スウェーデン新婚姻法

ÄKTENSKAPSBALK

 

   目      次

第1部  総 則(Allmänna bestämmelser

  第1章  婚 姻(Äktenskap)

第2部  婚姻の成立と解消Äktenskaps ingående och upplösning

  第2章 婚姻障害(Aktenskapshinder)

  第3章 婚姻障害審査(Provning av äktenskapshinder)

  第4章  挙 式(Vigsel)

  第5章  離 婚(Äktenskapsskillnad)

第3部  夫婦の財産関係(Makars ekonomiska förhållanden)

  第6章 夫婦間の扶養(Underhåll)

  第7章 夫婦の財産(Makars egendom)

  第8章 夫婦間の贈与(Gåvor mellan makar)

  第9章 財産分割に関する一般的規定(Allmänna bestämmelser om bodelning)

  第10章 財産分割の対象となる財産(Vad som skall inga i bodelning)

  第11章 財産分割分と具体的取り分(Andelar och lotter)

  第12章 財産分割の修正(Jämkning vid bodelning)

  第13章 財産分割の効果(Verkan av bodelning)

第4部 訴訟規定(Rättegångsbestämmelser)

  第14章 婚姻訴訟と扶養訴訟(Äktenskapsmål och mål om underhåll)

  第15章 婚姻の成立に関する事件(Ärenden om aktenskaps ingaende)

  第16章 登 録(Registreringsarende)

  第17章 財産分割人(Bodelningsforrattare)

  第18章 共通規定(Gemensamma bestammelser)

以   上

国会の決定により、婚姻編(äktenskapsbalk)と称する本法の規定をスウェーデン国法典(Sveriges rikes lag)の冒頭編に置く。


 

第1部  総 則Allmänna bestämmelser

第1章  婚 姻(Äktenskap)

 第1条[一夫一婦制の原則]婚姻(äktenskap)は1人の女と1人の男によって成立する。婚姻によって男女は夫婦(makar)となる。

 第2条[夫婦の扶養・協力義務]夫婦は、お互いに信頼と尊重(trohet och hansyn)を旨とし、協同して家と子供(hem och barn)を守り、話し合いによって(i samråd)、家庭の幸福(familjens bästa)を実現しなければならない。

 第3条[夫婦別産制の原則]夫婦は、お互いに自分の財産(sin egendom)を自分で管理し、自分の債務(sina skulder)については、自分でその責任を負わなければならない。

 第4条[夫婦の婚姻費用分担義務]夫婦は、お互いに婚姻生活に必要な費用と家事(utgifter och sysslor)を分担しなければならない。

 夫婦は、お互いに家庭の経済状態を知るため、必要な資料を提供しなければならない。

第5条[婚姻の解消事由]婚姻は、配偶者の死亡(den ena makens död)と離婚(äktenskapsskillnad)によって解消する。

目次に

第2部 婚姻の成立と解消 Äktenskaps ingående och upplösning

第2章 婚姻障害(äktenskapshinder)

 第1条[婚姻年齢]18才未満の者は、その者が住所(hemvist)を有する県(län)の県庁の許可(tillsånd av länstyrelsen))が得なければ婚姻を行うことができない。

 第2条[禁治産者の婚姻](1988年法律第1254号により削除)。

 第3条[近親婚の禁止]直系血族または父母を同じくする兄弟姉妹は、婚姻を行うことができない。

 父母を異にする兄弟姉妹は、政府または政府の指定する行政官庁の許可を得なければ、婚姻を行なうことができない。

 第4条[重婚の禁止]婚姻中の者または登録されたパートナーシップ(registrerat partnerskap)の関係にある者は、重ねて婚姻を行なうことができない。(1994年法律1118号により改正)

目次に

第3章 婚姻障害審(Provning av äktenskapshinder)

 第1条[婚姻障害審査機関]婚姻当事者は、婚姻に先立って婚姻障害審査を受けなければならない。婚姻障害審査は、女または男が国民登録を行っている県の県税事務所(skattmyndighet)において行う。婚姻当事者の双方がスウェーデン国内において国民登録を行っていない場合、婚姻障害審査は、そのいずれか一方が居住している県の県税事務所において行う。

 婚姻当事者が共同して、婚姻障害審査請求申請を行う場合、婚姻当事者は、スウエーデン国内のどこの県税事務所または社会保険事務所(allmän försäkringskassa)においても、婚姻障害審査請求申請を行なうことができる。(1991年法律第495号により改正)。

 第2条[スウェーデン国内に国民登録を行っていない者の婚姻障害審査]スウェーデン國内において国民登録を行うことを必要としない者または国民登録を行っていない者は、婚姻障害審査請求に際して、可能な限り外国官公署によって発行された婚姻資格証明書を提示しなければならない。 

 婚姻に際して許可を必要とする者は、許可証明書を添付しなければならない。(1991年法律第495号により改正)。

 第3条[近親関係および重婚関係不存在宣誓]婚姻障害審査請求に際して、婚姻当事者は、直系血族または父母を同じくする兄弟姉妹の関係にないことを、書面をもって証明しなければならい。第2章第3条第2項の規定によって、婚姻の許可を必要とする者が、必要な許可を受けていない場合、父母を同じくする兄弟姉妹でないということを証明した書面は、只単に、婚姻当事者が、お互いに父母を同じくする兄弟姉妹でない、ということを宣言したものとして取り扱われる。

 婚姻障害審査請求を行なう者は、誠実に(på heder och samvete)、過去における婚姻またはパートナーシップ登録の有無を書面をもって申告しなければならない。過去に、婚姻またはパートナーシップ登録を行ったことのある者は、国民登録または外国官庁の発行する証明書によって、その婚姻またはパートナーシップ登録が解消されていることを証明できない場合、別の方法をもってそのことを証明しなければならない。(1994年法律第1118号により改正)。

第4条[婚姻適格証明書の発行]婚姻障害のないことが確認され、且つ婚姻当事者から請求があった場合、県税事務所は婚姻適格証明書を発行しなければならない。(1991年法律第495号により改正)。

 目次に

第4章  挙 式(Vigsel)

 第1条[婚姻の成立要件]婚姻は、親族またはその他立会人の出席する挙式(vigsel)によって成立する。

 第2条[挙式手続および無効婚の転換]婚姻当事者は、挙式に出席しなければならない。婚姻当事者は、挙式執行者による質問に対して、それぞれその婚姻に同意している旨を確答しなければならない。確答が行われた後、挙式執行者は、婚姻当事者が夫婦になったことを宣言しなければならない。

 前項の規定に従って挙式が行なわれなかった場合、または挙式執行者が執行権限を欠いている場合、その挙式は無効とする。

 前項の規定よって無効となるべき挙式であっても、相当の事由がある場合、政府はその挙式を有効とすることができる。但し、無効婚から有効婚への転換は、婚姻当事者のいずれか一方からその申立てがあった場合、婚姻当事者の一方が死亡している場合には、死亡した者の相続人からその申立てがあった場合に限って、これを認めることができる。

第3条[挙式執行者]挙式を行うことのできる者は、次の各号に掲げる者でなければならない。

  1. スウェーデン国教会に所属する僧侶
  2. 「スウェーデン国教以外の宗教団体における挙式権限に関する法律」によって挙式を行うことが認められている教団の僧侶およびその他の教団の主宰者
  3. 地方裁判所の判事、県から挙式執行権限を与えられている者(1993年法律第304号により改  正)。

 第4条[婚姻当事者による挙式執行者の指名]スウェーデン国教会内で婚式を行なう者は、教会所属牧師の中から挙式執行者を指名することができる。婚姻当事者は自分の所属する教区教会において挙式を行う権利を有する。

 第5条[挙式執行者の婚姻資格確認義務]挙式執行者は、挙式の日から遡って4ケ月以内に婚姻障害審査(hinderprövning)が行なわれ、且つ婚姻障害のなかったことを確認しなければならない。(1991年婚法律第495号により改正)。

第6条[挙式関連規則]挙式には、本法の外、次に掲げる規則が適用される。

  1. 挙式がスウェーデン国教会で行なわれる場合、教会典範(kyrkohandboken)、その他スウェーデン国教会規則
  2. 挙式がスウェーデン国教会以外の教会で行なわれる場合にはその宗教団体の挙式規則その他、政令によって定められている諸規則

