本講義では,紀元前500年から紀元後500年までの約1000年間のローマにおける法の発展を扱う.今日の法学の直接の起源は,11世紀末のイタリアのボローニャにおける法学の再生に求められるが,そこでは古代のローマ法が研究された.それ以来,連綿とローマ法の研究は続けられ,その都度その時代の法学の革新をもたらしてきた.人間が自己の営みを反省するとき,常に歴史に遡り,それとの対決を行なってきた.それは,われわれの現在の営みが過去の遺産の上になされている以上,現在を批判的に考察するためには,過去ともまた対決しなければならないからである.法学が,自己反省的な学問であり続けようとする限り,つまり学問であり続けようとする限り,歴史的反省は続けられなければならない.そして,これまでの歴史を圧倒的に支配してきたローマ法と対決し続けなければならない.
本講義では,ローマ法学の発展を,最初期の神官たちの時代から,共和政後期のローマが世界帝国に発展する時代,帝政期前期のいわゆる古典期,皇帝権力が専制化した古代末までたどる.具体的には,@法の発生における儀礼の意義そして神官による儀礼の操作について,A世界帝国へと発展する時代における法(学)の対応とそこにおけるギリシアの学問の影響の問題,B権力と法学との関係の問題などに焦点を当てて,ローマ法学1000年の発展をたどる.補論として,中世以降近代までのローマ法学についても概説する. |