内縁夫婦の財産関係に関する法律

Lag (1987:232) om sambors gemensamma hem

 総 則(Inledande bestämmelser)

 第1条[本法適用の対象と範囲]

 この法律は内縁関係にある者(sambor)の共用住宅及び共用家財(gemensamma bostad och bohag)に適用される。

 この法律の規定は婚姻類似の関係において生活を共にしている未婚の男女(en ogift kvinna och en ogift man)に適用される。1987年法律第814号により改正。

第2条[内縁夫婦の共用財産]この法律において、内縁夫婦の共用住宅(sambors gemensamma bostad)とは、第4条に規定されている場合を除いて、次ぎに掲げる住宅のことをいう。

  1. 内縁夫婦の双方またはそのいずれか一方が所有権もしくは借地権(tomtratt)によって取得している土地で、その土地が内縁夫婦の共用住宅を建築することもって、もしくは主としてそのことを目的として入手されたものである場合
  2. 内縁夫婦の双方またはそのいずれか一方が自己の住宅を建築することを目的として借り受けている土地で、その土地の上に立てられている建物が内縁夫婦の共用を目的として、もしくは主として共用を目的として建築されている場合
  3. 内縁夫婦の双方またはそのいずれか一方が借家権、特別借家法(bostadsratt)またはその他類似の権利をもって所有している建物もしくは建物の一部で、その建物または建物の一部が内縁夫婦の共用を目的として、もしくは主とし内縁夫婦の共用を目的として取得されている場合
  4. 内縁夫婦の双方またはそのいずれか一方が特別借家法(bostadsrattslagen (1991:614))第5章に規定されている予約に基づいて、将来、特別借家権(Bostadsratt)を取得することが予定されている建物または建物の一部で、その契約が締結されたとき、内縁夫婦の共用を予定されている、もしくは主として共用に供されることが予定されている建物または建物の一部

 内縁夫婦のいずれか一方によって署名されている書面によって、内縁夫婦は登録官庁に対して、内縁夫婦いずれか一方の名義になっている土地もしくは内縁夫婦のいずれか一方の名義によって登録されているトムトレット(tomtratt)について、内縁夫婦の共有財産として登記することができる。1991年法律第627号により改正。

 第3条[共用家財]この法律において、共用家財(gemensamma bohag)とは、第4条に規定されている場合を除いて、内縁夫婦の双方またはそのいずれか一方が共同生活を維持するために取得した什器、家財道具のことをいう。但し、内縁夫婦の一方が専ら自己のように供するために取得した家財道具は共用財産とみなされない。

 第4条[レジャー用財産] 内縁夫婦の一方が主としてレジャー用に使用すること目的として建物、家財道具類は内縁夫婦の共用財産とみなされない。

 財産分割(bodelning)

  第5条[財産分割]内縁関係の解消に伴って、内縁夫婦の一方から共用財産について財産分割の請求が行われた場合、その財産が内縁夫婦の共同利用を目的として取得されている場合、共用財産は財産分割(bodelning)の手続きに従って内縁夫婦の間で分割される。財産分割が内縁夫婦の一方の死亡によって行われる場合、財産分割の申し立ては,遅くとも財産目録の作成までに行われなければならない。

 但し、内縁夫婦の間で書面によって別段の契約がある場合には前項の規定は適用されない。

  第6条[財産分割分の算定] 財産分割に際しては、先ず最初に内縁夫婦のそれぞれの分割分(andelar i egenomen)を計算しなければならない。

 第7条[債務控除]財産分割分の計算を行う場合、内縁関係が解消されたときに内縁夫婦のそれぞれが負担していた債務を、それぞれの共用住宅、家財道具のなから控除しておかなければならない。

 共用住宅、または家財道具が優先弁済債務の対象になっていない場合っまたはそれ以外の方法で共用財産が債務の対象となっていない場合であっても、内縁夫婦の一方は他の財産をもって債務充当分を控除することができない場合、共用住宅、共用家財から不足分の債務を控除することができる。

 第8条[財産分割分・平等分割の原則]内縁夫婦が第7条の規定に基づいてそれぞれの共用財産から自己の債務を控除した後、残存財産が合算され、合算された財産が内縁夫婦の間で平等に分配される。

 第9条[財産分割の修正]内縁関係の期間の長さ、内縁夫婦の財産状態、その他の事情からみて、第5条乃至第8条の規定によって内縁夫婦の一方が他の一方に財産を分与することが不当とみなされる場合、内縁夫婦の一方はより多くの財産を確保しておくことができる。財産分割が行われたとき、内縁夫婦の一方が破産宣告を受けたとき、またはその他、財産分割を行うことができない事情がある場合、内縁夫婦のそれぞれは各自自分の財産を財産分割分として取得することができる。

