七夕のさうし

 練色地唐草文金襴表紙、見返しは金泥秋草山水模様、巻軸は小菊紋様の象牙彫、巻緒は紅白の石畳模様織、内容十三段、絵図十三図で絵の構造は土佐派(淡彩系統)奈良絵と共に狩野派(濃彩手法)奈良絵の手法も併用している。本紙三十四枚の紙継ぎで一巻仕立てにしている。本絵巻物は箱入りで、黒漆地印籠蓋の表には稲妻形模様の金梨地に金の象嵌で「七夕之草紙」とある。

 『七夕のさうし』は別名『七夕之草子』、『たなはた』、『あめわかみこ』、『天稚彦物語』(あめわかみこ)ともよばれている。この物語は大蛇怪婚系と公家物語系があるが、本学所蔵は大蛇怪婚系に属する。

 内容は「昔、長者の三人の娘に大蛇が求婚し、仕方なく末娘が承諾し池に行くと、大蛇が現れ、いわれるままに大蛇の頭を切ると、美男が現れ、夫婦となるが、実は、男は海竜王で・・・」と、蛇神として他界に降りた天稚彦と人間織姫の清純な物語が鮮明な奈良絵とともに地上・天界に繰り広げられている。七夕の由来を語るロマンが展開されているが、昔話のモチーフにも共通するところが見える。