スウェーデン・新法律扶助法

                     [ Rättshjälpslag (1996:1619)1999年法律第63号によって一部改正]

 総 則(Inledande bestämmelser)

  第1条 本法において訴訟援助(rättshjälp)および法律相談(rådgivning)に関する規定を定める。

  第2条 訴訟援助(rättshjälp)は第6条乃至第8条に規定されている要件を具備した法的事件(en rättslig angelägenhet)に対して支給される。

  訴訟援助を受給しようとする者は、明らかに法律相談を要しない場合、またはその他特別の事由がある場合を除いて、訴訟援助の受給対象となる事件について、事前に、第4条に規定されている最低限一時間の法律相談を受けなければならない。

  訴訟援助と訴訟保険の関係(rättshjälpens förhållande till rättssyddsfärsäkring)は第9条に定める。訴訟援助の支給が認められないケースおよび訴訟援助を受給するための特別の事由を必要とするケースについては、第10条乃至第13条に定める。犯罪事件がスウェーデン国外において審理される場合の性的犯罪被害者に対する訴訟援助(rättshjälp till offer för sexualbrott)については、第21条乃至第22条の特別規定によるものとする。

  第3条 訴訟援助は受給申請者(den rättssökande)から書面による申請に基づいて支給される。申請書には政府または政府によって指定された官庁によって定められた事項を記入しなれなければならない。

  法律相談(Rådgivning)

  第4条 本法に規定する法律相談(Rådgivning)は、法律問題に関し弁護士(adovokat)または法律事務所に所属する補助弁護士(biträdande jurist på advokatbyrå)によって最高2時間まで提供される。法律相談はまた、本法第26条の規定によって訴訟補助者として選任された弁護士以外の者によっても提供することができる。

  法律相談を受けようとする者は、法律相談を提供する者に対して相談料を支払わなければならない。法律相談を提供する者は法律相談を受ける者の経済状態を考慮し、相談料を2分の1に減額することができる。

   法律相談を受ける者が未成年者の場合、その者の経済状態からみて、その必要がある場合、相談料の納付を免除することができる。

法律相談料(rådgivningsavgift)および相談料の減額(nedsättning av rådgivningsavgift)に関する細則は政府または政府によって指定された官庁によって定める。(1999:63)

  第5条 法律相談を提供した者は、相当と認められる範囲において、国に対して、法律相談のために要した通訳、翻訳費用を請求することができる。本法第4条第2項および第3項の規定によって法律相談料の減額が行われた場合、法律相談を提供した者は、国に対して減額分の補償を請求することができる。(2000年法律第273号により改正)

  前項に規定する法律相談料の補償については、政府または政府によって指定されている官庁においてその細則を定める。

  訴訟援助の支給要件(Allmänna förutsättningar för rättshjälp)

   第6条 訴訟援助は第38条に規定されている基礎資力(ekonomiska underlag)が、260、000クローネを超えない自然人(en fysisk person)に対して支給される。

  但し、相当と認められる場合、相続法人(ett dödsbo)(註)に対しても訴訟援助を支給することができる。訴訟援助受給権の相続法人に対する移転は第14条に定める。

  第7条 訴訟援助は受給申請者が法律相談以外の法的補助者(juridiskt biträde)を必要とし、且つ別の方法をもってその必要性を満たすことができない場合に支給される。

  但し、国選弁護人(offentlig försvarare)または行政事件訴訟補助者(offentligt biträde)による援助(hjälp)が可能なケースについては訴訟援助は支給されない。

  第8条 訴訟援助は、事件の性質、重要性および訴額、その他諸般の事情からみて、国の費用をもってその訴訟を援助することが相当と見なされる場合においてのみ支給される。

  訴訟援助と訴訟保険の関係(Rättshjälps förhållandet till rättsskyddsförsäkringar)

  第9条 訴訟援助の受給申請者が訴訟保険(rättsskyddsförsäkringar)に加入している場合、または受給申請事件についてその他の保険給付を受けることができる場合、訴訟援助を受けることができない。

  訴訟援助受給申請者が前項に規定する訴訟保険に加入していなかった場合で、且つ受給申請者の経済的、個人的状況からみて訴訟保険に加入していることが相当と認められる場合においては、事件の性質、受給申請者に対する事件の重要性からみて特別の事由(särskilda skäl)があると認められた場合においてのみ訴訟援助を認めることができる。