 第10条[財産分割の方法]内縁夫婦の共用財産は内縁夫婦のそれぞれの財産分割分に従って配分される。但し、内縁夫婦のいずれか一方が共用住宅もしくは共用家財道具を必要とする場合、その財産を必要とする者は有償または無償でその共用住宅または共用家財道具を引き取ることができる。内縁夫婦の一方が他の一方の所有する財産を引き取ろうとする場合、その引き取りを必要とする相当の事由がなければならない。その財産が優先弁済債務の対象になっている場合、債務を負担している者がその債務から解放されもしくは弁済のために相当な担保を供しなければならない。

 第11条[金銭による弁済]内縁夫婦の一方は自己の財産を提供する代わりに金銭をもってその弁済を行うことができる。内縁夫婦の一方は相との担保供することによって、金銭の支払いを延期することができる。内縁夫婦の一方が金銭の支払いが行われない場合、他の一方は金銭に相当する財産の引き渡しを請求することができる。

 自己の財産分割分との相殺勘定で住宅、家財道具を引き取った者が、自己の共用財産の取り分において他の一方の取り分を満たし得ないときは、共用財産を引き取った者は金銭によってその不足分を相手方に支払わなければならない。但し、相当の担保を供することによって金銭の支払期限を延期することができる。

 第12条[内縁配偶者の死亡と財産分割]内縁夫婦の一方が死亡したとき、財産分割請求権(rätt att begära bodelning)及び住宅、家財の引き取り請求権(rätt att övertaga bostad eller bohag)は生存内縁配偶者のみに存在する。

 内縁夫婦一方の死亡によって財産分割が行われる場合、生存内縁配偶者は債務控除を行った後、生存内縁配偶者の取り分が内縁配偶者が死亡したときの社会保険法に定められているバースベロップの2倍に満たない場合、生存内縁配偶者は内縁夫婦の財産から常にバースベロップの2倍の相当する額の財産を優先的に取得することができる。

 第13条[共有推定]分筆の条件が示されることなしに、内縁夫婦が財産分割証書(bodelningshandlingen)に、それぞれの分割分に従って不動産の取得分が記載されている場合、その不動産は内縁夫婦の共有財産とみなされる。

 それ以外の場合、不動産の一部が特別の第三者に帰属することを内容とする財産分割はその限りにおいて無効とする。

第14条[婚姻法の準用]本法の規定によって行われる財産分割が行われる場合、婚姻法第9章第5条、第7条、第9条及び第10条の規定が準用される。その場合、婚姻法において夫婦となっている用語は内縁夫婦と読み換えられるものとする。尚、婚姻法にいう離婚の申立てが行われた時とは、内縁関係が解消された時とする。

 第15条[詐害行為]財産分割に際して内縁当事者の一方が債権者の利益を害する目的を持って本法第10条の規定によって自己に帰属すべき権利を放棄した場合、夫婦間の財産分割の場合に適用される婚姻法第13章第1条、第2条の規定が準用される。

  内縁当事者の一方からの財産の引渡し請求

  (Övertaganade av bostad i vissa fall)

 第16条[共用財産の引き取り]内縁夫婦のいずれか一方が、借家権(hyresatt)または特別借家権(bostadsratt)をもって共用住宅を所有している場合で、その住宅が財産分割の対象になっていない場合、他の一方はその財産を必要とし、且つ、その者がその住宅を引取ることが相当と認められる事情がある場合、内縁が解消されたとき、他の一方はその住宅を引き取ることができる。但し、内縁夫婦の間に共通の子がいない場合、もしくは過去にいなかった場合、特別の事情がない限り本条に規定は適用されない。

 前項の規定により、内縁配偶者の一方に対して住宅の引渡しを求めようとする場合、内縁配偶者の一方はその者が引渡しを求めようとする住宅から引っ越しをしてから3ケ月以内に引渡しの請求を行わなかった場合、その者は引渡し請求権を失う。

 第1項の規定により住宅の引き渡しを求めようとする者は、相手方に住宅の価格に相当する対価を支払わなければならない。住宅を引き渡し者が住宅を引き取った者との交互計算においてその支払いを受けることが可能な場合、その支払いは住宅を引き取った者の財産分割分の中で清算される。それ以外の場合のおいては、住宅を引き取った者は金銭をもって相手方にその支払いを行わなければならない。但し、住宅を引き取った者は相当の担保を供して、相当の期間、金銭の支払いを延期することができる。

 共用財産の処分制限 (Inskränkningar i rätten att förfoga över det gemensamma hemmet)

 第17条[財産処分の制限と相手方からの必要な同意]内縁配偶者は、内縁関係が解消されたとき、財産分割の対象となる、もしくは第16条の規定により内縁配偶者の一方からの引き取りの対象となる住宅を、他の一方の同意なしの他人に譲渡、賃貸またはその他の利用権付きで貸与してはならない。内縁配偶者の他の一方からの同意は、内縁関係が解消されたとき、財産分割の対象となる建物が建っている土地またはトムトレットを担保に供する場合もまたどうようである。第16条の規定によって内縁配偶者の一方からの引き取りの対象となる住宅を含む他の財産を担保に供する場合また同じ。土地またはトムトレットの譲渡、担保に関する同意は書面によってこれを行わなければならない。