 第7条[挙式執行者の挙式証明書発行義務]挙式執行者は、式終了後、直ちに婚姻当事者に対して、挙式証明書(bevis om vigsel)を発行しなければならない。政府は場合によって、特別の婚姻記録を作成することを命ずることができる。

 第 8条[挙式執行者の県税事務所への報告義務]挙式執行者は、挙式終了後、直ちに婚姻障害審査を行った県税事務所に対して、挙式報告を行なわなければならない。

挙式が、婚姻、養子縁組および後見の国際関係に関する規則(förordningen (1931:429) om vissa internationella rättsförhållanden rörande äktenskap, adoption och förmynderskap)第2条の規定によって、スウェーデン国内において適用される有効な婚姻障害審査を経て行われた場合、その報告(underrattelse)は、挙式が行われた地区を管轄する県税務事務所(den skatte-myndighet inom vars verksamhetsområde vigseln ägt rum)に対して送付しなければならない。1994年法律1976号により改正。(1995年1月1日より施行)。

目次に

第5章  離 婚(Äktenskapsskillnad)

 第1条[協議離婚]離婚の合意が調ったとき、夫婦は離婚の権利(rätt till äktenskapsskillnad)を取得する。離婚当事者双方が、共に考慮期間(betänketid)を置くことを欲した場合、または離婚当事者のいずれか一方に、その者と生活を共にし、且つその者の監護(vårdnad)に服する16才未満の子供がいる場合、一定の考慮期間を置かなければならない。

第2条[単独離婚]夫婦の一方が離婚を欲する場合、一定の考慮期間を経過した後でなければ離婚することができない。

 第3条[考慮期間]離婚の申立てが夫婦共同して行なわれた場合、考慮期間は離婚の申立てが行なわれたときから開始する。離婚の申立てが配偶者の一方からなされた場合、考慮期間は、離婚の申立てが他の一方に通知されたときから開始する。6ケ月の考慮期間を経過した後、婚姻当事者は、裁判所に対して、改めて離婚判決を請求しなければならない。考慮期間開始後、1年以内に離婚当事者から離婚判決の請求が行なわれなかった場合、離婚問題は解消されたものとみなされる。離婚の訴えが却下されたときまたは離婚訴訟の取り下げが行われたとき、その時点で考慮期間は消滅する。

 第4条[即時離婚原因・2年間の別居]夫婦の別居期間が2年以上継続している場合、夫婦は、考慮期間を置かないで、直ちに離婚の権利を取得する。

 第5条[即時離婚原因・近親婚または重婚]婚姻当事者が直系血族の場合または父母を同じくする兄弟姉妹の場合、婚姻当事者は、考慮期間を置かずに、直ちに離婚の権利を取得する。婚姻当事者の一方が、既に、婚姻または登録されたパートナーシップ関係にある場合で、且つその婚姻またはパートナーシップ登録が解消されていない場合また同様である。

 婚姻成立の際、夫婦の一方が、婚姻または登録されたパートナーシップ関係にあるとき、前婚の配偶者またはパートナーシップ登録当事者は、離婚またはパートナーシップ登録の解消を通じて、考慮期間を置かず、直ちにその婚姻または登録されたパートナーシップ関係を解消することができる。第1項に定められている場合、離婚の訴えは検察官によってもこれを行うことができる。(1994年法律第1118号により改正)。

 第6条[離婚の成立時期]婚姻は、離婚判決の確定と同時に解消されたものとみなされる。

目次に

第3部 夫婦の財産関係(Makars ekonomiska förhållanden)

第6章 夫婦間の扶養(Underhåll)

 第1条[夫婦の婚姻費用分担義務]夫婦はそれぞれその資力に応じて、夫婦およびそれぞれの生活にとって必要な費用を負担しなければならない。

 子の扶養については親子法に定める規定による。

 第2条[不足婚姻費用の負担義務]配偶者一方から提供された金銭によって、自己または家族の生活が維持できない場合、他の一方はその不足分を負担しなければならない。

 第3条[余剰婚姻費用]配偶者の一方が、第1条または第2条の規定に基づいて、他の一方に対してその生活にとって必要な金銭を提供した場合、提供された金銭はその金銭を提供された者の財産とみなされる。

 第4条[緊急家事代理]配偶者の一方が、病気または不在のため自己の財産を管理することができない場合で、且つその財産をもって家族が生活の費用としている場合、他の一方は、必要な範囲内において病気の配偶者または不在配偶者の給料を受領し、もしくはその者の財産から生ずる利息を収取し、銀行その他の預金から金銭を引き出すことができる。但し、夫婦が別居している場合、病気の配偶者または不在配偶者が代理人(fullmäktig)を選任し、もしくは後見人(förmyndare)、特別代理人(god man)または管理後見人(förvaltare)の後見に付されている場合、本項の規定は適用されない。

 引き出された金銭または受領した金銭が、実際の生活にとって必要としなかった場合であっても、そのことによって本人は第三者に対抗することができない。(1988年法律第1254号により改正)。

 第5条[婚姻費用の負担分請求]配偶者の一方が婚姻費用の負担義務を怠った場合、他の一方は、裁判所を通じて、その者に対して婚姻費用の負担分を請求することができる。

 第6条[別居中の夫婦の婚姻費用の支払い義務・別居中の夫婦の財産引渡義務]夫婦が継続して生活を共にしていない場合であっても、配偶者の一方は他の一方に対して生活費の提供を求めることができる。

 夫婦が継続して生活を共にしていない場合、裁判所は配偶者の一方から請求のあった場合、他の一方に対して、配偶者の一方が必要とする家財道具の引き渡しを命ずることができる。但し、その命令は共同生活が解消されたとき、いずれか一方に帰属する家財道具に限られる。裁判所の決定が行われた場合、その財産を所有する者は第三者との契約によって、他の一方の利用権を制限することはできない。

 第7条[離婚後の扶養]夫婦は、離婚後、それぞれ自分の生活を自分で維持してゆかなければならない。

  離婚した配偶者の一方は、離婚後、一定期間、自己の生活を維持するために必要な範囲において、他の一方に対して、その者の状況からみて相当と思われる限度において、扶養料を請求することができる。

 婚姻期間が長期間継続している場合で、且つ婚姻が解消されたことによって離婚当事者の一方がその生活を維持することができないとき、もしくはその他の事情によって離婚後の生活を維持することのできない相当の事由がある場合、その者は本条第2項の規定に定められている期間を超えて扶養料を請求することができる。

 第8条[離婚扶養料の支払方法]離婚後の扶養料の支払いは定期的に継続してこれを行なわなければならない。但し、特別の事由がある場合、裁判所は一括して扶養料の支払いを命ずることができる。

 第9条[過去の扶養料]離婚当事者の一方から、離婚後の扶養請求の訴えが提起された場合、裁判所は、扶養請求の訴えが提起されたときから3年前に遡って扶養料の請求を認めることができる。但し、扶養義務者においてそれ以前の扶養料の支払いを容認した場合にはその限りでない。

 第10条[扶養請求権の消滅時効]既に確定している扶養請求権は、履行期日の到来したときから3年をもって時効により消滅する。

 扶養債権を保全するため、前項の規定に定められている期間内に強制執行の申立てが行なわれた場合、または扶養債務者が前項に定められている期間内に破産宣告の申立てを行なった場合、それ以後、扶養料は差押え財産、または破産財団から支払われるものとする。

 和議法の規定により、管財人の選任申請が第1項の規定に定められている期間内に行なわれた場合、扶養料の請求は、管財人選任の効力が発生したときから3ケ月以内に、または強制和議が開始された場合には、和議事件が解決されたときから3ケ月以内にこれを行なわなければならない。和議が成立した場合、扶養債権は和議が成立したときから3ケ月以内にその申立てを行なわなければならない。本項に定める期間内に扶養債権保全のための強制執行の申立てが行なわれた場合、または破産宣告の申立てが行なわれた場合、本条第2項の規定を準用する。

 本条の規定に反する契約はこれを無効とする。

 第11条[事情の変更と裁判所による扶養料の変更決定]事情の変更によってそのことが相当と思われる場合、裁判所は以前になされている扶養判決または扶養契約の変更を命ずることができる。但し、相手方の反対の意思表示がある場合、裁判所は扶養判決または扶養契約変更の訴えが提起されるまでの間、扶養料の未払い分に限って減額または免除の言い渡しを行なうことできる。離婚後の扶養料については相当な事由のある場合に限り、先に定められている扶養料の最高額を超えて、その増額を認めることができる。但し、一括払いの扶養料については、相手方の同意がない限り、その額を変更することができない。