  訴訟援助の支給制限(Begränsning i rätten till rättshjälp)

   第10条 次に掲げる各号に該当するケースについては訴訟援助を受けることができない。

  1. 1. 税申告(självdeklaration)、夫婦財産契約(äktenskapsförord)、遺言(testamente)、贈与書面(gåvohandling)の作成
  2. 2. 相続法第20章に規定されている財産目録(boupteckning)の作成
  3. 3. 債務免除法(skuldsaneringslagen 1994:334)に規定されている債務免除(skuldsanering)に関する事件
  4. 4. 土地法(Jordbalken)に規定されている登記(inkrivningsärdnden)に関する事件
  5. 5. 固定資産申告(fastighetsdeklaration)に関する事件
  6. 6. 固定資産税に関する事件(mål eller ärenden angående fastighets taxering)
  7. 7. 海法(sjölagen 1994:1009)または営業用ボートの登録に関する事件(註)
  8. 8. 財産分与(bodelning)(註)に対する異議申し立て以外の財産分与に関する事件
  9. 9. 類似の訴訟援助申請事件について、既存の訴訟援助事件に対する決定が待たれる場合
  10. 10. 道路交通損害法(trafikskadelagen 1975:1401)または損害保険によって損害の補填が行われる損害賠償請求事件。但し、損害賠償請求が裁判所に継続している場合または身体的損害(person skada)以外の損害については訴訟援助を認めることができる。

 訴訟援助の受給を有利にするため、受給申請者の変更を行った場合、変更受給申請者に対する訴訟援助の支給は認められない。

 第11条 次の各号に該当する場合、特別の事由(särskilda skäl)のある場合に限って訴訟援助を受けることができる。

1離婚および離婚に関連する事件

2子に対する扶養事件

3税金、関税及びその手数料の決定およびその支払いに関する事件

4訴訟法第1章第3a条の規定により専門的裁判官によって審理される事件

5スウェーデン国外において審理される事件。但し、第21条に規定されている場合を除く

 第12条 スウェーデン国籍を有しない者で、且つスウェーデン国内に居住していない者、または居住したことがなかった者については、事件がスウェーデン裁判所において審理され、且つ相当な事由がある場合においてのみ訴訟援助を受けることができる。スウェーデン国外において取り扱われる事件については、訴訟援助の受給申請者が、スウェーデン国内に居住している場合においてのみ訴訟援助を受けることができる。

外国人の場合もしくは居住国の国籍を有しない外国人で、その者が居住している国がスウェーデンと訴訟援助協定を締結している場合、外国人は訴訟援助に関しスウェーデン国民と同様に取り扱われる。

  事業者に対する訴訟援助(rättshjalp till näringsidkare)

  第13条 事業者またはかって事業を営んでいた者は、事業に関連する事件について訴訟援助を受けることができない。但し、事業の種類または受給申請者の経済的、個人的状況、その他の事情からみて相当と認められる場合にはその限りでない。

 本法において事業者(näringsidkare)とは、営利を目的として事業を営んでいる自然人またはそのような事業を営んでいる法人に対して決定的な影響力をもっている自然人のことをいう。

 相続法人に対する訴訟援助の移転(Övergång av rättshjälp till dödsbo)

  第14条 訴訟援助を受けている者が死亡した後、相続法人がそのことを欲する場合、事件の性質、内容、相続法人の財産及び相続人の経済状態その他の状況から見て、国がその費用を負担することが相当と認められる場合、死者に対して行われていた訴訟援助の受給権は相続法人に移転する。

  訴訟援助に含まれる利益 (Förmåner som ingår vid rättshjälp)

  第15条 訴訟援助が認められた場合、訴訟補助者(rättshjäpsbiträde)に支払われる労働報酬は(ersättning för arbete)は、本法第34条に規定されている場合を除いて、最高100時間まで国によって負担される。

 第16条 訴訟援助が認められた場合、国が普通裁判所(allmän domstol)、労働裁判所、商事裁判所(Marknadsdomstolen)における証人費用(kostnaderna för bevisning)を負担する。法律またはその他の規定によって別の定めがない場合、相当額をもって証人費用が提供される。

