スウェーデン・夫婦の財産関係に関する国際関係法

                          (SFS 1990:272)

 適用範囲

 第1条 この法律はスウェーデン以外の国と関連をもっている夫婦の財産関係に関する問題について適用される。

  但し、別の法律にこの法律と異なる規定が存在する場合、その法律の規定が適用される。

 スウェーデン裁判所の権限

 第2条 次の各号に掲げる場合、スウェーデン裁判所は夫婦の財産関係に関する問題を審理することができる。

  1. 夫婦の財産関係に関する問題がスウェーデンにおける婚姻事件と関連している場合
  2. 被告がスウェーデン国内に住所を有している場合
  3. 原告がスウェーデン国内に住所を有している場合で、且つ本法第3条または第4条の規定によって、夫婦の財産関係に対してスウェーデン法が適用される場合
  4. 夫婦の財産関係に関する問題がスウェーデン国内に存在している財産に関係している場合
  5. 争いの対象となっている問題について被告がスウェーデンの裁判所で取り上げられることに同意しまたはスウェーデンの裁判所で審理されることに対して特に異議を留めずして裁判に応じた場合

  配偶者の死亡によって財産分割が行なわれる場合の裁判管轄の問題については、「死者の財産に関する国際的関係法」の規定に従う。配偶者の死亡に伴う財産分割に関する問題は、本条第1項、2号、3号、及び5号に規定されている事件についても適用される。

 

 適用法規

 第3条 夫婦または婚約当事者間に書面による契約によって夫婦の財産関係に関する問題に対して適用されるべき国の法律が指定されている場合、次に掲げる条件を満たしている限りにおいてその国の法律が適用される。

  1. 契約によって指定されている国の法律がその契約が締結されたとき、契約当事者のいずれか一方が住所または国籍を有していた国の法律であること
  2. 本法第5条ないし第12条の規定に反しないこと
  3. 配偶者の一方が死亡した場合、生存配偶者は第1項の規定により死亡した配偶者の相続人、または包括的受遺者との間で準拠法を指定する契約が締結されている場合

 第4条 夫婦の財産関係に関する問題について契約によって適用さるべき国の法律が指定されていない場合、夫婦が婚姻した時にもっていた住所地国の法律が適用される。

  夫婦が婚姻後、他の国に住所を変更し且つ2年以上そこに居住している場合、その国の法律が適用される。但し夫婦が住所を変更する以前にその国に共に住所もしくは国籍を有していた場合、居住期間に関係なく夫婦が現に住所を有する国の法律が適用される。

 第5条 夫婦間において締結された財産関係に関する契約はその契約が締結されたとき、夫婦の財産関係に関する問題について適用さるべき法律一致している場合、その効力を有する。婚姻前に締結された契約は婚姻成立後、夫婦間に適用されるべき法律と一致している場合、その効力を有する。

  法律行為に関して一定の要式を必要とする場合、その契約はその契約が締結されたときの国の法律または契約が締結されたときに住所をもっていた国の法律に定められている要式を満たしているとき、その要式を具備しているものとみなされる。

  但し、契約が締結されたときスウェーデンに住所を有する夫婦の間で締結された夫婦財産契約は婚姻法の規定により登記が行なわれた場合に限ってスウェーデン国内においてその効力を有する。スウェーデンに住所を有する夫婦の間で行なわれた贈与は婚姻法第8章第1条の規定に定められている要件を具備している場合においてのみ受贈配偶者は贈与配偶者の債権者に対抗することができる。

 財産分割等に関する特別規定

  第6条 夫婦の財産管家に関する問題について外国法が適用される場合であっても、配偶者または遺産相続人から請求がある場合、スウェーデン法の規定が適用される。外国法が夫婦の財産に関して分割または控除に関して別の方式を定めている場合であっても、財産分割手続きに関するスウェーデン法の規定が適用される。

  婚姻法第9章第1条第2項による財産分割は適用される外国法が同じような方法で夫婦間の合意に基づいて婚姻中の財産分割を認めている場合においてのみ婚姻中の財産分割を認めることができる。

