2006年10月号  
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    [10面]  
 

【寄稿】

   
 

フィンランドの出産・育児事情

 今年度夏期海外研修・国際交流奨励生の山中弘子さん(文4)から届いた体験記を紹介しよう。山中さんは9月上旬、フィンランドに住む友人宅を訪ね、同国の出産・育児事情を研修した。

※夏期海外研修・国際交流奨励制度=夏(前期)と春(後期)の休みを利用して語学研修や体験旅行などを希望する学生や団体に奨励金を支給する制度

 

「子育ては得?」 ― 手厚い保護、市民も温かく

海外研修・国際交流奨励生

<日本語日本文学科4年> 山中 弘子

▲ネウボラ入り口でホストファミリーの長女ネアちゃんと一緒の筆者
▲お父さんと一緒に。トータルケアを行うネウボラでの診察の様子
▲北欧調インテリアでゆったりとしたネウボラの待合室

 昨年、フィンランド人の男性と結婚した日本の友人が出産した。フィンランドで、である。彼女から、妊娠中から出産、その後の子育てについて話を聞くうちに、どうやら日本と随分事情が違うことがわかってきた。

 妊娠がはっきりすると、ネウボラと呼ばれる日本の保健センターにあたる機関から両親への指導、カウンセリング、健康診断や歯科検診などのサービスが開始される。このサービスは出産後には子供の健康管理を中心とし、就学前の6歳まで続けられる。日本でならば幾つもの機関でバラバラに行われているものが、ここでは一元化されており、担当保健師もほとんど変わらない。

 今回、そのネウボラでの健診に同行させてもらうことができた。この健診には妊娠中から夫婦そろって行くのが、フィンランドの“当たり前”だそうで、どの父親も会社から駆けつける。

 友人夫婦は、ヘルシンキに次ぐ第二の都市タンぺラ市に住んでいる。バギーを押して歩く道は、森の中といってもよいほど木々が多く、未舗装の場所も多い。歩道は道幅が広く、2人連れでもすれ違う時によける必要もないほどゆったりしている。ほとんどの建物には階段のほかにスロープがつけられ、それがない場合には板が渡されて、バギーなどの車輪にも不自由のないように配慮されている。すべての建物は、廊下の幅、ドアのサイズなど車椅子を使った時に不自由のないよう設計されている。

 ネウボラの建物はレンガ造りのどっしりした外観だが、室内は木を多用し落ち着いた家具で統一されており、子供が喜ぶカラフルな色は小物で演出された北欧らしいインテリアだった。

 すべて予約制のため、待合室はがらんとしてほとんど人けはなかったが、時間になると保健師が部屋から現われた。保健師と友人は妊娠中からの付き合いなので気心も知れている様子で、親しげに会話をしながら部屋に入り、健診を受ける。看護師は私服だし、部屋も北欧調インテリアで、どこにも医療機関らしさはない。その間、保健師は子供を上手にあやしながら体重、身長、頭のサイズなどを手際よく測っていき、パソコンに入力していく。この記録はすべて保管され、必要に応じて医療機関、保育施設、学校などでも閲覧できるシステムになっている。

 その後、問診をしたり、両親の相談に乗ったり、栄養指導などをゆったりした雰囲気で進める。基本的に健診時間は20分とされているが、必要であれば時間にこだわることなく話ができるそうで、新米ママの友人にとって、とても心強い相談相手になっているようだ。

 友人は現在、専業主婦で自宅で子育てをしているが、それは“保育所の代わりに仕事をしている”とされ、毎月350ユーロ(約5万円)の保育手当を国から支給されている。また子供ひとりあたりの児童手当は毎月100ユーロ(約1万4500円)で、これは17歳まで支給される。父親にも3週間の出産休暇が与えられ、ほぼ100%の取得率。育児休暇も十分整備され父親でも母親でも取得できるし、女性が出産後、元の職場に戻ることに何の不都合もない。

 公共交通機関にバギーと一緒に乗れば大人ひとりは無料。医療費も基本的に無料。保育園から大学院まで教育費は基本的に無料だ。収入の約40%が税金で源泉徴収され、消費税は22%(食料品除く)。物価も高い国だが、あらゆるところで「子供を産むと得かも……」と思わせるところが、EU諸国の中で合計特殊出生率を上昇させた数少ない国の一つとなった要因かもしれない。