 第17条 訴訟援助が認められた場合、申請者の権利を保護するため、国は最高10、000クローネを限度として調査費用(kostnaderna för utredning)を負担する。行政裁判所(förvaltningsdomstol)または国の行政官庁(förvaltningsmyndighet)によって審理される事件については、その事件を審理すべき裁判所、行政官庁を通じてそのことが可能な場合、調査費用は支給されない。

 調査協力者(den som har medverkat vid en utredning)は、政府または政府によって指定された行政官庁によって定められている規則に基づいて報酬を請求することができる。

 第18条 訴訟援助が認められた場合、訴訟法第42章第17条に規定されている調停人(medlare)の費用は国によって支払われる。

 調停人はその職務に対して相当な報酬(skalig ersättning för arbetet)、時間外手当(tidsspillan)および職務の遂行に要した費用を請求することができる。

 調停人は被調停人に対して報酬を請求しまたは被調停人報酬を受け取ってはならない。 調停人が報酬の予約をしていてもその予約は無効とし、また調停人が報酬を受け取っている場合にはその報酬を返還しなければならない。

 第19条 訴訟援助を認められた者は、普通裁判所の手数料に関する規則(Förordning (1987:452) om avgifter vid allmänna domstolarna)に規定されている申請手数料(ansokningsavgift)、事務手数料(expeditionsavgift)、支払い命令に関する法律(Lag (1990:746) om betalningsföreläggande)に規定されている申請手数料(ansokningsavgift)および手数料規則(avgiftsforordning(1992:191))第15条1号乃至3号に規定されている予納金(handrackning)または手数料(avgift)の支払いを免除される。

 強制執行に関わる事件について訴訟援助を認められた者は、強制執行に関する手数料規則(Förordningen (1992:1094) om avgifter vid kronofogdemyndigheterna )に規定されている強制執行に関する手数料の支払いを免除される。

 訴訟援助の給付が認められた者は、裁判所によって行われる公示に関する費用の支払いを免除される。

 第20条 訴訟援助を認められた者は、訴訟法(rättegångsbalken)または破産法(konkurslagen (1987:672)に規定されている保全またはそれに類する措置を講ずるために必要な担保を提供する義務を免除される。申請者が相手方に対して損害を与えた場合、国がその賠償を負担する。

 強制執行事件について訴訟援助が認められている場合、強制執行法(utsäkningsbalken)第3章第8条または第9条に規定されている強制執行についても前項の規定が適用される。

  性犯罪被害者に対する訴訟援助に関する特別規定(Särskilda bestämmelser om rättshjälp till offer för sexualbrott)

 第21条 刑法典第6章に規定されている事件がスウェーデン以外の国の裁判所において審理される場合で、且つ訴訟援助受給者が第22条に規定されている給付の提供を受けることを必要とする場合、訴訟援助(rättshjälp)の給付を認めることができる。

 前項に規定されている事件については、第2条第2項および第9条の規定は適用されない。

 第22条 第21条の規定によって訴訟援助が認められた場合、国は受給申請者(rättssökande)の権利を確保するために必要な訴訟補助者(bitäde)、立証(bevisning)または鑑定(utredning)に要する費用、外国裁判所または行政機関に出頭するために必要な受給者または受給者の法定代理人(ställföreträdare)、介護者(vårdare)その他、必要な介添人の旅費、宿泊費を負担する。但し、その費用が保険または外国裁判所もしくは行政機関によって負担される場合にはその限りでない。

 前項に規定されている費用負担に関する細則は政府または政府によって指定した行政官庁によって定める。

  訴訟援助受給手数料(Rättshjälpsavgift)

  第23条 訴訟援助給付が認められた場合、訴訟援助給付の受給者は、訴訟補助者の費用と第38条に規定されている受給者の基礎資力(den rättssökandes ekonomiska underlag)に基づいて計算された訴訟援助受給手数料(Rättshjälpsavgift)を支払わなければならない。