扶養に関する契約が、契約成立の際の事情またはその他の事由によってその契約が不当とみなされる場合、裁判所はその契約の変更を命ずることができる。但し、既に支払われている扶養料については、特別の事情ある場合を除いてその返還を命ずることができない。

 目次に 

第7章 夫婦の財産(Makars egendom)

 第1条[婚姻財産と特有財産]夫婦の財産は特有財産(enskild egendom)と婚姻財産(giftorättsgods)に区別される。

第2条[特有財産]本法において、特有財産(enskild egendom)とは、次ぎに掲げる財産のことをいう。

  1. 夫婦財産契約(äktenskapsförord)によって特有財産とされている財産
  2. 夫婦の一方が、他の一方以外の者から、受贈者の特有財産とすることを条件として、贈与受けた財産
  3. 夫婦の一方が、他の一方以外の者から、受遺者の特有財産とすることを条件として、遺言によって、贈与を受けた財産
  4. 夫婦の一方が、他の一方以外の者から、相続によって取得した財産で、且つ被相続人の遺言によって、相続人の特有財産とすることが指定されている財産
  5. 夫婦の一方が、他の一方以外の者によって締結された生命保険(livsförsäkring)、損害賠償保険(olycksfallsförsäkring)、傷病保険(sjukförsäkring)、または「個人年金預託法(lagen (1993:931)om individuellt pensionssparande)(3)に規定されている年金信託の受取人指定約款等によって、配偶者に帰属した財産で、且つ受取人の特有財産とすることが条件とされている財産
  6. 本条第1号乃至第5号の規定に定められている財産に代わるべき財産で、その財産を特有財産としている法律行為において、別段の定めがなされていない場合の財産

 特有財産から生じた果実は、第1項に定められている書面において特別の定めがない限り、婚姻財産とみなされる。(1993年法律第310号、第933号にて改正)

 第3条[夫婦財産契約]夫婦、または婚約当事者は、夫婦財産契約(äktenskapsförord)によって、それぞれの財産を、それぞれの特有財産とすることができる。夫婦は、新しい夫婦財産契約によって、それぞれの特有財産を、それぞれの婚姻財産とすることができる。

 夫婦財産契約は、契約当事者双方の署名ある書面によって、これを行なわなければならない。以上のことは、配偶者の一方が、未成年者の場合、または夫婦財産契約が親子法第11章第7条の規定されている管理後見の対象となっている財産を含んでいる場合においても適用される。但し、その場合、後見人(förmyndare)、または管理後見人(förvaltare)の書面による同意を得なければならない。

 夫婦財産契約はこれを裁判所に登記しなければならない。婚約当事者の間で締結された夫婦財産契約は、婚姻成立の日から、1ケ月以内に、その契約を裁判所に登記した場合に限り、婚姻成立の日からその効力を生ずる。それ以外の場合、夫婦財産契約は、登記の日からその効力を生ずる。(1988年法律第1254号により改正)。

第4条[共用住宅]本法において、夫婦の共用住宅(gemennsamma bostad)とは、次に掲げる財産のことをいう。

  1. 夫婦の双方またはそのいずれか一方が、所有権またはトムトレット(tomträtt)()に基づいて取得ている土地で、その土地の上に夫婦の共用住居が建てられて いる場合、またはその土地が、主として夫婦の共用住居を建てる目的をもって取得されている場合の土地
  2. 夫婦の双方またはそのいずれか一方が、借地権(nyttjanderätt)に基づいて自己の建物を建てる目的で所有している土地で、その土地に夫婦の共用住居が建てられている場合、またはその土地が主としてそのような建物を建てる目的をもって保有されている場合の土地
  3. 夫婦の双方またはそのいずれか一方が、借家権(hyresrätt)、、またはそれに類似する権利をもって借り受けている建物、または建物の一部で、その建物または建物の一部が、夫婦の共用住居として 、もしくは主としてその目的のために保有されている場合
  4. 夫婦の双方またはそのいずれか一方が、将来、ブースターヅレットに関する法1991:614)第5章に規定されている予約に基づいて、ブースターヅレット付き取得する権利をもっている建物、または建物の一部で、その権利が契約締結の時に、夫婦の共同住宅にすること、または主としてその目的のために占有されている場合

 本法において夫婦の共用家財(gemensamma bohag)とは、家具、家庭用機器、その他、夫婦の共同利用を目的として取得した家財道具のことをいう。但し、専ら、夫婦いずれか一方の個人的な用に供されている家財道具は、共用家財の中に含まれないものとする。

 主として、夫婦いずれか一方の余暇目的に利用されている財産は、夫婦の共用住宅、または共用家財の中に含まなれないものとする。(1991年法律第618号により改正)。

第5条[配偶者の財産処分権の制限]配偶者の一方が、次に掲げる行為を行なう場合、他の一方の同意を得なければならない。

  1. 夫婦の共用住宅となっている不動産を譲渡、担保、賃貸、その他の利用権付きで他人に提供する場合
  2. 夫婦の共用住宅となっているその他の財産を譲渡、担保、賃貸、その他、利用権付きで他人に提供する場合
  3. 夫婦の共用家財を譲渡、担保に供する場合

  本条第1項の規定は、本章第2条第1項第2号乃至第4号の規定によって、配偶者の一方の特有財産となっている共用住宅、または共用家財については適用されない。

 財産が、夫婦の共用住宅となっていない場合であっても、当該財産が、配偶者の一方の婚姻財産となっている場合、その財産を所有する配偶者は、他の一方の同意なしに、その財産を他人に譲渡、または担保に供し、もしくはその他の利用権付きで他人に提供してはならない。但し、離婚訴訟が裁判所に係属している場合で、且つその財産が、離婚の申立てが行なわれた後に取得された財産であるときにはその限りでない。

 配偶者の一方が、土地の処分を行う場合、他の一方からの同意は、書面によってこれを行なわなけれならない。

 土地およびその権利に関する規定は、地上権(tomträtt)についても適用される。

 第6条[死亡した配偶者の相続法人の財産処分行為に対する準用]第5条の規定は死亡した配偶者の相続法人(dödsboet)が前条に定められている処分行為を行なう場合にも適用される。

 第7条[配偶者の同意を要しない場合]同意をなすべき配偶者が必要な同意を与えることができない場合、または相当の期間内に同意を与えることができない場合、第5条、第6条に定める同意を要しない。離婚によって、既に財産分割が行なわれている場合、第5条に定められている同意を要しない。

 第8条[裁判所による同意代行]財産処分を欲する者が、第5条または第6条の規定に定められている同意を得ることができない場合、裁判所の許可を得て財産処分を行なうことができる。 

 第9条[必要な同意なき財産の処分行為とその法的効果]配偶者の一方が、他の一方からの同意なしに、または死亡した配偶者の相続法人が、生存配偶者の同意なしに財産処分を行なった場合、もしくは財産の利用権を第三者に譲渡したため生存配偶者の利用権が侵害された場合、裁判所は、他の一方からの申立てによって、その処分行為を取り消し、同時に、処分によって取得した財産の返還を命ずることができる。配偶者の一方が、他の一方から、または相続法人が生存配偶者からの必要な同意なしに夫婦の共用家財を担保に供した場合、また同じ。但し、そのことをもって善意の第三者に対して対抗することができない。

 前項の規定に基づいて、取消しの訴えを提起しようとする場合、配偶者の他の一方が処分行為の行なわれたことを知ってから3ケ月以内にその訴えを提起しなければならない。但し、家財道具の場合、その期間は引渡しの行なわれたことを知ってから3ケ月以内とする。不動産、またはトムトレットについては、既に登記が行なわれている場合、取消しの訴えを提起することができない。

 建物の明け渡しの訴えが提起された場合、裁判所は、相当の期間を定めて建物の明け渡しを命ずることができる。

目次に 

第8章 夫婦間の贈与(Gåvor mellan makar)

 第1条[夫婦間の贈与の効力]夫婦間贈与(gåvor mellan makar)が一般的な贈与契約の要件を満たしている場合、または本法第16章の規定に基づいて贈与登録が行なわれている場合、その贈与は有効な贈与とみなされる。

