チョーサー著作集


 詩人、画家、装本家、社会思想家など様々な肩書を持つウィリアム・モリスは、1891年、理想の印刷・書物の作製をめざして私家版印刷所「ケルムスコット・プレス」を開いた。このチョーサー著作集は第40作目にあたり、プレス中の最高傑作とも称されている。のみならず、ダヴス・プレス印行の『欽定英訳聖書』、アシェンデ・プレスの『ダンテ著作集』と並び、イギリスの私家版運動のもたらした世界でもっとも美麗な書物として知られる。

 モリス自身はチョーサーの作品を刊行することを早くから意識しており、その造本にも思い入れが伝わる。バーン=ジョーンズの木版挿絵87点を含み、1896年5月に完成、手漉紙刷425部、ヴェラム刷13部が出版された。

 本書に収録されている代表作「カンタベリー物語」の本文はエルズミア写本を採用している。装丁は20世紀前半のモロッコ装丁。