訴訟援助受給手数料は、訴訟補助者費用(kostnaderna för rättshjälpsbiträde)の範囲を超えない限度において、

  1. 基礎資力が50、000クローネ未満の場合、訴訟補助者費用の2パーセント
  2. 基礎資力が50、000クローネ以上、100、000クローネ未満の場合、訴訟補助者費用の5パーント、最低500クローネ
  3. 基礎資力が100、000クローネ以上、120、000クローネ未満の場合、訴訟補助者費用の10パーセント、最低1、000クローネ
  4. 基礎資力が120、000クローネ以上、150、000クローネ未満の場合、訴訟補助者費用の20パーセント、最低1、500クローネ
  5. 基礎資力が150、000クローネ以上、200、000クローネ未満の場合、訴訟補助者費用の30パーセント、最低2、000クローネ
  6. 基礎資力が200、000クローネを超える場合には、訴訟補助者費用の40パーセント、最低5、000クローネ(2000年法律第273号により改正)

とする。

 法律相談が1時間を越える場合、1時間を超える法律相談料(avgift av rådgivning utöver en timme)は、本条第2項2号乃至6号に規定されている最低手数料から控除される。<P>訴訟援助を受ける者が未成年者の場合、受給者の経済状態からみて、その必要がある場合、受給手数料の納付を免除することができる。

 相続法人(dödsbo)に対して訴訟援助が認められている場合、相続法人の訴訟援助受給手数料は、相続財産および共同相続人の経済的状況からみて(med hänsyn till dödsboets och dödsbodelägarnas ekonomiska förhållanden)相当とみなされる限度において決定される。但し、訴訟援助が相続法人に移転した場合、訴訟援助受給手数料は死者の基礎資力(den avlidnes ekonomiska underlag)によって決定される。

  第24条 訴訟援助受給手数料は訴訟援助が認められるときに決定される。

  訴訟援助の終結前に受給申請者の資力に著しい変動が生じたとき、既に決定されている訴訟援助受給手数料は相当と思われる範囲において減額を行うことができる。第23条第4項に規定されている場合、手数料の納付を免除し、または別のパーセンテージをもって手数料の納付額を変更することができる。既に決定されている手数料の計算に誤りがある場合、または手数料計算が誤った資料に基づいて行われている場合においても訴訟援助受給手数料の変更が行われる。

 低いパーセンテージへの変更または手数料の納付免除については、未だ納付されていない手数料に対してのみ適用されるものとする。

   第25条 訴訟援助受給手数料は、訴訟補助者費用の発生に応じて訴訟補助者に対して、継続して支給される。

訴訟援助受給手数料の支払いに関する細則は政府または政府によって指定された行政官庁によって定める。

   訴訟補助者の選任と変更(Förordnande och byte av rättshjälpsbiträde)

  第26条 訴訟補助者(rättshjäplsbiträde)には弁護士(advokat)、法律事務所に雇われている補助弁護士(biträdande jurist)、またはその任務に適合する者が選任される。訴訟援助受給申請者本人が訴訟補助者を選任した場合、そのことによって著しく訴訟費用が増加する場合またはその選任に対して反対する相当の事由がある場合を除いて、訴訟援助受給申請者の選任した者が訴訟補助者に選任される。訴訟補助者は解任の事由がある場合を除いて解任されない。

 訴訟補助者は特別の許可を得、且つ相当の事由がなければ変更することができない。一旦訴訟補助者の変更が行われたとき、特別の事由がない限り、訴訟補助者の再変更は認められない。

 訴訟補助者は著しい費用の増加をもたらさない限り、弁護士または法律事務所に雇われている補助弁護士を復代理人(substitution)に選任することができる。それ以外の場合には、特別の許可を得た後でなければ復代理人を選任することができない。

  訴訟補助者に対する補償(Ersättning till rättshjälpsbiträde)

第27条 訴訟補助者は業務(arbete)、時間外手当(tidsspillan)および業務に要した費用(utlägg som uppdraget har krävt)について相当な補償を請求することができる。業務補償(ersättning för arbete)は、業務の性質(uppdaragets art)、規模(omfattning)からみて相当とみなされる所要時間(tidsåtgång)および政府によって定められている時間手当基準表(timkostnadsnormen)の適用をもって決定される。タイムチャージ料(timeersättningen)は事件の難易度、訴訟補助者の経験その他の事情を考慮し、時間手当基準表(timkostnadsnormen)と異なる料金を定めることができる。訴訟補助者に対する補償には、技術的補助者に対する費用(kostnader för anlitande av tekniskt biträde)に対する報酬は含まれない。

