公開講座

現場からの法律学・政治学(Ⅰ)2016年度

開講日:第一回10月22日
       時間:14:00~16:00
       場所:神田校舎1号館205教室
    第二回11月26日
       時間:14:00~16:00
       場所:神田校舎1号館205教室
    第三回12月10日
       時間:14:00~16:00       
       場所:神田校舎1号館205教室

講座の趣旨

 皆さん、学生と市民のための公開講座へようこそ!
 専修大学法学研究所では、一昨年から2年間にわたって、「法律学と政治学の最前線」と題する公開講座のシリーズを開催し、多くの方から、幸いにして好評で迎えられました。この経験を活かして、今年度からは新たに「現場からの法律学・政治学」のシリーズを開始します。
 法律学も政治学も、生々しい「現場」との多くの接点を持っています。学術的な研究が「現場」で起きている諸問題から示唆を受けることも多くあります。また、研究がそれらの諸問題を解決するための何らかの示唆を「現場」に提供できることもあるでしょう。「現場」と研究とのそれぞれの立場が交流し合うことは、それぞれにとって極めて有意義であるに違いないと私たちは考えました。
このような考えに基づき、今年度から開始する新しい公開講座では、それぞれの「現場」の第一線で実際に活動しておられる方からご報告を頂き、「現場が直面しているこれらの問題について、研究者はどのように考えるのか?」と問いを投げかけて頂きます。そこで提示された課題について討論することを通じて、「現場」と研究との接点を探っていきます。
 私たちの社会には、多くの困難な課題が山積しています。テレビや新聞などで、それらの報道に接しても、一体どこに問題の本質があるのか、我々はどういう視点からその問題を考えたらいいのか、途方に暮れることも少なくありません。しかし、私たちはそうした困難な課題から目を背けるのではなく、粘り強く、それに向き合っていかなくてはなりません。この講座では、そのような積極的な取り組みのための手がかりを皆さんに提供したいと考えています。

第一回(10月22日)「国際法・国際政治の現場から」
   
報告者略歴
中村 進(なかむら すすむ)
1等海佐、海上自衛隊幹部学校主任研究開発官。
非常勤講師:埼玉大学、慶応義塾大学、中央学院大学。
横浜国立大学大学院博士後期課程単位修得退学(博士(学術))。
1952年生、大阪市出身。1974年海上自衛隊入隊、対潜哨戒機航空隊(那覇、鹿屋)および防衛省海上幕僚監部勤務を経て、1993年以降、海上自衛隊幹部学校において勤務、一貫して自衛隊の行動に係わる国際法及び国内法を中心とした研究・教育等に従事。研究室長、海上幕僚監部法務室長(兼任)等を歴任。
2008年3月定年退官後、引き続き幹部学校主任研究開発官として再任用。
主要論文:「新しい戦争が武力紛争法に及ぼす影響」『横浜国際経済法学第13巻3号』横浜国立大学、2005年3月。共著「有事関連条約における個人保護法制への国内的対応」『ジュリスト1229号』2005年10月
2010年11月、 米海軍大学との共同研究の功績により米国から叙勲(Meritorious Service Medal)

講座の概要 「法制度から見た日本の領域警備」
「領域警備」を、領域外から行われる侵害を防止し自国領域の安全と秩序を維持する作用として捉えた場合、「国境警備」と同義ともいえる。さらに、国境のすべてが海上にある日本の場合、「国境警備」は「領海警備」として海上における措置が中心となる。
 国境を越えて行われる侵害は、個人の犯罪や国家による武力攻撃のように警察と軍事の所管が明確なものだけでなく、国家機関による領域侵犯やテロリストやゲリラによる攻撃のように、いずれかの範ちゅうだけに収まりきれない多様な事態が考えられる。このため諸外国の国境警備機構には、それぞれの事態に柔軟に対応するために警察機能と軍事機能を併せ持つものが多い。一方、日本の法制度は警察権を行使する「警察作用」と武力攻撃に対応する「防衛作用」を二分化し、両者を厳格に区別している。こうした日本の「領域警備」のあり方については、今回の「新安保関連法制」の整備に際しても、いわゆる「グレーゾーン」問題の中で政府が対応策を示す一方、野党からは「領域警備法案」が提出されるなど主要な論点の一つとなった。
本講座においては、このような日本の「領域警備」問題について、議論の中で挙げられた懸念されている事態とそれに関連する国際法及び国内法制度の内容を中心に考えてみる。
     

