スウェーデン・ストーカ防止法
訪問禁止法(lag (1988:688) om besöksförbud)
訪問禁止の要件(Förutsättningar för besöksförbud, m.m.)
第1条 訪問、その他の方法で他人と接触または他人につきまとう者に対して、本法の規定によって、その行為を禁止することができる(訪問禁止
(besöksförbud))。特別の状況により、訪問禁止決定によって保護を受ける者に対して、訪問禁止処分の対象となる者が、犯罪、またはつきまとい、もしくはその他の方法で特に重大な嫌がらせを行う危険のある場合、訪問禁止の処分を行うことができる。そのような危険の有無を判断する場合、特に、訪問禁止処分を受ける者が、過去に他人の生命、身体、自由、平和に対して侵害を行ったことがあるか否かということに考慮しなければならない。
訪問禁止処分以外の軽度の方法をもって訪問禁止の目的が達せられる場合、その決定を行うことができない。
特別の状況から見て、明らかに接触を必要とする正当な事由がある場合、訪問禁止処分を行うことがでない。
第2条 第1条に規定されている訪問禁止処分によってその目的が達せられない場合、訪問禁止の範囲を訪問禁止決定によって保護を受ける者以外の他人の住居または職場周辺、もしくはその者が立ち寄る場所にまで拡大することができる。
第3条 訪問禁止命令は、それぞれの事件において必要と思われる制限および例外を付すことができる。
第4条 訪問禁止処分は、最高1年間その効力を有する。訪問禁止処分は別段の定めがない限り、直ちにその効力を生ずる。訪問禁止処分は一回につき、最高1年間その期間を延長することができる。
第5条 訪問禁止処分は、訪問禁止処分の対象となる者に対して通知しなければならない。その際、「公示催告に関する法律」
(delgivningen (1970:428)第12条および第15条の規定は適用されない。第6条 訪問禁止処分の問題は、早急に、処理されなければならない。
検察官の許での手続き(Förfarandet hos åklagaren)
第7条 訪問禁止処分に関する問題は、訪問禁止処分によって保護を受ける者からの請求またはその問題を取り上げるべき事由ある場合、検察官によって審理される。
第8条 訪問禁止処分に関する決定は、その禁止処分の全部またはその一部が適用される地区の検察官もしくは訪問禁止処分によって保護を受ける者が住所または主として滞在している地域を管轄する検察官によって行われる。
訪問禁止処分の適用の対象となる者が訪問禁止と関係ある犯罪の恐れある場合、その問題はその犯罪に対して刑事訴追を行うことのできる検察官によって訴えを提起することができる。
検察官に関しては訴訟法第7章の規定が適用される。
第9条 訪問禁止の問題の調査のため、検察官は、警察官の助力を求めることができる。
訪問禁止問題の調査に関し、訴訟法第23章第4条、第6条、第7条および第9条乃至第12条の規定が、適用可能な範囲において適用される。第4条および第11条の容疑者について適用される規定は、訪問禁止が適用される者に適用される。
第11条 訪問禁止処分の審理を行う前に、訪問禁止処分の対象となる者および訪問禁止処分によって保護を受ける者は、第三者から提供された情報を知らされ、且つその情報に対して意見を述べる機会を与えられる。但し、その問題は、その措置があきらかに不要とみなされる場合、またはそうすることによって事件の決定を行うことが著しく困難となる場合もしくはその決定を直ちに行うことができなくなるおそれある場合にはその限りでない。
前項に規定されている報告をどのように行うかは検察官の判断に委ねられる。報告義務は、「秘密保護法」第14章第5条に規定されている制限規定が適用される。
第12条 検察官によって行われた訪問禁止決定は書面によって行われ、且つ次に掲げる事項を記載しなければならない。
第13条 検察官が訪問禁止処分事件の審理を行う場合、「行政法」
(forvaltningslagen (1986:223)第4条乃至9条、第14条乃至第15条、第20条第1項後段1,3および4号、第2項、第26条の規定が適用される。裁判所における審理(Rättens prövning)
第14条 検察官による訪問禁止処分によって訪問禁止処分を受けた者、またはその決定によって保護を受ける者から請求が行われた場合、検察官によってなされた訪問禁止決定は地方裁判所において審理することができる。審理の請求申請は、当該事件に関し管轄権を有する地方裁判所に対して事件を移送すべき検察官に対して行う。
第15条 管轄裁判所は、訪問禁止の問題を審理した検察官が、一般刑事事件に関して訴えを提起することのできる地方裁判所とする。
第16条 検察官が訪問禁止に関する決定を行った場合、その決定によって、保護を受ける者から請求があったとき、特に反対の理由がないかぎり、検察官は、裁判所に対して、その者の訴えを提起しなければならない。
裁判所は、それが不要でない場合、検察官からの意見を求めなければならない。
第17条 裁判所は、訪問禁止決定が当分適用されないことを命ずることができる。訪問禁止が未だ発せられていない場合、裁判所は、その事件が最終的な決着を見るまでの間、暫定的にそのような禁止を命ずることができる。
第18条 事件の決定に際し、地方裁判所は1名の専門裁判官と3名の参審員によって構成される。その他の場合には一名の専門裁判官によって審決が行われる。
再審理に際しては、訴訟法第29章の規定が適用可能な範囲において適用される。
第19条 当事者の一方から別段の請求が行われない限り、審理は、「裁判所事件の処理に関する法律」
(lagen (1946:807) om handläggning av domstolsärenden)第4条第2項により、常に裁判所において行われる。第20条 訴訟法第18章第6条に規定される特別の事由がない限り、当事者は、各自その費用を負担しなければならない。
第21条 訪問禁止事件に関する裁判所の審理に際しては、「裁判所事件の処理に関する法律」第2条第2項乃至第5項、第3条、第4条第1項および第2項、第5条および第9条乃至第12条の規定が適用される。その場合、審理に関する請求の問題において、本法において述べらていることが請求に適用される。
第22条 訪問禁止の決定に対して、ある者が裁判所の審理を請求した場合で、且つ訪問禁止決定によって訪問禁止処分を受けている者が、その訪問禁止に関する事件の容疑者とみなされている場合、訪問禁止の決定は、一般刑事裁判
(i mål om allmänt åtal rörande brottet.)のなかで審理することができる。その場合、訴訟法に関する規定が、その事件に適用される。訪問禁止決定の取消、変更(Hävande eller ändring av besökförbud)
第23条 事情の変更によってその必要性が生じた場合、検察官は、検察官、または裁判所によってなされた訪問禁止に関する決定を取り消しまたは変更することができる。
但し、前項の規定は、その決定が裁判所の審理の対象となっている場合にはその限りでない。
訪問禁止違反(Överträdelse av besöksförbud )
第24条 訪問禁止決定に違反した者は、訪問禁止決定違反
(överträdelse av besökförbud)の罪として、罰金または一年以下の懲役に処する。但し、事件の内容が軽微な場合、その責任を免除することができる。一九八九年法律第一〇七五号により改正。1990年4月1日施行。
第25条 1989年法律第1075号により削除。
以 上 (菱木昭八朗訳)
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