 訴訟援助の受給申請がなされる前の業務に対する報酬は、軽微な業務または緊急を要する業務に対してのみ認められる。第26条第2項に規定されている訴訟補助者の変更の場合、変更決定が行われる前に行われた業務にに対する新しい訴訟補助者の補償請求に対しても同様である。

 訴訟補助者の過失または過怠(vårdlöshet eller försummelse)によって訴訟援助費用が増加した場合、補償費の計算に際して、訴訟補助者の過失または過怠を考慮しなければならない。訴訟補助者が第17条に規定されている調査決定権を乱用した場合、または第26条に規定されている復代理人の選任権を乱用した場合、もしくはその他特別の事由がある場合、補償費を減額することができる。

 政府または政府の指定する行政官庁は、補償を定める場合に適用されるタックス(taxor som skall tillämpas vid bestämmande av ersättning i vissa fall)を決定し、業務外時間手当の計算に関する細則(föreskrifter om beräkning av ersättningen för tidsspillan)を定める。

  第28条 訴訟補助者に対する補償は、事件が判決、決定を通じて確定されたとき、または別の方法で訴訟援助に関する事件が終結したとき確定される。

 訴訟補助者が所定の期間内に補償請求を行わなかった場合で、且つ裁判所によって決定された補償を請求する権利を喪失したとき、法律扶助局(Rättshjälpsmyndigheten)は、訴訟補助者がその事件が裁判所に係属しているということを知らなかった場合または怠慢が許される過失による場合、補償を確定することができる。法律扶助受給手数料を超える補償については国家によって支払われる。

  第29条 訴訟補助者は第27条に規定されている場合を除いて、依頼者本人に対して予め報酬を請求し、また受領してはならない。そのことが行われた場合、予約は無効となり、また受領している報酬は依頼者本人に返還しなければならない。

  相手方の補償負担義務(Motparts ersättningsskyldighet)

   第30条 訴訟またはその他訴訟に類似する法律事件における相手方の訴訟費用に対する責任に関する法律における規定は、法律相談料および相手方の訴訟補助者に対する費用についても適用される。但し、利息を付けることはできない。

 訴訟費用の補償義務を負担する者(den som är ersättningsskyldig för rättshjälpskostnader)は、訴訟援助申請者に対して法律相談および訴訟援助費用に相当する金銭を支払わなければならない。残額は国に対して返還しなければならない。補償義務者が訴訟援助費の一部のみを支払うことを義務づけられている場合、その補償分はそれぞれの分け前に従って訴訟援助の受給申請者と国に対して支払わなければならない。

  共同訴訟当事者の補償義務(Medparts ersättningsskyldighet)

  第31条 裁判所において取り扱われる事件において、複数の訴訟当事者のための共通の訴訟補助者に対する費用が一つの訴訟援助費として支払われる場合、訴訟援助を受けていない当事者は当該当事者に帰属すべき費用の部分を負担しなければならない。配分は特別の事情がない限り頭割りで負担する。

 前項の規定の適用に際し、訴訟の相手方または別の者が本法第30条の規定に基づいて支払うことを義務づけられている費用に部分は控除される。

 訴訟援助受給手数料の全部および共同訴訟当事者が本条第1項の規定によって支払うことを義務づけられている費用が訴訟補助者に対する補償を上回っている場合、共同訴訟当事者は訴訟援助を受けている者に対して超過額を、そしてその残額を国に対して支払わなければならない。

   訴訟援助の停止(Upphörande av rättshjälp)

  1. 次の各号に掲げる場合、訴訟援助の支給を停止する。                    1.第25条に規定する訴訟援助受給手数料を支払わない場合

    .訴訟援助の受給申請者が虚偽の資料を提出した場合で、且つ真実の資料を提出していたら訴

訟援助を受けることができなかった場合

    3. 訴訟援助受給申請者が故意または重大な過失によって過度に低い訴訟援助受給手数料を納

付することを目的とした虚偽の資料を提出した場合

    . 訴訟援助受給申請者の経済的事情が申請者が訴訟援助を受給する資格がなくなるような変更

があった場合

    . 別の訴訟補助者が選任されることなしに訴訟補助者が解任された場合

    . 事件の種類、重要性、訴訟の額およびその他の事情からみて国が訴訟援助受給申請者の裁判

費用の面倒をみる必要がなくなった場合

  第33条 第10条、第9条に規定されているような事実があるにもかかわらず、訴訟援助がみとめられているとき、訴訟援助を停止することができる。但し、訴訟援助の支給を停止することが明らかに不当と認められ場合にその限りでない。