 本法第16章の規定によって夫婦間贈与の登録が行われている場合、受贈配偶者はその贈与をもって、贈与配偶者の債権者に対抗することができる。夫婦間贈与が、専ら個人的な贈与の場合、または目的物の価格が贈与配偶者の財産状態からみて相当とみなされる場合で、且つその贈与が当事者の間で有効な贈与とみなされる場合、受贈配偶者はその贈与をもって贈与配偶者の債権者に対抗することができる。

 受贈配偶者が夫婦間贈与をもって、贈与配偶者の債権者または第三者に対抗するために特別の登録を要する場合、その登録が行なわれていない限り、受贈配偶者は夫婦間贈与をもって、贈与配偶者の債権者に対抗することができない。

 第2条[単純贈与契約]婚姻中、夫婦の一方から、他の一方に対してなされた単なる贈与約束(utfästelse)は無効とする。

 第3条[夫婦間の贈与と第三者との関係]夫婦間に贈与が行なわれたとき、既に、贈与配偶者が自己の債務を弁済する能力を失っていた場合、または贈与の行なわれたときに負担していた債務を弁済することができなくなっていた場合、受贈配偶者は受贈財産の範囲内で、贈与配偶者の債務を負担しなければならない。但し、個人的贈与(personlaiga presenter)については、その価格が贈与配偶者の財産状態からみて相当とみなされる場合にはその限りでない。夫婦間贈与が第三者に対する対抗要件を具備したとき、明らかに贈与配偶者の許に債務を弁済するに足る財産が残されていた場合、また同じ。

 受贈配偶者の責めに帰すべからざる事由により、目的物が滅失毀損していた場合、受贈配偶者は目的物の現に存する範囲でその責めを負うものとする。

但し、破産法(konkurslagen(1987:672)または会社再建法(lagen (1996:764) om företagsrekonstruktion)の規定によって贈与物返還請求の訴えが提起されているかぎり、受贈配偶者は本条の規定によってその責任を免れることができない。(1996年法律第1053号により改正)

目次に

第9章 財産分割に関する一般規定(Allmänna bestämmelser om bodelning)

 第1条[財産分割の発生原因]婚姻が解消されたとき、その夫婦の財産は、財産分割(bodelning)(4)の手続きによって清算される。但し、夫婦の財産が特有財産だけで、且つ配偶者の一方から、他の一方に対して、住居、または家財道具の引渡し請求が行なわれなかった場合、財産分割を行なうことを要しない。

 夫婦間に合意が調ったとき、夫婦は、婚姻中、離婚に関係なく、書面をもって裁判所に届け出た後、財産分割の手続きにしたがって、財産財関係を清算することができる。地方裁判所は、婚姻中の財産分割の届出を受理した場合、その旨を記録に留めておかなければならない。

 第2条[財産分割の始期]財産分割は、離婚の訴えによって開始する。配偶者の死亡によって婚姻が解消された場合、離婚訴訟が裁判所に係属している場合を除いて、財産分割は、配偶者の死亡と同時に開始する。

 離婚に関係なく財産分割が行なわれる場合、財産分割は、第1条第2項の規定によって財産分割の届出が行なわれた日をもって開始する。

 第3条[財産分離]夫婦は、財産分割が行なわれるまでに自己の財産と他人の財産の別を明確にしなければならない。夫婦は、財産分割に必要な資料を提供しなければならない。

 第4条[離婚による財産分割]離婚によって財産分割が行なわれる場合、財産分割は、婚姻が解消されたときに行なわれる。但し、離婚訴訟係属中に離婚当事者の一方から財産分割の請求があった場合、直ちに、財産分割を行なわなければならない。

 第5条[財産分割の当事者]財産分割は、夫婦共同してこれを行なわなければならない。財産分割が行なわれたとき、夫婦は、それぞれの署名のある財産分割証書を作成しなければならない。配偶者の一方が死亡している場合、財産分割は、生存配偶者と死亡した配偶者の相続人および包括的受遺者との間で行なわれる。相続人および包括的受遺者については、特に別段の定めがない限り、配偶者に関する規定が準用される。

 第6条[財産分割の停止]共同相続人の一人から反対の意思表示があった場合、死亡配偶者の知れたる債務の弁済が行なわれるまで、または弁済に充当される財産が特別の管理に置かれるか、もしくは共同相続人の間で、その債務について責任を負わない旨の協議が調うまでは、生存配偶者と相続人および包括的受遺者との間で財産分割を行なうことができない。

 但し、死亡配偶者の財産が破産宣告を受けた場合、共同相続人からの反対の意思表示に関係なく、財産分割を行なうことができる。

 第7条[財産目録の調製]離婚の訴えが提起された場合、必要な範囲内において、夫婦のもっている財産について財産目録を作成しなければならない。財産目録の作成に際して、必要ある場合、財産分割人を選任することができる。

 第8条[離婚当事者の財産管理]離婚の訴えが提起されたとき、離婚当事者の一方の利益を保護する必要があると認められる場合、裁判所は、その者からの請求に基づいて、他の一方の財産の全部、またはその一部を特別の管理に置くことができる。但し、他の一方が相当の担保を供して、反対の意思表示を行なった場合にはその限りでない。

 特別の財産管理に関する決定は、財産分割が完成されるまで、または離婚問題が第5章第3条の規定によって却下もしくは取り下げられるまで、その効力を有する。

 第9条[財産分割と債務配偶者の財産差押え]財産分割が行なわれる場合でも、債権者は、債務配偶者の財産を差押えることができる。債務配偶者の財産が特別の管理に置かれている場合であっても、他の一方の配偶者がその債務に対して責任を負っている場合、または差押え債権が当該財産に対して優先的に弁済を受ける権利を内容としている場合、債権者は、その財産を差押えることができる。

 第10条[財産分割と財産分割当事者の破産]財産分割が完成される前に、配偶者の一方が破産に陥った場合、または配偶者の破産を理由として財産分割が行なわれた場合、破産配偶者の婚姻財産は、財産分割によってその者に帰属すべき財産が確定されるまで、破産財団によって管理される。破産財団は、必要に応じて、その財産を処分することができる。

 本章第8条に定める特別の管理に関する決定は、破産によってその効力を失う。

 第11条[離婚訴訟中の離婚当事者の死亡と財産分割]離婚訴訟中、離婚当事者の一方が死亡した場合、離婚による財産分割に関する規定が準用される。

 第12条[離婚訴訟中の概念]本法において離婚訴訟中とは、離婚の訴えが提起されてから離婚判決が確定するまでの期間のことを、そして裁判所が離婚の訴えを却下、または抹消する場合には、その却下決定が確定するまでのことを、更にまた第5章第3条の規定によって離婚問題が消滅するまでのことをいう。

 第13条[離婚を前提とした財産分割の予約]離婚が目前に迫っている場合、夫婦は、将来の財産分割、または将来の財産分割に関連する契約を締結することができる。上記契約は、夫婦の署名ある書面によってこれを行なわなければならない。

 上記の場合以外に締結された契約は、夫婦財産契約の場合を除いて、すべて無効とする。

 目次に

第10章 財産分割の対象となるべき財産(Vad som skall ingå i bodelning)

 第1条[財産分割の対象となる財産]財産分割の対象となる財産は、夫婦の婚姻財産とする。

 第2条[財産分割の対象とならない婚姻財産]各配偶者は、財産分割に際して、相当な範囲内で、衣類もしくは専ら個人的な用に供されている品物を財産分割の対象から除外しておくことができる。個人的に贈与された品物についてもまた同じ。但し、配偶者の一方が死亡している場合、その権利は生存配偶者だけに帰属する。

 第3条[財産分割の対象とならない権利]譲渡することのできない権利、または一身専属的な権利(rättighet som inte kan överlåtas eller som i annat fall ar av personlig art)は、その権利の性質に反する場合、財産分割の対象とならない。

前項の規定にかかわらず、夫婦の一方がもっている保険に基づく年金権(ratt till pension pa grund av en forsakring som nagon av makarna)で、その保険金が所得とみなされ、且つ、

  1. 老齢年金(aderspension)、または身体障害者年金(invalidpension)にもとづく年金権、および 財産分割の際に、既に、受給権が生じている遺族年金保険(efterlevandepension)に基づく年金権は財産分割の対象にならない。

 個人年金預託法(lagen (1993:931) om individuellt pensionssparande)の規定に基づく年金預託契約(pensionssaparavtal)によって、夫婦の一方が取得した年金権(ratt till pension)は、財産分割の対象にならない。

