解剖等に関する法律

[Lag (1995:832) om obduktion m.m.]

 

総則

(Inledande bestammelser)

 

 第1条 本法において解剖及びその他死亡した人の遺体に対する諸措置に関する規定を設ける。

 人の遺体に対するイングレップその他の行為を行おうとする者は、死者に対して敬虔な態度をもってその任務を行わなければならない。

 

 第2条 人の死については、人の死の基準に関する法律の規定に従う。

死亡証明書および死亡診断書に関する規定は、埋葬法の規定に従う。埋葬または火葬についてもまた同様である。

 

 第3条 遺体に対して法医学的鑑定を行う必要があるとみなされる場合、別の目的でその死体に対するイングレップが行われた場合、その鑑定結果に齟齬が生ずる場合、イングレップを行うことができない。

 

 解剖等に関する一般規定

 (Gemensamma bestammelser om obduktion m.m.)

 

 第4条 本法において解剖とは、人の遺体を開き、体内の検査を行うことをいう。解剖は病理学的または法医学的目的をもっていなければならない。法医学的解剖には遺体の体外検査を含むものとする。

 法医学的な遺体解剖は、遺体の外部的検査を目的とする。検査には血液検査およびその他軽微なイングレップが含まれるものとする。

 

 第5条 解剖に際し、解剖の目的を達するためにその必要がある場合、遺体から器官その他の物質を摘出採取することができる。摘出採取された物質が検査のため長期間保存する必要がないときは、遺体に戻さなければならない。

 

 病理解剖

 (Klinisk obduktion)

 

 第6条 次の場合、病理解剖を行うことができる。

  1. 死因の確定

  2. 死者がもっていた病気について研究の必要がある場合または死者に対して行わ     れた治療結果について知識を得る必要がある場合

  3. 遺体における傷害または病気の経過を知る必要がある場合

 

 第7条 死亡した者に近親者がいる場合、解剖を行う前に、その一人に意見を聞かなければならない。但し、その通知は、解剖が第8条または第9条の規定によって行われる場合で、且つ解剖が行われるまでの相当期間内にその者に到達することが不可能な場合、または近親者の所在が不明の場合、解剖の通知を行わなければならない。

 

 第8条  病理解剖は、死亡した者が書面をもって、自己の遺体について解剖の同意を行っている場合またはそのことを表明している場合もしくは解剖を行うことによって死者の意思を実現できると見なされる場合、病理解剖を行うことができる。

 

 第9条 第8条に規定されている場合以外に、第6条第1号に規定されている目的のために死因を特定することが重要な意味をもっている場合、病理解剖を行うことができる。

 

 第10条 第6条第2号または第3号に規定されている目的を達するための解剖は、第8条に規定されている場合を除いて、そのような解剖に対して死者の意思を忖度できない場合で、且つ死者の遺族が反対の意思表示を行わない場合、第6条第2号、第3号に規定されている解剖を行うことができる。通知すべき者がいない場合、特別の場合を除いて解剖を行ってはならない。

 

 第11条 病理解剖の決定は医師によって行われる。医師のみが病理解剖を行うことができる。

 

 法医学的鑑定

 (Rattsmedicinsk undersokning)

 

 第12条 本法において法医学的鑑定(rattsmedicinsk undersokning)とは、法医学的解剖(rattsmedicinsk obduktion)または法医学的検視(rattsmedicinsk likbesiktning)のことをいう。検視によってその目的を達することができない場合、鑑定は法医学的解剖(rattsmedicinsk obduktion)によって行う。

 

 第13条 次に掲げる場合、遺体に対する法医学的鑑定を行うことができる。

   1. 死亡が何らかの犯罪と関係している可能性があると思料される場合、または

   2. 死因が医療過誤による疑いがあると思料される場合で、且つ死体の鑑定が犯      罪捜査のために欠くことのできない要素となっている場合

 

 第14条 法医学的鑑定はまた、死因が外的要因によるものと見なされる場合で、且つ

   1. 死因を確定すること、または

   2. 環境保護、労働者保護、交通安全その他それに類する利益のために特に重要      な情報を収集するため、その必要がある場合、

これを行うことができる。

 

 第15条 死者の身元を確認するためにも法医学的鑑定を行うことができる。

 

 第16条  埋葬が行われた後、死体の死因が犯罪と関係があると思料される場合で、且つその犯罪が懲役1年以上に刑罰に相当し、且つその鑑定が犯罪捜査のために重要な意味をもっている、埋葬後でも遺体に対して法医学的鑑定を行うことができる。相当な理由がある場合、それ以外の目的のために法医学的鑑定を行うことができる。

 

 第17条  法医学的鑑定は、そのことが死者または死者の遺族の意思に反してもこれを行うことができる。

 

 第18条  第13条乃至第15条に規定されている法医学的鑑定に関する決定は、警察署においてこれを行う。但し、普通裁判所または検察庁もまた、第13条第1号に規定されている法医学的鑑定を決定することができる。第16条に規定されている法医学的鑑定に関する決定は普通裁判所においてこれを行う。

 

 第19条  そのことが明らかに不要と見なされない場合、警察署に対して、法医学的鑑定の時間と場所を指定しなければならない。その場合、警察は警察官を立ち会せなければならない。

 

 第20条 法医学的鑑定は、医師によって行われる。政府または政府によって指定されている行政機関は、法医学的鑑定を行う医師の資格を定めることができる。

 政府または政府によって指定する行政機関は、法医学的鑑定に関する手続きおよび鑑定結果の報告に関する書式について細則を定めることができる。

 

 遺体に対するその他の手術

 (Vissa andra ingrepp pa avlidna)

 

 第21条  献体者本人からの書面による同意がある場合、その者に遺体を医学部の解剖学授業における教材として利用することができる。献体者本人が別段のことが定めていない場合、遺体は死亡後1年間、教材として利用することができる。

 

 第22条  特別の事由がある場合、遺体は、医師または医師の指導のもとで実習または手術方法の改善のために用いることができる。但し、その場合、第8条に規定されている死者の意思と一致する場合においてのみ行うことができる。

 

 第23条 死者または死者の遺族からの反対の意思表示がある場合であっても、他人またはその他の建造物に重大な損害を及ぼすおそれある場合、死者の遺体に埋め込まれている生物学的物質以外の物質を摘出採取するため遺体の手術を行うことができる。

 前項に規定する手術は、その措置が第8条及び第10条に規定されている方法で死者または死者の遺族の意思に合致し、且つ遺体に埋め込まれている物質が他人の治療のために利用され、または学術その他の医学のために利用される場合、遺体に対して行うことができる。

 第7条及び第11条第1号に定められている事項は、本条に規定されている手術についても適用される。

 

 第24条 死者の遺体は、衛生上の理由から、火葬または埋葬が行われるまでの間、または解剖学教材としてその遺体を保存しておく必要がある場合、防腐措置を講じておかなければならない。

 防腐措置(balsamering)はまた、埋葬法第5章第1条(5 kap. 1§ begravningslagen(1990:1144)の規定によって施主からの請求がある場合においても行われる。

 

 刑罰

 (Straff m.m.)

 

 第25条 本法の規定に反し、故意に人の遺体にイングレップを行った者は、罰金刑に処す。

 

 第26条 本法に関する決定に対しては、特別の規定がある場合に限って異議の申し立てを行うことができる。

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 本法の規定は1996年7月1日から実施する。本法の施行と同時に旧解剖法及び解剖に関する規則はその効力を失う。

                          以    上

                            (菱木昭八朗訳)

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