  第34条 本条第2項の規定によって別の決定が行われていない場合、本法第27条の規定によって訴訟補助者のもっている業務が100時間に達したとき、訴訟援助は停止する。

 訴訟補助者の業務が100時間に達したとき、または100時間に近づいたとき、裁判所に届け出なければならない。裁判所は直ちに訴訟援助を打ち切るべきか否かを判断しなければならない。訴訟援助を継続すべき場合、裁判所はそれ以後、訴訟補助者が訴訟援助を受けることのできる時間を決定しなければならない。

  第39条の規定によって、法律扶助局が訴訟援助に関する問題について決定を行ったケースについては、本条第2項の規定は法律扶助局に適用される。

 訴訟援助費用の返還(Återbetalning av rättshjälpskostnader)

  第35条 第32条に規定されている理由によって訴訟援助が停止したとき、訴訟援助受給申請者は、相当と認められる限度において、受給した訴訟援助費(kostanaderna för rättshjälp)を国に返還しなければならない。

  第33条に規定されている事由によって訴訟援助の給付が停止された場合、訴訟援助受給手数料を超える訴訟援助費についてはその返還を要しない。

  第36条 異議の申し立てによって訴訟援助の支給決定が取り消された場合、訴訟援助費を受給している者は、訴訟援助費を自分で負担しなければならない。但し、相当と認められる事由がある場合、訴訟援助費の全部またはその一部の返還だけを命ずることができる。

  第37条 訴訟援助の受給申請者の過失または過怠によって訴訟援助料が増加したとき、受給申請者は訴訟援助料の責任がどのように配分されようと、増加分を負担しなければならない。訴訟援助受給者の法定代理人についても同様である。

 基礎資力(Ekonomiskt underlag)

 第38条 本法において基礎資力(ekonomiskt underlag)とは、本条第2項に規定されている扶養義務、財産関係および債務を考慮した訴訟援助受給申請者の計算された年収額(den räattssökandes beräknade årsinkomst)のことをいう。

  訴訟援助受給申請者が子に対して養育費を支払っている場合、子供1人につき15、000クローネとし、全体で75、000クローネが算定された年収から控除される。訴訟援助受給者の支払い能力が財産の取得または借財もしくはその他の事由によって著しく増減した場合、算定された年収は相当と認められる範囲において増減される。

 経済的基礎の算定に関する細則は政府または政府によって指定された行政官庁によって定められる。

 訴訟援助の決定(Beslut i rättshjäpsfrågor)

  第39条 法律問題に関する事件が裁判所に係属している場合、本法に規定される事項は当該裁判所において決定される。その他の場合においては法律扶助局(Rättshjälpsmyndigheten)が決定する。法律扶助局はまた、第30条第2項および第31条第3項に規定されている補償を支払うべき者を決定する。

 本法において裁判所について規定されている事項は、土地貸借委員会(arrendenämnd)および住宅賃貸借委員会(hyresnämnd)にも適用される。

 本法第17条第1項に規定されている調査を行うべきか否かについては訴訟補助者がこれを決定する。

 第40条 法律扶助局は最終的に訴訟補助者に対する支払い分が確定されたとき、訴訟援助受給申請者の訴訟援助受給手数料の額を決定する。

 訴訟補助者に対する補償は最終的に確定された訴訟援助受給手数料を控除した後、支給される。訴訟補助者が最終的に決定された額よりも多い手数料を申請者から受け取っている場合、訴訟補助者は余計に受け取っている金額を申請者に返還しなければならない。

 第41条 訴訟当事者の一方が訴訟援助を受給している事件の終結に関連して、訴訟の相手方、訴訟の共同当事者、申請者または申請者の法定代理人が本法第30条第1項、第31条第1項に規定されている費用が決定される。第37条に規定される返還義務に関する決定は、訴訟当事者が訴訟援助の受給者の場合、または訴訟援助の取り消しとの関連において行われる。その決定が裁判所または法律扶助局以外の公的機関において行われた場合、支払い義務は金額ではなくその全体または割合をもって提示される。

 債務者が破産事件において訴訟援助を承認された場合、補償義務に関する決定は遅くとも調査の確定に関連して行われる。

 第42条 第30条第2項および第31条第3項の規定に予定によって誰が支払うべきかという決定および第40条に規定されている訴訟補助者についての訴訟援助受給手数料および控除に関する決定は、訟援助費用に関する登録資料の電算機処理によって法律扶助局によって行われる。

 第30条第2項および第31条第3項に規定されている決定は、強制執行法の規定(bestämmelserna i utsökningsbalken)に基づいて執行される。

 異議の申し立て(Överklagande m.m.)