 但し、第2項、第3項に規定されている年金権は、婚姻期間の長さ、夫婦の財産状態、またはその他の状況からみて、年金権を財産分割の対象から除外することが不当とみなされる場合、年金権の全部、またはその一部を財産分割の対象とすることができる。(1993年法律第933号により改正)。

 第4条[特有財産が財産分割の対象となる場合]夫婦財産契約を通じて、配偶者の一方の特有財産とされている財産は、財産分割に際して夫婦の間に合意が調った場合、財産分割の対象とすることができる。特有財産から生じた果実、または特有財産に代わるべき財産の場合もまた同様である。第3条第2項、第3項に定められている保険、または年金信託契約(pensionssparavtal)に基づく年金権の場合もまた同様である。

 夫婦間の合意によって財産分割の対象された特有財産は、財産分割に際して婚姻財産とみなされる。(1993年法律第933号により改正)。

 第5条[保険金の帰属]被保険者が死亡した場合、保険、または保険金の受取人は、保険契約法(lagen (1927:77) om forsakringsavtal)の定めるところによる。

個人年金信託契約による年金受取人の権利(förmåntagares rätt enligt  pensionssparavtal)は、個人年金信託法(lagen (1933:931) om indivijuellt pensionssparnade)によって定める。(1993年法律第933号により改正)。

 目次に 

第11章 財産分割分と具体的取り分(Andelar och lotter)

 財産分割分(Makarnas andelar i boet)

 第1条[財産分割に際しての財産分割分の計算]財産分割に際して、まず最初に夫婦の財産における夫婦の財産分割分(makarnas andel i boet)の計算を行わなければならない。

 第2条[債務控除]財産分割における夫婦の財産分割分の計算に際して、夫婦は、それぞれの婚姻財産の中から、離婚の訴えが提起されたとき、または第9章第1条第2項の規定によって財産分割の届出が行なわれたとき、もしくは配偶者が死亡したときに夫婦のそれぞれが負担していた債務を控除しておかなればならない。

 配偶者の一方が、自己の特有財産をもって債務の優先弁済の対象としている場合で、且つその特有財産をもって債務を完済することができない場合、その不足分を婚姻財産から控除することができる。債務配偶者が、自己の特有財産の保全、または改善のために負担したる債務、もしくはその他の方法によって特有財産のために負担したる債務についてもまた同じ。

 前項に定められている特有財産に関する規定は、第10章第3条の規定によって財産分割の対象とならない権利についても準用される。 

 第3条[残存婚姻財産の合算]債務控除が行なわれた後、夫婦の残存婚姻財産は合算され、合算された財産は夫婦間で平等に分割される。

 第4条[婚姻財産の無断利用と財産分割]配偶者の一方が、他の一方の同意を得ないで、自己の婚姻財産を贈与によって減少させた場合、または配偶者の一方が自己の特有財産を殖やすために婚姻財産を費消した場合、離婚を理由として財産分割が行なわれるとき、贈与によって失われた分、または婚姻財産の増殖のために費消した分は、離婚の訴えが提起された時から、3年前に遡って、常に、贈与配偶者、または費消配偶者の婚姻財産の中に含まれていたものとして計算される。そしてその分は、贈与配偶者、または費消配偶者に帰属すべき婚姻財産の中から控除される。

 前項の規定において、特有財産(enskild egendom)に関して規定されていることは、第10章3条に定める財産分割の対象とならない権利についても適用される。その場合、そのような権利の価値の増加は、権利の取得と同様に取り扱われる。更に、配偶者の一方が婚姻財産(giftorättsgods)を利用することによって、自己の年金保険(pensionsförsäkring)、または年金信託口座(pensions-sparkonto)の価値を増加させた場合、もしくは配偶者が保険(försäkring)、または年金信託契約(pensionssparavtal)によって利得(förmån)した場合、他の一方がそのことに同意している場合であっても、前項の規定が適用される。(1993年法律第933号により改正)。

 第5条[相続分の先渡し分と財産分割]配偶者の死亡によって財産分割が行なわれる場合、配偶者のいずれか一方の婚姻財産からなされた相続分の先渡し分が死亡した配偶者の遺産から控除される場合、その先渡し分は、財産分割に際して、死亡した配偶者の相続人に帰すべき財産分割分の上で清算される。但し、遺産の中から相続の先渡し分の全部を控除することができなかった場合、その不足分は、相続の先渡し分によって清算される。

 債務控除が行なわれた後、生存配偶者の婚姻財産との合算が行なわれる前に、財産分割に際して、控除された額と同じ額の財産が被相続人の婚姻財産に加算される。

第6条[具体的取り分]配偶者の一方が、自己の債務に充当するために取得した婚姻財産、および残存婚姻財産の分割に際して、配偶者の一方に帰属すべき婚姻財産の総額が、財産分割の際のそれぞれの取り分となる。但し、支払い期日の到来している扶養料で、且つ第6章第8条の規定によって一括して他の一方の配偶者に支払うべき扶養料は、財産分割に際して、扶養料を支払うべき配偶者が債務の充当に当てた財産以外の権利から控除される。扶養料の控除分は、扶養義務を負担している配偶者の財産分割分において減額され、他の一方の配偶者の財産分割分において増額される。

 財産分割分による財産の配分方法(Egendomens fördelning på lotter)

 第7条[具体的財産の配分方法]婚姻財産は、予め計算された財産分割分に応じて分割される。夫婦は、それぞれの財産分割分の範囲内において、先ず最初に、自己の財産、または自分の欲する財産を優先的に取得することができる。

 第8条[共用財産の配分方法]夫婦の共用住宅、または共用家財を最も必要とする者は、自己の財産分割分との相殺において、その額が僅少な場合には相殺なしに、その財産を引取ることができる。但し、その財産が第7章第2条第1項乃至第4項の規定によって、配偶者の一方の特有財産となっている場合にはその限りでない。配偶者の一方が引取ろうとする財産が、他の一方の財産である場合、周囲の状況からみて、その財産を引取るに足る相当な事由がなければならない。

 配偶者の一方が引取ろうとする財産が、優先弁済権の付着している債務の対象となっている場合、債務配偶者が、債務免除を受けるか、相当の担保を供しない限りその財産を引取ることができない。

 配偶者の一方が死亡した場合、第1項の規定は生存配偶者のためにのみ適用される。

 第9条[超過婚姻財産の取得]配偶者の一方が。自己の財産分割分を超えて婚姻財産を有する場合、その配偶者は、相手方に対して、自己の財産を提供する代わりに、財産分割分を越える部分ついて相当な金銭を支払うことによって超過財産を取得することができる。金銭によってその支払いを行なう場合、相当の担保を提供して、その弁済期日を延期することができる。支払いがなされない場合、他の一方は、可能な限りにおいて、その者にとって相当とみなされる財産を取得することができる。

 配偶者の死亡によって財産分割が行なわれる場合、第1項の規定は、生存配偶者のみに適用されるものとする。

 第10条[財産分割分と共用財産の引き取り勘定の相殺]配偶者の一方が、自己の財産分割分との相殺において、夫婦の共用住宅、共用家財を引取り、且つ自己の婚姻財産からその相殺分を補填することができない場合、共用財産を引取った配偶者は、金銭をもってその不足分を支払わなければならない。但し、相当の担保を提供することによつて、その支払い延期を求めることができる。

第11条[財産分割における不足取得分]財産分割に際して、配偶者の一方が、自己の財産分割分の全部を取得することができなかった場合、その不足分は、他の一方の債務として請求することができる。

目次に       

第12章 財産分割の修正(Jämkning vid bodelning)

第1条[財産分割の修正事由]財産分割に際して、婚姻期間の長さ、夫婦の財産状態、その他の事情からみて、第11章に定められている分割分によって、配偶者の一方から、他の一方に対して、財産の移転を行なうことが不適当とみなされる場合、財産の移転を行なう配偶者は自己の婚姻財産の中から相当分の財産を優先的に取得することができる。財産分割が行なわれるとき、配偶者の一方が破産宣告を受けている場合、またはその他、それぞれの婚姻財産を分割することのできない相当の理由がある場合、夫婦は、それぞれ自己の財産分割分としてそれぞれの婚姻財産を確保することができる。