 そしてとても印象的だったのは、バギーでバスや電車に乗る時、必ず近くにいる人が手を貸して段差を乗り越える様子だった。少子化対策がなかなか実を結ばない日本では、残念ながらまねをするのが一番難しいことかも知れないと感じた。

 


【寄稿】

 川崎市多摩区内3大学(専修、明治、日本女子)の学生が就業体験を通じ、職業意識の向上や地域への理解を深める多摩区・3大学連携協議会「平成18年度夏季インターンシップ」が行われ、本学からは学生2人が参加した。区役所や区内福祉施設などで行った「就業体験記」を紹介しよう。

 

“子と真剣に向き合う” 支援現場で大切さ実感

<心理学科4年> 米村 健

▲9月17日に多摩市民館での「たまたま子育てまつり」で子供と触れ合う筆者

 多摩区・3大学連携協議会インターンシップに参加しました。私の今回の希望は「子育て支援の現場を知ること」でした。そのため区役所内での実習は一切行わず、約2週間半の間、幾つかの施設で、現場体験のみの実習を行いました。主な実習先は児童相談所、子供文化センター、保育園などです。それぞれの現場で子供の年齢や施設の立場・指導目的などが違っていて、大変有意義な実習となりました。

 実習は子供のことを知るために、遊んだり世話をしたりと子供とかかわることが中心となりました。この実習の中で自分と職員さんとの明らかな違いを感じたのは、注意や指導をする時でした。これは、どの実習先でも感じました。

 ある保育士さんの言葉ですが「最初から子供は近づいてきてくれるけれど、それは試しながらにすぎない。子供たちに真剣に向き合っていくことで、初めて信頼関係を築くことができる」とのことでした。

 「真剣に向き合うこと」。とても抽象的で難しい言葉だと思います。けれど子供とかかわる仕事では、最も必要なこと。きっとその答えはどこにもないし、職員の方も日々探し、挑戦しているのだと思います。子供のことについて考え、話し合い、真剣に接していく姿勢。これはどの施設にも言えることでした。子育て支援は多くの方の熱意によって支えられているのだと実感しました。

 私は現在、法務教官(少年院・少年鑑別所の教官)を志望しています。今回のインターンシップでは親子関係や子供の環境等を知ることで、非行などを考えるきっかけになれば……と思っていたのですが、そのこと以上に子供に接していく上で最も大切なことに触れた気がします。

 この経験を大切に、一歩ずつ自分なりに発展させていきたいと思います。

 

 

区役所職員を体験して

逆の立場から見えたもの

<商業学科3年> 平塚 善久

▲最終日に区役所の職員と懇談する筆者

 「大学で学んでいる学問が、実社会で果たして使えるのかどうか試してみたい」という想いから、多摩区役所でインターンシップに取り組みました。今までは、区内の大学に通学する学生として区役所などの公共機関が提供する行政サービスを“受ける”立場でありましたが、サービスを“提供する”立場に立つと見えてくるものがたくさんありました。

 私は「行政と区民と学生の三者が長期的に良好な関係を築くことができ

るためには、行政は何を行えばよいのか」を課題とし、多摩区の広報誌の編集、多摩区3大学連携事業のための資料作成、各部署における現地での調査、区役所内での窓口業務などを経験しました。こういった経験の中で見えてきたものは、行政サービスを通じて人々が住みやすく、活気のある町にするためには、職員や区民などのステークホルダーが高い意識を持って行動する必要があるということです

 職員であれば、消費者視点で業務を見直して行動したり、区民であれば行政に協力して皆で町おこしをしたりと、その気になればできるものばかりです。一人ひとりの意識が大切なのではないかと感じました。

 インターンシップについていろいろな人に話を聞きましたが、就職活動(内定)には関係ないと、先輩方には言われました。直接関係ないのかもしれませんが、インターンシップを通じて得た社会人としての職業観や企業観は、書籍や体験談では分かるものではないと思います。

 今回の経験から、消費者視点で物事を考えることや、ステークホルダーにとって何をしたらプラスになるのかを考えさせられました。将来、この経験が生かせる仕事に従事したいと思います。

 

 
 

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