 第43条 本法に規定されている裁判所の決定に対する異議の申し立てについては、本条第2項に規定されている場合を除いて、原則として裁判所の決定に対する異議の申し立てに関する規定が準用される。

 訴訟補助者に対する補償問題についてなされた高等裁判所(hovrätt)または高等行政裁判所(kammarrätt)の決定については異議の申し立てを行うことができない。但し、訴訟法(rättegångsbalken)第54章第10条第1項第1号および行政訴訟手続法(förvaltningsprocesslagen (1971:291))第36条第1項第1号によって許可が与えられている場合、特別の事由がある場合、高等裁判所または行政高等裁判所決定に対する異議の申し立てを許可することができる。

 第44条 本法第17条第一項に規定されている調査に関する訴訟補助者の決定については異議の申し立てを行うことができない。

 第30条第2項、第31条第3項および第40条第2項に規定されている法律扶助局の決定については異議の申し立てを行うことができない。法律扶助局のその他の決定に対する異議の申し立ては法律扶助委員会(Rättshjälpsnämnden)に行う。

 法律扶助委員会の決定に対しては異議の申し立てを行うことができない。

 第45条 訴訟援助についての決定に対する異議の申し立ては、個人の当事者および裁判所事務総局によって行うことができる。異議の申し立ての期間は当事者の一方がその決定を知ったときから計算された場合であっても、裁判所事務総局はその決定が行われてから2ヶ月を越えて異議の申し立てを行うことができない。裁判所事務総局は個人のためにも異議の申し立てを行うことができる。

 第46条 裁判所事務総局(domstolsverket)は、第32条乃至第34条に規定されている訴訟援助の打ち切りに関する決定を請求することができる。

 第47条 訴訟補助者が報酬に対して異議の申し立てを行ったとき、特別の事由ある場合においてのみ、最終審においてその者の主張を根拠として新しい事情を援用することができる。

 法律扶助委員会(Rättshjälpsnämnden)

 第48条 法律扶助委員会(Rättshjälpsnämnden)は、専門的裁判官または裁判官であった委員長と弁護士から選任された2名の委員およびそれ以外の2名の委員によって構成される。委員はスウェーデン国籍を有する者でなければならない。委員は未成年者または親子法第11章第7条に規定されている管理後見に付されていないことが必要である。

 政府は委員を選任し、委員長を任命する。委員長および委員に対しては、1人もしくは複数の予備委員を設置する。また政府は適当と思われる予備委員を選任することができる。委員長および委員に関する規定は予備委員にも適用される。

 第49条 法律扶助委員会の決定は、委員長および弁護士から選出された委員と他の委員の2人以上の委員と共にこれを行うことができる。基本的に重要な意味をもっている事件または特別に重要な事件の決定に際しては全委員の出席を要する。

 事件が法律扶助委員会によって決定される場合、事件の決定に関しては訴訟法の規定が適用される。但し、委員長は、事件の決定に先立って最初に自分の意見を述べなければならない。

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 1.本法の規定は1997年12月1日から施行する。新法の施行と同時に旧法律扶助法(Rättshjälpslagen (1972:429))の規定を廃止する。

 2.但し、1997年12月1日前一般法律扶助給付または犯罪容疑者に対する法律扶助給付決定が行われている場合、または1997年12月1日前に一般法律扶助給付または犯罪容疑者に対する法律扶助給付申請が裁判所、法律扶助局または法律扶助給付について訴訟援助を決定すことのできる行政機関に提出されている場合、旧法律扶助法の規定が継続して適用される。以上 (菱木昭八朗訳1997.02.09)

参照:菱木昭八朗「スウェーデンの新しい法律扶助法」リーガル・エイド研究第2号(財団法人法律扶助協会発行97/11/15)


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