 但し、前項の規定は、配偶者の死亡によって財産分割が行なわれる場合には適用されない。

 第2条[生存配偶者の婚姻財産の優先取得権]配偶者の一方の死亡によって財産分割が行なわれ、生存配偶者が、自己の婚姻財産を自己の財産分割分として取得することを要求した場合、財産分割の相手方は、死亡した配偶者の婚姻財産を自己の財産分割分として確保することができる。生存配偶者が、自己の婚姻財産の一部を取得することを要求した場合、財産分割の他の一方の当事者が、死亡した配偶者の婚姻財産の中から、その取得分に相当する財産を確保した後、残存財産は、第11章の規定によって分割される。

 相続法第15章第1条、第3条に定められている相続権喪失に関する規定は、財産分割に際して、生存配偶者の死亡した配偶者の婚姻財産に対する権利についても適用される。生存配偶者が婚姻財産を確保する場合についてもまた同じ。

 第3条[財産分割における夫婦財産契約の修正]夫婦財産契約に定められている契約の条件が、夫婦財産契約の内容、夫婦財産契約を締結した時の事情、夫婦財産契約後に発生した事由、その他の事情によって不当とみなされる場合、財産分割に際して、夫婦財産契約の条件を変更、または無効とすることができる。

 夫婦財産契約に関する前項の規定は、財産分割の予約についても準用される。

(1993年法律第933号により改正)

 目次に

第13章 財産分割の効果(Verkan av bodelning)

 第1条[財産分割に際しての債権者の保護]財産分割に際し、債権者の利益を害する目的をもって、特有財産を婚姻財産に変更、または本法に定められている以外の方法をもって、財産分割の対象となる財産に対する権利を放棄することができない。

 財産分割に際し、債権者の利益を害する目的をもって、差押え可能な財産を差し押えのできない財産に変更してはならない。但し、本項の規定は、放棄されべきる財産、または取得さるべき財産が、夫婦の共用住宅、または共用家財であるとき、もしくは第11章第8条の規定に基づいて取得することのできる財産の場合には適用されない。

 第1項、または第2項の規定に定められている行為によって、配偶者の一方が、財産分割の行なわれる以前に発生した債務を弁済することができなくなった場合、またはその他の事由によって債務を弁済することができなくなった場合、他の一方の配偶者は、その行為によって減少された差押え可能な財産の限度額において、その責任を負担しなければならない。但し、債務配偶者が、財産分割後、明らかにその債務を弁済するに足る差押え可能な財産を有していた場合にはその限りでない。

 破産法または会社更生法により、財産分割の取り消し訴訟が提起された場合、配偶者は、本条の規定によりその責任を主張することができない。(1996年法律第1053号により改正)

 第2条[死亡配偶者の債務]死亡した配偶者の債務については、第1条の規定に代って、相続法の規定が適用される。

 生存配偶者と死亡した配偶者の相続人、または包括的受遺者との間で財産分割が行なわれ、且つ生存配偶者が、第1条に定められている行為を行なった場合、相続人および包括的受遺者は、連帯して第1条に定められている責任を負う。

 第3条[財産贈与と不足財産分割分]第11章第4条第1項の規定により、贈与財産が資産の中に含まれているものとして配偶者の一方の財産分割分の計算が行なわれ、且つ財産分割に際して配偶者がその分割分を取得することができなかった場合、次の規定にしたがう。財産を譲り受けた者が、その贈与によって、他の一方の利益が侵害されることを知り、もしくは知り得べかりし場合、財産の贈与を受けた者は、贈与財産の中から、損害額に相当する金銭を被害配偶者に返還しなければならない。但し、その返還請求は、贈与が行なわれてから5年以内に訴えをもってこれを行なわなければならない。

 財産分割が行なわれた時点において未だその贈与契約が完成されていない場合、財産を譲り受けた者は受益配偶者の財産分割分を害する限りその履行を請求することができない。

 第4条[保険年金と財産分割における取り分の不足分]第11章第4条第2項によって、年金保険が資産の中に含まれているものとして配偶者の財産分割分の計算が行われた場合、財産分割に際して配偶者の一方が自己の財産分割分を取得することができなかったとき、保険会社は、保険契約者の保険金の中からその不足分を支払わなければならない。支払いは、直接、保険契約者の配偶者にこれを行なわなければならない。年金信託口座(pensionssparkonto)の場合もまた同様である。(1994年法律第933号により改正)。

 第5条[財産分割と不動産の分筆]財産分割証書に分筆の条件を示されず、ただ夫婦の持ち分だけが記載されている場合、その不動産は、夫婦の共有財産とみなされる。

 不動産の一部が第三者の所有に帰属することを内容とした財産分割は、その限りにおいて無効とする。

第6条[財産分割証書の提出義務]財産分割が完了したとき、夫婦、またはそのいずれか一方は、登録のため、裁判所に財産分割証書を提出しなけはれならない。

目次に

第4部 訴訟規定(Rättegångsbestämmelser)

第14章 婚姻訴訟と扶養訴(Äktenskapsmål och mål om underhåll)

 婚姻訴訟(Äktenskapsmål)

 第1条[婚姻訴訟]婚姻訴訟(äktenskapsmål)とは、離婚および婚姻関係存否確認訴訟のことをいう。

 第2条[婚姻関係存否確認の訴えの当事者]婚姻関係存否確認の訴えは、男女の間においてのみ提起することができる。婚姻関係存否の問題は、婚姻関係の存否に訴訟当事者の権利がかかわっている場合にも審理することができる。

 第3条[婚姻訴訟管轄裁判所]婚姻訴訟は、男、また女が住所を有する地区を管轄する地方裁判所において受理される。訴訟当事者がスウェーデン国内に住所を有しない場合、ストックホルム地方裁判所が管轄裁判所となる。

 第4条[離婚の訴えの方法]夫婦の双方が、共に、離婚を欲している場合、夫婦は、共同して離婚の申立てを行なうことができる。それ以外の場合、離婚は訴えの方法をもってこれを行なう。

 第5条[離婚訴訟の中で取り扱うことのできる事件]裁判所は、離婚裁判の中で、子の扶養、監護、子との面接交渉権および財産分割が行なわれるまでの間の夫婦の共同住宅に残留する権利の問題を取り扱うことができる。それらの問題に関する請求は、離婚の申立ての中でこれをおこなわなければならない。既に、訴えが提起されている場合、その請求は、口頭、または書面で裁判所に対してこれを行なわなければならない。

 裁判所は、離婚訴訟の中で、財産分割人の選任問題を審理することができる。

 第6条[要考慮期間離婚と裁判所の助言]離婚訴訟が提起されたとき、裁判所は、直ちに、離婚判決の言渡しを行なうべきか否かを決定しなければならない。考慮期間を必要とする場合、裁判所は、考慮期間の期限と、それ以後の訴訟の進め方について助言を与えなければならない。(1989年法律第1076号により改正)

 第7条[中間決定]裁判所は、離婚訴訟中、確定判決によって、問題が解決されるまでの間、夫婦いずれか一方からの請求によって、次の各号に規定する事項を決定することができる。

  1.夫婦の共同住宅に残留する者。但し、その期間は、財産分割が完了るまでの期間とする。

  2.夫婦の一方に対して扶養料の支払いを命ずること。

 離婚訴訟中、裁判所は、確定判決によって問題が解決されるまでの間、離婚当事者の一方からの請求によって、当事者相互の訪問を禁止することができる。

 第1項による決定は、確定判決と同様の方法をもって執行することができる。第2項による決定は、確定判決と同様の効力を有する。但し、第1項および第2項による決定は、裁判所において何時でも、これを変更、または取り消すことができる。

 第2項の規定に反した場合、「訪問禁止に関する法律」(lagen (1988:688) om besöksförbud)第24条の規定が適用される。

 離婚訴訟において裁判所は、更に確定判決によって問題が確定されるまでの間、親子法の規定によって、子に対する監護、面接および扶養の問題に関し、相当の措置を講ずることができる。(1988:690、1989:1076)

 第8条[共用住宅残留者の家財道具利用権]残留者決定によって夫婦の共同住宅に居住する権利を獲得した者は、別段の定めがない限り、その住居内にある他の一方に帰属する家財道具を自由に利用することができる。残留者決定が行なわれた後、非残留配偶者が第三者との契約によって残留配偶者の権利を制限しても、その契約は、残留配偶者に対して効力を及ぼさない。