 第7条 財産分割に際して夫婦のすべての財産及び債務は夫婦の財産関係に適用される法律から別のことがフォローしないかぎり、スウェーデン国内及び外国にある夫婦のすべての財産ならびに債務が考慮の対象となる。具体的財産分割に際しては先ず最初に配偶者のそれぞれが外国にもっている財産をもってそれぞれの帰属財産として配分しなければならない。

  外国に財産があり且つスウェーデンにおいて行なわれた財産分割がその国に適用されない場合、財産分割は夫婦の特定の財産についてのみその効力を有する。但しそのような制限は配偶者の一方が相当の理由をもって反対した場合その制限は行なわれない。

 第8条 外国において最終的な決定についての言い渡しが行なわれた場合で、且   つ夫婦が再び元の共同生活を回復することができなかった場合、後に取得した財産は夫婦の財産関係に関してスウェーデン法が適用される場合、財産分割の対象とならない。そのような財産分割に際して債務の控除は離婚の際の状況を考慮しなければならない。

  第9条 夫婦の共用住宅及び共用家財の処分に関する婚姻法の規定、及び財産分割に際して共用財産を引き取る権利に関する婚姻法の規定は、その住宅または家財がスウェーデン国内に存在する場合には必ず適用される。

 第10条 スウェーデンにおいて財産分割が行なわれる場合、夫婦の財産関係に関して外国法が適用される場合であってもスウェーデン婚姻法第12章の規定によって財産分割の修正を行なうことができる。

  その他の規定

  第11条 スウェーデン国内にある財産で、且つ夫婦いずれか一方によって所有されている不動産またはトムトレットについて外国法がその処分権を制限している場合であっても、スウェーデン法によって認められている制限を越えて第三者に対して対抗するができない。

  配偶者の一方に帰属する不動産、トムトレット以外の財産について外国法がその財産所有者の処分権に対して制限を加えている場合、もしくは配偶者の一方が債務を負うことについて制限を設けられている場合であっても第三者がその制限のあることを知らなかった場合、その制限をもって善意の第三者に対して対抗するができない。

 第12条 配偶者の一方によって負担された債務について外国法が債務を負担したる配偶者の財産をもってその責任を負担することに一定の制限が設けられている場合、配偶者の負担したる債務がスウェーデン国内に存在する不動産、もしくはトムトレットの処分行為から生じている場合、債務配偶者はスウェーデンにおいてその制限の存在をもって第三者に対抗することができない。

  その他の財産を処分しまたは債務を負担する行為より生じた債務についてもその法律行為がなされたとき第三者と債務を負担したる配偶者がスウェーデン国内に滞在し且つ第三者がその制限のある事を知らなかった場合、債務配偶者はその制限のあることをもって善意の第三者に対して対抗することができない。

 第13条 本法の規定によってスェーデン国内に裁判管轄権がありながら相当管轄裁判所が見当らない場合、ストックホルム地方裁判所が管轄裁判所となる。

 第14条 ある国に居住する者にしてその居住期間その他の状況からみてその居所地が恒常的とみなされる場合、本法の適用に際してはその居住地をもってその者の住所とみなす。

第15条 外国法が適用される場合、その外国法を適用することが明らかにスウェーデン法秩序の基本原則)と一致しない場合、外国法の適用は排除される。

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  1. この法律は1990年7月1日をもって施行する。本法の施行に伴って婚姻の効果に関する国際関係法」は廃止される。
  2. 第1条第2項の適用に際して婚姻、養子縁組、後見に関する国際関係に関する政令は別の法律と同じように取り扱われるものとする。
  3. 第2条の規定は本法の施行に先立って裁判所に提起された問題についてのスウェーデン裁判所の裁判管轄権の失わせないものとする。
  4. 訴えが夫婦の財産関係を目的として事件に関する訴えで本法施行以前に提起されている場合、旧法の規定が適用される。
  5. 本法施行以前に財産分割が開始されている場合、財産分割に際して旧法の規定が適用される。但し第6条に定められている問題もしくは財産分割の方式にについは適用されない。
  6. 本法施行以前になされた夫婦の財産関係に関する有効な法律行為は新し い法律になってもその効力を失わない。     

                           以 上(菱木昭八朗訳)


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