第二回(11月26日)「刑事法・刑事政策の現場から」

報告者略歴
小松 直人(こまつ なおと)
1970年東京都生まれ。
警視庁警察官(1990年採用)。
警察署、機動隊、本部等の勤務を経て、現在は生活安全部少年育成課・新宿少年センター主査。
現階級 警部

講座の概要 「少年補導の現場から」
 警察では、非行の予防および非行の発見に関わる活動を広く展開しており、こうした少年に関わる警察の活動全体のことを少年警察活動という。
少年警察活動としては、具体的には、少年補導、少年事件、少年育成、少年相談、環境浄化、児童虐待対策などの取り組みが実践されているが、本講座では、講演者が現在直接携わっている「少年補導」および「少年育成」についての検討を中心としつつ、「少年相談」についての話題提供も絡め、講座を展開したいと考えている。
本講座では、まず、昨年中の警視庁新宿少年センター管内における非行少年の取扱いをめぐる状況について、新宿の歌舞伎町に見られる少年を取り巻く環境の悪さの例を示すとともに、新宿少年センターによるサイバー補導の取り組みについて、紹介したいと考えている。
また、本講座では、少年の立ち直り支援の観点から、家庭環境の重要性を指摘したいと考えている。少年補導については、補導した少年を立ち直りまで導いてこそ意義あるものとなる。こうした目的に基づき、補導した少年については、その後「農業体験」や「社会参加活動」、「就労支援」などの活動へと誘い、社会とのつながりを実感させ、自信を持たせていくのであるが、保護者に問題がある場合、立ち直り支援の効果が生じにくいこともある。本講座では、少年自身の問題とともに、少年の家庭環境にも注目し、有意義な立ち直り支援のあり方も検討したいと考えている。



第三回(12月10日)「地域行政の現場から」

報告者略歴
上川 光治(かみかわ こうじ)
1954年大分県生まれ。東京都職員(1977年採用)。
知的障害者施設、高齢者特別養護老人ホーム、児童養護施設、児童相談所等での勤務を経て、東京都児童相談センター児童福祉相談専門課長、品川児童相談所所長を歴任。再任用により現在は東京都児童相談センター相談援助課長。

講座の概要 「東京都における児童虐待の現状と課題」
 全国の児童相談所が2015年度に対応した児童虐待の件数は、前年度比16%増の10万3260件(速報値)で過去最多を更新した。同件数が1万件を超えたのは1999年度、5万件を超えたのは2010年度であり、増加の一途をたどっている。他方において、児童相談所数や児童福祉司数の増加・増員は追いついておらず、児童相談所はもはや「パンク寸前」とまでいわれている。いま児童相談所の現場では、どのような対策が必要とされているのだろうか。
 この講座では、まず、東京都児童相談センター相談援助課長の上川氏に東京都における児童虐待の現状と課題を報告していただく。その上で、行政学を専門とする鈴木がいくつかの論点を提示し、意見交換をしたいと考えている。
 論点の1つは児童相談所の体制強化である。現在、児童相談所職員の業務負荷は大変重い。国は、今年5月に児童福祉法等を改正し、児童心理司や経験を積んだ児童福祉司の児童相談所への配置を義務付けることとした。また、全国の児童相談所に配置される児童福祉司(2015年度は2930人)を2019年度までに約550人増員する方針を掲げた。こうした体制強化策にはどのような可能性と限界があるだろうか。
 論点の2つめは関係機関との連携である。2004年には「市町村子ども家庭相談体制」が整備され、住民からの児童家庭相談には、まず市町村が主体的に対応し、児童相談所は専門的な相談や法的権限が必要な相談に対応することとされた。また、市町村ごとの「要保護児童対策地域協議会」の設置が要請され、福祉・保健・教育・医療・警察等が分野横断的に連携する場が整えられた。しかしながら、関係機関の連携と情報共有は必ずしも容易ではない。それはなぜだろうか。
 論点の3つ目は児童相談所の組織再編の可能性である。1949年、国連児童福祉顧問アリス・Aキャロルが日本の児童相談所を視察した。そして、児童相談所は内部組織が機能別に十分に分化していないとし、「一時保護所」「児童相談所」「児童鑑別所」に再組織することを提案したのである。現行の児童相談所の一元的な組織編成は現場の実情に即したものになっているのだろうか。
 本講座では、児童虐待対応に関する現場の実情を踏まえたうえで、児童相談所および関係機関の「組織」面から改善の糸口を模索することを志す。