 残留決定が行なわれた場合、非残留配偶者は、直ちに、夫婦の共同住宅から立ち退かなければならない。

 第9条[中間決定の効力]本章第7条の規定に基づいて行なわれた決定は、口頭弁論をまたずに、その言い渡しを行なうことができる。但し、裁判所は、その言い渡しを行なう前に、非残留配偶者に対して、意見を陳述する機会を与えなければならない。残留者決定に際して、残留を欲する配偶者が残留者決定に関する審理に出頭しなかった場合、残留請求が撤回されたものとして取り扱われる。またその相手方が残留決定審理に出頭しなかった場合、被請求者不在のまま残留決定に関する審理を行なうことができる。

 第10条[考慮期間経過後の主張]考慮期間経過後の離婚判決に対する特別の主張は、口頭、または書面によってこれを行なわなければならない。主張が、一方の配偶者のみによって行なわれる場合、他の一方の配偶者に対しても意見を述べる機会を与えなければならない。

 第11条[離婚の申立て取り下げ後の離婚の申立て]夫婦が、共同で離婚の申立てを行なった後、または配偶者の一方からの離婚の申立てが他の一方の配偶者に通知された後、離婚の申立てを行なった者がその申立てを取り下げた場合であっても、他の一方から離婚訴訟の審理が求められたとき、離婚事件を審理しなければならない。離婚訴訟の取り下げ通知が他の一方の配偶者に送達されるとき、その旨を付け加えなければならない。

 離婚の申立てを行なった配偶者が、離婚交渉から除外された場合、その事件は、交渉に際して、他の一方の配偶者がそのことを主張した場合、離婚事件は審理の対象となる。離婚の申立てを行なった者は、配偶者の喚問が行われるとき通知される。

 第12条[離婚訴訟の審理方法]夫婦の双方、またはそのいずれか一方から離婚の申立てが行われている場合、その事件は、口頭弁論(huvudförhandling)を経ないで行なわれる。また離婚当事者の間で合意が調っている離婚事件に関する他の問題についてもまた同じ。

 第13条[離婚判決の際の中間決定の再審理]離婚判決を行なう場合、裁判所は、第7条第1項1号、第2項の規定によって、既に離婚当事者に与えられている決定を改めて審理し直さなければならない。扶養判決を行なう場合、裁判所は、第7条第1項2号の規定に基づいて、前に行った決定を改めて審理しなければならない。

 第14条[離婚訴訟の消滅と訴訟費用]離婚問題が、第5章第3条の規定によって消滅したとき、その訴訟は、取り下げられたものとみなされる。その場合、当事者は、訴訟に要した費用を、各自、自分で負担しなければならない。

 扶養訴訟(mål om underhåll)

第15条[扶養事件]次の各号に掲げる場合、確定判決によって扶養問題が決定されるまで、扶養料については、第7条、第9条および第13条の規定が準用される。

  1. 離婚訴訟に関係なく配偶者の一方から他の一方に対して第6章第5条、または第6条第1項の規定によって扶養料の支払い請求が行なわれた場合
  2. 離婚判決の言渡しが行なわれた後、第6章第7条の規定によって扶養問題が審理の対象として取り上げられた場合
  3. 扶養判決、または扶養契約の変更に関する訴えが第6章第11条の規定によって提起された場合

第16条[別居配偶者利用権に関する中間決定]第6章第6条第2項に定められている事件において、裁判所は、配偶者の一方からの請求があった場合、確定判決によってその問題が決定されるまでの間、利用権に関する決定を行なうことができる。その決定の言渡しは、第9条に定める方法をもって行なわれる。その決定の執行は、確定判決と同様の方法をもって行なわれる。但し、裁判所は、何時でも、その決定を変更、または取り消すことができる。

 裁判所の構成等(Domstols sammansättning m.m.)

 第17条[離婚事件および扶養事件に関する裁判所構成]婚姻事件および扶養事件に関する審理に際して、地方裁判所(tingsrätt)は、訴訟法第1章第3a条第2項、第3項の規定に反しない限り、1名の専門裁判官と3名の参審員(nämndeman)によって構成される。この規定は、同一訴訟において取り扱われる別の事件についても準用される。

 本審開始後、参審員の出席が不能となった場合、裁判所は、一名の専門裁判官と2名の参審員をもって裁判を行なうことができる。

 事件の規模、その他の事情からみて、その必要性があると認められた場合、裁判所は、専門の裁判官を一名増加することができる。参審員の場合についてもまた同じ。

 参審員が地方裁判所の事件に参加する場合、裁判長は参審員に対して事件の概要および適用法令を説明しなければならない。評決に際しては、先ず最初に、裁判長が、次いで参審員がそれぞれ自己の意見を述べなければならない。その他の事項については訴訟法の審判会議ならびに投票(omrostning)に関する規定が準用される。(1989年法律第657号により改正)

 第18条[婚姻事件および扶養事件における高等裁判所の構成]婚姻事件、扶養事件の場合、高等裁判所は、3名の裁判官と2名の参審員によって構成される。4名以上の裁判官と3名以上の参審員を参加させることはできない。口頭弁論に際して取り扱われなった事件の審理に際して、地方裁判所において事件が決定されたとき、参審員の参加なしに事件の決定が行なわれた場合と同様、高等裁判所は、訴訟法第2章第4条の定められているところにより、裁判官のみでも審理を行なうことができる。それ以外の場合においては、高等裁判所は訴訟法第2章第4条第3項および第4項に述べられているところにより審理を行なうことができる。

事件の審理に参審員が参加している場合、審理に際して、裁判長は、事件が別の裁判官によって準備された場合には、その裁判官をして、当該事件の概要および適用関連法令の説明を行なわしめなければならない。その他、事件の評決に関しては訴訟法の規定が準用される。(1989年法律第657号により改正

目次に

第15章 婚姻の成立に関する事(Ärenden om äktenskaps ingående)

 第1条[未成年者に対する県の婚姻許可要件]第2章第1条の規定によって婚姻の許可を与える場合、県は可能な限り未成年者の親権者に対して意見を述べる機会を与えなければならない。またその他に未成年者が住所を有する地区のコミューンの社会福祉委員会の意見を聞かなければならない。

 未成年者の親権者は県の行った婚姻許可に対して異議の申立てを行なうことができる。

 第2条[婚姻障害審査に対する異議の申立て]婚姻障害審査に関する県税事務所の行った決定は、普通行政法裁判所(allmän förvaltningsdomstol)に対して異議の申立てを行うことができる。

 スウェーデン教会内で行なわれた挙式についての牧師の決定に対する異議の申立てを行なう場合、また同じ。(1995年法律第1681号により改正)。

 高等行政裁判所に対する異議の申し立てに際しては審理許可が必要である。

 第3条[挙式執行者の決定に対する異議の申立て]地方裁判所における裁判官または特別に選任された挙式執行者によってなされた決定に対する異議の申立ては県に対してこれを行なう。

 第4条[県の婚姻許可決定に対する異議の申立て]婚姻許可に関する県の決定または婚式の執行については、普通行政裁判所に対して異議の申立てを行うことができる。高等行政裁判所に対する異議の申し立てについては審理許可を必要とする。

婚姻許可または挙式の手続きに関する県の決定に対して異議ある場合、高等行政裁判所に対して異議の申立てを行なうことができる。(1995年法律第1681号により改正1996年5月1日より施行)

 目次に  

第16章 登 録(Registreringsärende)

 第1条[婚姻登録簿の設置]本法の規定によって登録さるべき事項、またはその他の規定によって、記録に留められるべき事項を記録するため、全国的な婚姻登録簿を設置する。

 婚姻登録簿に関する細則は、別に政令をもってこれを定める。

 第2条[登録受理裁判所]登録は、地方裁判所に対してこれを行なう。

 登録には登録書面を添付しなければならない。書面によらない夫婦間の贈与を登録する場合、夫婦双方の署名のある書面による贈与資料を提供しなけばなない。

 財産分割に関する届出については、第9章第1条第2項の規定に従う。

 第3条[登録受理裁判所の事務処理手続き]登録を受理した裁判所は、その登録書類を登録簿にファイルすると共に、直ちに、その謄本を受理年月日を付して婚姻登録局に送付しなければならない。

 贈与登録の申請を受理した裁判所は、官報ならびに地方新聞を通じて、そのことを公告しなければならない。第9章第1条第2項の規定によって、夫婦の双方、またはそのいずれか一方から登録のため財産分割証書の提出が行なわれたとき、また同じ。

