雇用における機能障碍者差別禁止法

 (Lag (1999:132) om förbud mot diskriminering i arbetslivet av personer med funktionshindel.)

 

 本法の目的(Lagens ändamål)

 第1条 本法は、雇用における機能障碍者に対する差別扱いを防止することを目的とする。

 第2条 本法において機能障碍(funktionshinder)とは、傷害、病気によって生来的にまたは出生後に発生した、もしくは将来、発生することが予想される継続的な身体的、精神的または能力的機能障害のことをいう。

 

 差別禁止(Förbud mot diskriminering)

 直接的差別(Direkt diskriminering)

 第3条 使用者は機能障碍によるものでないことを立証できない限り、求職者または被用者の機能障碍を理由として、同一労働状況の許において、機能障碍をもっている者に対して、障碍障碍をもっていない者よりも不利益な取り扱いをしてはならない。

 但し、差別が機能障碍者の精神的または特別の理由から、差別扱いを行うことが明らかに機能障碍者の雇用における差別を防止することよりも重要な場合、本法の規定は適用されない。

 

 間接差別(Indirekt diskriminering)

 第4条 差別に関係のない規則、基準または作業方法であっても、その規則、基準または作業方法を機能障碍者に適用した場合、健常者の場合と比較して、実際的に機能障碍者に対して不利益をもたらす場合、その規則、基準または作業方法を機能障碍者に適用することによって求職者または被用者を差別してはならない。但し、規則、基準または作業方法を定めたことに特別の目的があり、且つそのような措置がその目的を達成するために相当、且つ必要な場合にはその限りでない。

 

 差別禁止が適用される場合(När förbuden gäller)

 第5条 第3条および第4条に規定されている差別禁止は、使用者が次の決定を行ったとき適用される

  1.採用決定に際し、求職者の面接を行ったときまたは採用決定の手続を行ったとき

  2.昇進者の決定を行ったとき、または昇進のために必要な教育研修者の選抜決定を行ったとき

   3.賃金またはその他の雇用条件の決定を行ったとき

   4.業務分担の決定を行ったとき

   5.解雇、馘首、一時帰休またはその他被用者に対して、決定的な不利益決定を行ったとき

 

助力と適応措置(Stöd- och anpassningsåtgärder)

 第6条 使用者が援助または適応措置を講ずることによって、機能障碍者のおかれている状況を健常者のそれと均一化できる場合で、且つ使用者に対してそのような措置を要求できる相当な理由がある場合、第3条に規定されている差別禁止が適用される。

 

 メリットに関する資料(Uppgift om meriter)

 第7条 採用されなかった求職者、昇進に洩れた被用者または昇進のための教育研修に選ばれなかった被用者は、使用者に対して、書面によって採用または教育研修に選ばれなかった理由について説明を求めることができる。

 

 報復措置の禁止(Färbud mot represslier)

 第8条 使用者は、本法に規定される差別を理由として被用者が使用者を告発したことを理由として、被用者に対して報復措置を講じてはならない。

 

 いじめに関する調査および防止措置義務

 (Skyldighet att utreda och vidta åtgärder mot trakasserier)

 第9条 使用者において、被用者が機能障碍を理由として他の被用者からいじめにあっていることを知った場合、使用者はいじめの状況を調査し、将来のいじめ防止策を講じなければならない。

 ここに機能障碍によるいじめとは、雇用において機能障碍をもっている被用者の人格権を侵害し、且つそれが被用者の機能障碍と関係をもっている場合のことをいう。

 

制 裁(Påföljder)

 無 効(Ogilltighet)

 第10条 本法によって禁止されている差別事項が契約条項に規定されている場合または契約において認められている場合、その契約は禁止事項に反する限度において無効とする。

第11条 被用者が使用者との契約条項において、本法において禁止されている何等かの方法で差別されている場合、その条項は、被用者から要求があった場合、修正または破棄としなければならない。その規定が、当該契約の性質上、そのままの形で適用されなければならない相当の理由がない限り、その契約の一部を変更、または当該契約の全体を破棄しなければならない。

 被用者が契約解除またその他の契約を通じて、本法によって禁止されている何等かの仕方で差別を受けている場合、使用者は被用者から請求が行われた場合、その法律行為を無効としなければならない。

 但し、本法第10条の規定が適用される場合、本条第1項および第2項の規定は適用されない。

 

 損害賠償(Skadestånd)

 第12条 使用者が第3条または第4条および第5条1号または2号もしくは第6条に規定されている差別禁止条項に反して、被用者に対して差別を行った場合、被用者は使用者に対して、その差別によって被った損害の賠償を求めることができる。

 

 第13条 使用者が第3条または第4条および第5条3号乃至5号に規定されている差別禁止条項に反して、被用者に対して差別を行った場合、被用者は、使用者に対して、その差別によって被った損害の賠償を求めることができる。

 

 第14条 使用者が第8条に規定する報復禁止条項に反して被用者に対して報復措置を行った場合、被用者は使用者に対して、そのことによって被った損害の賠償を求めることができる。

 

 第15条 使用者が第9条に規定されている義務を履行しなっかた場合、被用者は使用者に対して、そのことによって被った損害の賠償を求めることができる。

 

