでは、入り口での故意・過失の区別は完全ではないと理解してもらえば十分なのですが、うっかり「入り口で男の容貌だと思ったら、実は女だった」と余計な説明を……。

LGBTにも配慮すべきご時世では、「容貌だけで男女を区別するのか」などと学生にあらぬ誤解を与え、例えの意図に反して別の問題を起こしかねないと、後の説明をごまかしたことがあります。例えに成功すれば「旨みなる方便」にもなりますが、教員として一言一句に注意しないと思わぬ陥穽に陥ることにもなります。講義中の発言で不快な思いを抱く学生がいるかも知れないと自戒し、微妙なラインにも気を払いたいものです。

 (キャンパス・ハラスメント対策室員 稲垣 悠一)

キャンパスライフ充実していますか?(ニュース専修2019年11月号掲載)

皆さんは学業や私生活、どんな大学生活を送っていますか?
4年間はあっという間に過ぎてしまいます。必要単位さえ修得できれば卒業できてしまいますが、こんな自由な時間は社会に出るとなかなかありません。自分と向き合える大切な時間を有効に使ってもらいたいものです。興味がある事に取り組んだり、学内外のイベントに参加したりするなど、さまざまな経験はきっとあなたの記憶に記録されますよ。

先日私も、本対策室で開催された『ワークショップ』に出席してきました。『DV』という言葉は耳にしますが、『デートDV』とはどんなものだろうと興味があったからです。『デートDV』とは、結婚前の恋人間で起こる暴力のことを指すそうです。暴力は、殴る、蹴るだけの事ではなく、誹謗中傷などの言葉による暴力や勝手にメール等をチェックして行動を監視したりする精神的暴力、性行為の強要などの性的暴力も含まれるそうです。皆さんには心当たりありませんか?
全国調査結果では、女性が19.1%、男性が10.6%、10人に1?2人は被害を受けている結果となっています。暴力が徐々にエスカレートするため、被害の認識がない場合もあるようです。

楽しいはずの大学生活がつらく悲しい思い出とならないためには、自分が嫌だと思う事は相手に強要せず、苦しんでいる事に気がついていない友人がいたら「大丈夫?」と声をかけ「寄り添う」優しさを!一人で悩みを解決できなければ気軽に対策室へ相談に来てください。後期からは神田キャンパス9号館2階に週2回スタッフが常駐しています。

(キャンパス・ハラスメント対策室員 赤松 由香)

自分がどう感じるかを大切に (ニュース専修2019年9月号掲載)

専修大学内のハラスメント相談窓口「キャンパス・ハラスメント対策室」をご存知ですか。「ハラスメント」はよく知られる言葉になりましたが、対策室に相談に来られる方はまだ少ないように思います。これには対策室が十分に知られていないこと、そして、何がハラスメントなのか、よく知られていないことが関係しているようです。
キャンパスで起こりやすいハラスメントは、セクシュアル・ハラスメント、パワー・ハラスメント、アカデミック・ハラスメントとされ、総称して「キャンパス・ハラスメント」と呼ばれます。前者二つはイメージしやすいと思いますが、アカデミック・ハラスメントをイメージできますか?これは勉学・教育・研究の場での権力を利用した嫌がらせのことです。私は以前、他大学の学生相談室でカウンセラーをしていました。その際、ゼミの指導教員によるアカデミック・ハラスメントは特に表面化しにくい印象を持ちました。それは「ゼミの伝統」や「先輩も通った道」と理解され、「先生に見放されるのは自分の問題」などと被害を実感しにくいからです。皆さんはぜひ「自分がどう感じるか」を大切にしてください。ハラスメントを受けると誰でも精神的な苦痛を感じます。さらに、それを抱え込み続けると抑うつ状態になり、大学生活に支障を来たします。「これはハラスメント?」と疑問を感じたら、一人で悩まず気軽に対策室にご相談ください。相談は無料で、秘密は厳重に守られます。

(キャンパス・ハラスメント対策室員 加藤 佑昌)

就職活動とハラスメント (ニュース専修2019年7月号掲載)

今年2月に、大手ゼネコン社員が女子大学生へのハラスメント行為により逮捕された、と報じられました。「志望する企業で働く人から直接情報を入手して就職活動に役立てたい。」として、OBOG訪問アプリを利用して面会に来た学生を、自宅に連れ込んで、わいせつな行為をした、との内容です。
就職活動中の学生は、OBOG訪問アプリを駆使することで、以前よりも効率的に企業の社員に会う機会を得られるようになったようです。その反面、学生たちがこれらのアプリを利用し出会う社員の良識や人間性まで、保障することができないのも事実です。
就職部でも事態を重く見て、今年4月に就活中の学生に対して「OBOG 訪問に際しての注意」を配信し、ハラスメントに対する警戒を促しました。人目につかない場所や、アルコールの出る店で、社員に会うことは避ける、などを謳っています。また、個人情報が漏れないよう注意することも重要です。エントリーシートや履歴書から、連絡先が知れてしまうケースがあるようです。対策として、OBOG訪問時に企業の社員に見せる必要のある履歴書に、住所・メールアドレス・携帯電話番号等を記載しない、などが考えられます。
一部の企業人が(本学の卒業生ではないでしょうが)、就活生の心情を利用してハラスメントに及ぼうとする考えや行為は、極めて卑劣です。万が一被害に遭いそうになったら、また遭ってしまったら、迷わずキャンパス・ハラスメント対策室に相談してください。

(キャンパス・ハラスメント対策室員 岩瀬 文人)

キャンパス・ハラスメントの防止と早急な解決のために (ニュース専修2019年5月号掲載)

大学は、学生や院生にとっては自由な学修と人格陶冶の場であり、教職員にとっては教育・研究および労働の場です。個人の尊厳を傷つけ、学修・研究・教育・労働の権利を侵害するキャンパス・ハラスメントは、教育および教育現場の基礎に置かれるべき信頼関係を根底から突き崩す行為であり、決して許されないことです。
キャンパス・ハラスメント対策室に持ち込まれた相談案件について、この2カ年を見てみますと、2017年度および18年度ともに、その約半数は教員のハラスメント行為に関する学生からの相談です。相談に来た学生には、調査・裁定を求める学生もいるものの、その多くは、必ずしも調査・裁定を望んでいません。そうした学生に共通する要望は「自分に受けたことと同様のハラスメントを、教員が他の学生にしない様にして欲しいので、適切な対応をとってもらいたい」というものでした。
こうした実情から、キャンパス・ハラスメントは、未然の防止が重要であり、不幸にしてハラスメント被害が発生した場合には、早急な対策が必要であることがわかります。そのためには、今後、対策室が中心となり、研修など啓発活動を充実させて教員と職員のハラスメント問題に対する意識の向上を図るとともに、被害発生後には、早急に対策室と関係者との間で密接な連携をとり、被害の拡大防止と適切かつ断固とした措置を講じていくことが求められています。

(キャンパス・ハラスメント対策室長、法学部教授・内藤光博)