ネットワーク情報学部3年次の栗橋翠さん、武林冬樹さん、高野葉子さん(いずれも現4年次)は、3月30日に行われたマイクロソフト主催の学生IT技術コンテスト「Imagine Cup 2010」(イマジンカップ)組み込み開発部門日本大会に初の出場で準優勝を果たした。
このコンテストは、テクノロジーを使って今日の世界に変化を起こさせたいという情熱、想像力をもった学生を応援する、全世界を対象とした技術コンテスト。7回目となる2010年度は「ITを活用して、世界の社会問題を解決しよう」をテーマに、国連ミレニアム・サミットで「現在世界で最も懸念されている課題」として挙げられている8項目(極度の貧困と飢餓の撲滅、幼児死亡率の引き下げ、環境の持続可能性の確保など)から課題を選び、その解決策を考えるというもの。世界大会は170カ国30万人という過去最大の参加者を集めたエジプト大会のほかスペイン、ブラジル、日本、インドなどで開かれており、今年度は7月にポーランド(ワルシャワ)で行われる。
昨年の6月、栗橋さんがプロジェクトで指導を受けていた飯田周作教授からチャレンジを勧められ「学んでいることを社会貢献に生かすチャンス」と参加を決意。同じネットワークシステムコースに学ぶ武林さんと、「プレゼンがうまい」と学部内で定評があるコンテンツデザインコースの高野さんに声をかけた。また、発表には参加できなかったが、ビジネスプラン担当として南場勝規さん(現4年次)も加わった。
それぞれがプロジェクトやインターンシップなどで忙しい中、グーグルのグループウエアなどを活用して、情報を共有しながら打ち合わせを重ねた。もっとも時間をかけたのがテーマ設定。「興味のあること、解決したいこと」を持ちよって何度もミニプレゼンテーションを行い、問題点を共通認識することに努めた。環境問題に詳しい綿貫理明同学部教授や、海外でのフィールドワーク経験が豊富な佐竹弘靖先生にもアドバイスを求めた結果、「環境問題」を解決したいと提案した栗橋さんの意見をベースにすることが決まり、本格的に作業を開始。環境に関するさまざまなデータ収集を担当したのは武林さん。「膨大なデータから使うべきものを選びとるのに苦労しました」。
「ユーザー側にたったシステム」を意識して学んでいる高野さんは、評価項目の一つであるユーザーエクスペリエンスで学びの成果を発揮。栗橋さんは「高野さんは異なるコースで学んでいるので、考え方やアプローチの仕方が違う。そこを生かして幅広い視野から、解決策を導くことができた」と話す。
提案した解決策は、地球温暖化問題を解決するため、南半球に塩生植物であるマングローブを乗せた人工浮島「Green Island」(グリーンアイランド)を放流し、効果的に二酸化炭素を回収するというもの。人工浮島は、シェパードと呼ばれる管理浮島を中心に群れを作り、この群れが無数に集まって巨大な海上森林を形成する。WiMAXや衛星通信などを用いて監視・管理しながら、海のゴミにならないような回遊ルートも考え、コスト面も考慮した。
提案書は、英語でA4版5枚に仕上げた。3月10日に予選通過発表があり、本大会までは連日大学で夜遅くまで作業。世界大会を意識しながらも「解決しなければならない課題はなにか。本質的な解決に結びつくのか」を常に意識した。大会でのプレゼンは10分間+質疑応答10分間の計20分間。不測の事態に対応できるよう9分30秒で終わらせる練習を重ねた。詳細なQ&A作成は後輩が手伝ってくれ、イメージ図は、絵が得意な友人が手掛けてくれた。「面白そうだと思ったら、何げなく手助けしてくれる。そんな雰囲気がうちの学部にはあるんです」と武林さん。「プレゼンはいかに魅力的に相手に伝えられるかが勝負。多少間違えても『自分の言葉で』熱意をもって話すことを心掛けています」と高野さんはプレゼンの極意を話す。
本大会では企画概要を高野さんが、技術面は栗橋さんが、プロトタイプ(デモンストレーション用の機器)を武林さんがプレゼンし、9分25秒で終えて質疑応答に。「想定していた質問だったので余裕をもって答えられました。後輩たちに感謝です」。
惜しくも世界大会には手が届かなかったが、「やれることはすべてやりつくして、納得のいくプレゼンができた」と達成感を話す3人。聴衆の評判も上々で、4チームのなかでアイデアは群を抜いていると評された。「懇親会で企業の方から『実現に向けて行動を起こしてみてはどうか』と励まされたことと、自分たちが考えていたことを企業の方たちも考えているということがわかり、同じような高いレベルまで到達したと確認できたことが自信になりました」と栗橋さんは話す。
3人を見守ってきた飯田教授は「『純粋に課題解決する』という意識を最後までもち続けた点をまず称えたい。グループで作業するうえで最も大切なことは、やりたいことを本気で言えるか、思っていることを伝えられるかということ。彼らはそこに十分な時間をかけ、共通認識をもって作業に取り組んだ。組み込みソフトは、2年次の授業で学んでいるが、学んだ以上のものを自分たちだけで開発し、英語の提案書作成など、ハードルが高いものでも『やればできる』と身をもって体験したことは、 成果物をつくった以上の効果だと思う。『学んだ知識を生かして、社会の課題を解決する』という貴重な経験は、これからの学びや将来を考えていくときに大きな糧となるだろう」と評する。
大きな自信をつけたメンバーは4年次となり、「ITを活用して社会に貢献する」人材を目指し、新たな挑戦を始める。