第4条[登録の効力の発生時期]登録が行われた場合、登録は、登録書類が裁判所に提出された日をもってその効力を生ずる。

 目次に

第17章 財産分割人(Bodelningsförrättare)

 第1条[財産分割人の選任]財産分割に際して、夫婦間の協議が調わない場合、裁判所は、配偶者の一方からの申立てがあるとき、財産分割人(Bodelningsförrättare)を選任しなければならない。また必要に応じて複数の財産分割人を選任することができる。

 配偶者の一方が死亡した場合、死亡した配偶者の財産が遺産管財人(boutreningsman)によって管理されている場合、別段の定めがない限り、遺産管財人が財産分割人となる。但し、別に、財産分割人が選任されている場合、または遺産管財人が共同相続人となっている場合にはその限りでない。

 第2条[財産分割人選任申し立ての時期と選任裁判所]離婚事件が裁判所に係属している場合、財産分割人選任の申立ては、その事件の中でこれを行なう。その他の場合においては、夫婦の財産分割問題を審理する権限をもっている地方裁判所に対してこれを行なう。

 第3条[財産分割人選任事件の審理]離婚事件の中で財産分割人の選任に関する問題が審理される場合、第14章第9条に定められている財産分割人選任に関する規定が準用される。それ以外の場合においては財産分割人の選任決定に先立って裁判所は他の一方に対して意見を述べる機会を与えなければならない。

 第4条[財産分割人の選任および解任の要件]財産分割人を選任する場合、財産分割人に選任される者の同意を得なければならない。財産分割人解任の事由が生じた場合、財産分割人を解任しなければならない。財産分割人を解任する場合、解任に先立って財産分割人に対して、自己の意見を述べる機会を与えなければならない。

 離婚の訴えが取り下げられた場合、または離婚当事者の一方の死亡以外の理由によって離婚事件が抹消された場合、離婚事件の中で行なわれ決定は、その効力を失う。

 第5条[財産分割人の権限・財産目録提出命令権]財産分割人は、必要に応じ、財産目録の提出を求めることができる。その場合、配偶者は、それぞれ自己の資産と負債を報告しなければならない。配偶者の一方が、財産目録の提出を怠った場合、財産分割人からの申立てに基づいて、裁判所は、その者に対して財産目録の提出を命ずることができる。裁判所の命令に反したる場合、過怠金を課すことができる。

 配偶者の一方が、その事を求めた場合、他の一方は、裁判所において、その財産目録が真実であることを宣誓をもって確認しなければならない。その場合、裁判所は、宣誓手続きが完了するまでその事件を決定することができない。宣誓を拒否した場合、裁判所は、職権をもって宣誓を義務付けることができる。違反したる場合、過怠金を課すことができる。

 第6条[財産分割人の財産分割場所、日時指定権]財産分割人は、財産分割の行なわれるべき場所、およびその日時を指定し、指定した日時にその場所に夫婦を召喚しなければならない。

 夫婦間の協議が調わないとき、財産分割人は、財産分割にとって重要な意味をもっている係争問題で、しかも訴訟の対象となっていない問題について判断を与えなければならない。その場合、財産分割人は、本法の規定に従って、自らの判断に基づいて財産分割を行なわなければならない。財産分割の対象となるべきものがない場合、その旨を財産分割証書の中に記載しておかなければならない。

 第7条[財産分割人の費用および報酬請求権]財産分割人は、その職務に関して要した経費ならびに報酬を請求することができる。

 財産分割人に支払うべき費用は、夫婦で平等に負担しなければならない。但し、配偶者の一方の故意過失によって費用の増加が生じた場合、または配偶者の一方の財産状態からみてそのことが相当とみなされる場合、財産分割人は、別の方法をもってその費用の負担額を定めることができる。

 財産分割人に対する関係において、夫婦は、連帯してその責めに任じなければならない。

 第8条[財産分割人の義務]財産分割人によって財産分割証書の作成が行なわれた場合、財産分割人は、遅滞なく、その原本、またはその写しを配偶者双方に送付しなければならない。

 財産分割人のなしたる財産分割に対して異議ある場合、財産分割証書を受領した日から4週間以内に、他の一方の配偶者を相手方として、裁判所に対して財産分割異議の申立てを行なわなければならない。4週間以内に異議の申立てが行われなかった場合、配偶者は、財産分割に対して異議の申立てを行なうことができない。財産分割人は、財産分割証書の中に、その旨を記載しておかなければならない。

 財産分割に対して異議の申立てが行なわれた場合、財産分割人の意見を求め、裁判所は、必要と認めた場合、財産分割のやり直しを命ずることができる。

第9条[訴訟法の準用規定]訴訟法第58章および第59章の規定は、財産分割人によってなされた財産分割に対しても適用される。その際、異議の申し立てに関する訴訟法第58章第10a条、第13条および第59章第5条の規定は、財産分割に対する異議の申し立て(klander av bodelning)に適用される。(1994年法律第1035号により追加)。

目次に

第18章 共通規定(Gemensamma bestammelser)

 第1条[特別代理人の選任]本法の規定によって被告となる者の住所、または居所が知れざる場合、親子法第11章の規定に従って、その者のために特別代理人(god man)を選任しなければならない。被告となる者の住所が国外にあって、その通知を行なうことができない場合、またはその者が代理人を選任することを怠っている場合で、且つ特別代理人の選任を要する場合また同じ。

 特別代理人は、可能な限り、本人と協議しなければならない。特別代理人に対する費用および報酬は、親子法第20章第2b条の規定に従う。(1988年法律第1254号により改正)。

 第2条[共用住宅残留者の決定]共用住宅残留者決定が行なわれことなしに離婚事件の審理が終了した場合、裁判所は、夫婦のいずれか一方からその申立てが行われたとき、その決定を行なわなければならない。その場合、裁判所は、既に決定されている事項を変更することができる。残留者決定に対する申立ては、夫婦の財産分割問題を審理する権限を有する地方裁判所において審理される。

 第7章第8条に定められている許可を求める場合、または第9章第8条により裁判所の決定を求める場合、その申立ては、前項に定める裁判所に対してこれを行なう。但し、離婚事件が裁判所に係属している場合、事件が係属している裁判所に対してこれを行なう。

 裁判所はその決定に先立って、相手方に対して意見を述べる機会を与えなければならない。

 第3条[中間判決に対する異議の申立ての方法]裁判所が審理の途中で、第14章第7条、第15条または第16条、第17章に定められている問題について決定を行なった場合、その決定に対する訴えは、別の方法をもって行なわれる。

 第4条[高等裁判所の決定に対する異議の申立ての方法]高等裁判所の決定、または第6章の規定による扶養事件に関する最終決定については、異議の申立てを行なうことができない。但し、高等裁判所は、訴訟法第54章第10条第1項第1号の規定により許可が与えられるならなば審理のために相当の理由がある場合、判決、または決定に対して異議の申立てを行なうことができる。

 判決の他の一部について異議の申立てが行なわれる場合、第1項前段の規定は適用されない。

 第14章第7条、第15条または第16条に定められている高等裁判所の決定に対しては絶対に異議の申立てを行なうことができない。(1989年法律第353号により改正)。

 第5条[婚姻の成立および離婚事件記録の登録]婚姻の成立および離婚に関する記録は、特別の規定により、国民登録台帳(folkbokföringen)の中に登録される。(1991年法律第495号により改正)。

本法に関する施行細則は別に特別法をもってこれを定める。

目次に

                           

以 上 (菱木昭八朗訳)

(註1)Tomtratt(トッムトレット)。土地法第13章の規定によって認められている公有地に対する特殊な借地権。

(註2) Bostadsratt(ブースターヅレット)。会員制借家権。ブースターヅ法(Bostadslagen 1991:614によって認められている特殊な借家権。英語ではrights in tenant-owners' flatsと訳されている。

(註3)individuellt pensionssparande。個人年金預金産。個人年金預金法[Lag (1993:931) om individuellt pensionssparnade]によって所得税法上、特別の優遇措置が認められてる特別預金。

(註4)Bodelning(ブーデールニング) 婚姻の解消(離婚、または配偶者の死亡)に伴って行われる夫婦の財産関係の清算、特に婚姻財産(giftorattsgods)の分割およびその手続のことをいう。

_


法令集目録に戻る