 第16条 相当と認められた事由がある場合、第12条乃至第15条に規定されている損害賠償を減免することができる。

 

 監 督(Tillsyn)

 身障者オムブーヅマン(Handikappombudmannen)

 第17条 身障者オムブーヅマンは本法の実施状況を監視しなければならない。

 オムブーヅマンは、使用者が常に自主的に本法の規定を順守するよう指導監督しなければならない。

 

 使用者の資料提出義務(Uppgiftsskyldighet)

 第18条 使用者は身障者オムブーヅマンから請求があった場合、第17条に規定されている身障者オムブーヅマンの監督指導にとって必要な使用者の活動状況に関する資料を提出しなければならない。

 更に使用者は第7条の規定によって身障者オムブーヅマンが個々の求職者または被用者からの要求を援助する場合、必要資料を提出しなければならない。

 身障者オムブーヅマンは使用者に対して不必要な資料提出義務を課してはならない。相当な理由がある場合、使用者は資料提出義務を免れることができる。

 

 制裁金(Vite)

 第19条 使用者が第18条に規定されている改善命令を履行しなかった場合、身障者オムブーヅマンはその改善命令を実行させるため使用者に対して制裁金を課することができる。

 

 異議の申し立て(Överklagande m.m.)

 第20条 身障者オムブーヅマンの制裁金賦課決定に対して異議ある場合、使用者は差別審査委員会(nämnden mot diskriminering)に対して異議の申し立てを行うことができる。           委員会の決定に対しては異議の申し立てを行うことができない。

 制裁金の支払い命令に関する訴えはオムブーヅマンによって普通裁判所(tingsrätt)に提起される。

 

 差別問題に関する差別審査委員会における審理手続

 (Handläggningen hos Nämnden mot diskriminering)

 第21条 差別審査委員会は事件の解明のため、必要な程度において事件の内容を調査するよう監督しなければならない。

必要な場合、委員会は再調査を命ずることができる。但し、必要以上の調査を行ってはならない。

 

 第22条 委員会においてその必要性がないと判断された場合を除いて、制裁金の賦課決定は、口頭弁論を経て決定されなければならない。

 

 第23条 第22条に規定されている審理には身障者オムブーヅマンおよび使用者を出席させなければならない。

 委員会は制裁金賦課の言い渡しに際し、使用者または使用者の代理人に対して出頭を求めることができる。

 そのことが調査のため必要とみなされる場合、委員会は第三者をその審理に召喚することができる。

 

 訴訟手続(Rättegång)

 適用法令(Tillämpliga regler)

 第24条 第3条乃至第6条および第8条乃至第16条が適用される事件は労働訴訟手続法(lagen (1974:371) om rättegången i arbetstvister)の規定によって審理される。

 その場合、求職者は被用者とみなされ、求人側は使用者とみなされる。

 共同決定法(lagen (1976:580) om medbestämmande i arbetslivet)の紛争処理に関する規定が第3条乃至第6条および第8条乃至第16条に規定する紛争に適用される場合であっても、第2項の規定が適用される。

 

 訴 権(Rätt att föra talan)

 第25条 第24条に規定されている事件について、被害者本人の同意とその事件の判決が法の適用にとって重要な意味をもっている場合、またはその他、特別の事由がある場合、身障者オムブーヅマンは、求職者または被用者に代わって訴えを提起することができる。オムブーヅマンが相当と認めた場合、オムブーヅマンは同一訴訟において、被害者本人の代理人として、その他の訴えを提起することができる。

 第1項に規定されているオムブーヅマンの決定に対しては異議の申し立てを行うことができない。

第1項に規定されているオムブーヅマンからの訴えは労働裁判所(Arbetsdomstolen)に対して提起される。

 

 第26条 労働組合が労働訴訟手続法第4章第5条の規定によって組合員のために訴えを提起する権利をもっている場合、身障者オムブーヅマンは組合が組合員のために訴えの提起を行わない場合においてのみ訴えを提起することができる。

訴訟における個人の地位について本法に規定されていることは、身障者オムブーヅマンが訴えを提起する場合にも適用される。

 

 第27条 公的使用者によって行われた採用決定を理由とする第12条の損害賠償に関する訴えは、採用決定が確定するまでは審理の対象とならない。

 

 時 効(Preskription m.m.)

 第28条 解雇または馘首を理由として訴えの提起を行った場合、雇用保護法(lagen (1982:80) om anställningsskydd)第34条第2項、第3項、第35条第2項、第3項、第37条、第38条第2項第2号、第39条乃至第42条および第43条第1項第2号および第3項の規定が適用される。

 

 第29条 第27条に規定されている事件以外の訴えについては、共同決定法第64条乃至第66条、68条の規定が第66条第1項第1号に規定されている猶予期間を2ヶ月に変更することによって適用される。

 

 第30条 公的使用者によって行われた雇用決定に対する損害賠償事件については、第29条に規定されている猶予期間は、雇用決定が確定したときから開始する。

 

 第31条 身障者オムブーヅマンによって提起された訴えは、その訴えが被用者または求職者本人によって提起されたものとして取り扱われる。

 

 この法律の規定は1999年5月1日から施行する。(菱木昭八朗訳1999.03.15)