 内縁夫婦は内縁関係が解消されたとき財産分割の対象となる財産を他の一方の同意なしに他人に譲渡し、または担保に供してはならない。

 財産処分に関する本条の規定は、内縁夫婦の一方が死亡したとき、死亡した内縁配偶者の相続法人(dödsbo)に対しても適用される。

 本条に規定する同意は、他の一方が有効な同意を与えることができない場合、もしくは相当の期間内に他の一方からの同意を求めることができない場合、適用されない。

 第18条[判決代行]第17条の規定により財産処分に必要な同意を欠く場合、裁判所は、財産処分を行おうとする者の請求に基づきその処分を許可することができる。

 第19条[共用財産の無断処分行為の取消]内縁夫婦の一方または死亡した内縁配偶者の相続法人が財産処分に関し、必要な同意または許可を得ないで財産処分を行った場合、もしくは他の一方の不利益において利用権を他人に貸与した場合、他の一方から請求が行われた場合、裁判所はその行為の無効を宣言し、目的物の返還を命ずることができる。内縁夫婦の一方、または死亡した内縁配偶者の相続法人が必要な同意を得ないで家財道具を入質した場合もまた同じ。但し、内縁夫婦の一方から財産を譲り受けた者または担保として目的物を受け取った者が善意(god tro)でその財産を取得した場合、その取り消しを請求することはできない。

 前項に規定する取消しの訴えは内縁夫婦の他の一方が財産処分行為のあったことを知ってから3ケ月以内に裁判所に財産処分行為無効取消しの訴えを提起しなければならない。但し、不動産またはトムトレットt(tomträtt)の譲渡を理由として所有権移転登記が行われた場合、無効取消しの訴えを提起することができない。

立ち退きの訴えが提起された場合、裁判所は立ち退きに必要な期間を設けることができる。

 その他の規定(Övreiga bestämmelser)

 第20条[婚姻法の準用]婚姻法第17章第1条、第2条及び第4条乃至第9条、第18章第1条の規定は内縁夫婦間の争いにも適用される。その場合、夫婦について規定されていることが内縁夫婦に適用される。1988年法律第1458号により改正。

 第21条[残留者決定およびその変更]裁判所は内縁夫婦の一方から請求が行われた場合、財産分割が行われるまでの間、第5条の規定によって財産分割の対象とならない住宅に残留する者を決定しなければならない。

 内縁夫婦の一方から請求があった場合、裁判所はいつでも残留決定の変更を行うことができる。

 第22条[残留者の住宅及び家財使用権]裁判所の決定によって共用住宅に残留権を取得した者は

財産分割が行われるまでの間、その住宅内にある共用家財道具または相手方の所有する家財道具を使用することができる。但し、裁判所の決定によって使用の禁止されている家財道具についてはその限りでない。残留者決定が行われた後は、残留権をもっていない者は残留者以外の者との契約によって残留者の住宅または家財道具を使用する権利を害することはできない。

 共用残留者の決定が行われた場合、他の一方は直ちにその住宅から退去してゆかなければならない。

 第23条[残留者決定裁判所]内縁夫婦の共用住宅残留者決定に関する問題は、財産分割が行われるまでの間、内縁夫婦の財産問題を審理する権限を持っている地方裁判所の管轄に属する。住宅他は家財道具の処分に関する許可事件についてもまた同じ。

 第24条[共用住宅残留許可]第16条に規定されている共用住宅引渡し請求訴訟において、確定判決がでるまでの間、内縁夫婦のいずれか一方から共用住宅残留の申立てがあった場合、裁判所は残留許可を与えることができる。残留許可が借家権もしくはブースターヅレット(hyres- eller bostadsratt)をもっていない内縁配偶者に認められた場合、裁判所は住宅の使用料、その他管理に必要な事項を定めておかなければならない。

 内縁夫婦の一方に共用住宅残留許可が認められた場合、他の一方は直ちにその住宅を退去してゆかなければならない。

 第1項に定められている決定は確定判決と同様の効力を有する。但し、その決定はいつでも裁判所において変更すことができる。裁判が確定される場合、裁判所は以前に行った決定について再審理しなければならない。

 本条の規定によって行われる決定については、婚姻法第14章第9条の規定が適用される。その場合、夫婦という用語は内縁夫婦と読み換えられるものとする。

 

 内縁夫婦財産関係法の施行に関する法律

Lag (1987:789) om ikraft trädande av lagen (1987:232) om sambors gemensamma hem

 内縁夫婦の財産関係に関する法律の規定は1988年1月1日からこれを施行する。内縁夫婦の財産関係に関する法律の施行と同時に内縁当事者の共用住宅に関する法律(Lagen (1973:65) om ogifta samboendes gemensamma bostad)を廃止する。但し、内縁関係が本法施行前に解消された場合で、且つ、必要な同意なしに財産処分が本法施行前に行われている場合、旧法の規定が適用される。

 

以    上 (菱木昭八朗訳)


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