図書館設立のための助言

 ノーデの生きた時代は絶対王政の時代であり、当時の王侯・貴族は自らを誇示する有力な手段として、蔵書のコレクションを持つことが流行していた。ド・メスム家の蔵書管理を行っていたノーデは「共通の知」を求める精神とそれを提供する蔵書構成の理念のもと、27歳にして本書を著す。そこには17世紀前期にあってすでに「図書館員」としての意思を備えていたノーデの「公共の知」に対する思いが凝縮されている。

 図書館は民衆のために設置するのであって、一部の特権階級のものであってはならない。一部の特権者の嗜好のために珍本・稀本を偏愛するのではなく、また、最近の本に対しても古い文献に対するのと同様に集めること、そして立場の異なる双方の著作を集め、論争の是非は読者の判断に任せるべきである、とした。図書館の蔵書構成は一方的、偏向的、排他的であってはならない。収集しても分類されていない書物の集合では図書館というにあたらない、などの持論を展開し、自ら考案した分類表も示している。これらは現代の図書館の課題にも通じるものであった。

 ノーデは17世紀において図書館の機能に「公共性」を持たせることで将来の発展を描いていた。後に、フランス最古の公共図書館といわれるマザラン文庫の司書係に就いている。