相続基金財団に関する法律

               [Lag (1994:243) om allmänna arvsfonden.

                                       1994年4月21日公布

  国会の決定によって次ぎのように定める。

 相続基金財団の財産(Allmänna arvsfondens egendom)

 第1条 相続基金財団(allmänna arvsfonden)は、相続(ärv)、贈与(gåva)、遺言(testamente)、保険金の受取人指定約款(formantagarforordnande i forsakringsavtal)または裁判所の決定(domstolsbeslut)によって、相続基金財団に帰属した財産によって構成される。

 相続によって相続基金財団に帰属すべき財産に関する規定は、「遺産に関する国際関係法」(Lagen (1937:81) om internationella rättsförhållanden rörande dödsbo)第1章第11条の規定によって相続基金財団に帰属した財産に対しても適用される。

 第2条 1会計年度内に相続基金財団に帰属した財産の中からその10分の1が、毎年、年度末に相続基金財団の基本財産の中に組み入れる。それ以外の財産及びその年度内に生じた利息は、その翌年度、助成金として配分され、もしくは相続基金財団の基本財産の中に組み入れることができる。

 第3条 相続基金財団に対してなされた遺贈または贈与が負担付きの場合、国有財産管理局(Kammarkollegiet)は、その遺贈または贈与を受け入れるべきか否かを決定しなければならない。

  1. 相続基金財団以外の者に対する遺贈であっても、異議の申し立てがない場合、国有財産管理局によって受け入れることができる。遺言によって死者の最終意思(arvlatarens yttersta vilja)が確認できる場合、異議の申し立て事由が存在する場合であってもその遺贈を受け入れることができる。

 相続基金財団の目的(Allmänna arvsfondens ändamål)

 第5条 相続基金財団の目的は、青少年(barnungdom)及び機能障害を持つている者(person med funktionshinder)のための福祉事業を助成することにある。

 第6条 相続基金財団からの助成金は、先ず第一に、新しく始められた福祉活動及び継続的に行われている福祉活動に対して優先的に配分される。相続基金財団からの助成金を必要とする特別の事由が存在する場合、施設、設備、場所等の取得のために支給することができる。

 第7条 第6条の規定の基づく助成金は、福祉活動を行っている団体に対して支給される。第6条前段の規定は、特別の事由がある場合、公法人(offentlig huvudman)に対しても適用される。

 但し、助成金は個人(enskilda personer)に対して給付してはならない。

 助成金の配分(Stöd ur Allmänna arvsfonden)

 第8条 助成金の配分は、政府または政府の委任により相続基金財団評議委員会(Arvsfondsdelgationen)もしくはその他の官庁によって決定される。

 第9条 相続基金財団に対する助成金の受給申請は、助成を必要とする資料を添付し、書面によってこれを行わなければならない。

 申請書には、申請者もしくはその代理人の署名がなければならない。

 助成財産の分離管理義務(Skyldighet att hålla medel avskilda)

 第10条 相続基金財団から助成を受けた者は、助成決定に別段の定めがない限り、助成財産を自己の財産と分離して管理しなければならない。

 助成金の使途説明及び返還義務(Redovisning och återbetalningsskyldighet)

 第11条 相続基金財団から助成を受けた者は、助成金受領後、一定期間内に、書面によって、その助成金の使途方法を報告しなければならない。

 第12条 次ぎに掲げる場合、助成金を返還しなければならない。

  1. 助成金が所定の期間内に使用されなかった場合もしくは所定の目的に使用されなかった場合
  2. 助成金の給付を受けた者が、所定の期間内に助成金の使途方法について報告しなかった場合
  3. 助成金の給付を受けた者が、助成金の使途方法について虚偽の報告を行った場合、もしくは助成金の給付を受けた者が、そのことを知りながら、不当な方法で必要以上の助成金の請求を行った場合

 第13条 助成金の受給者から使途報告を受理した官庁が、助成金の返還を命ずる必要があると判断した場合、その事件の処理を国有財産管理局に移管しなければならない。特別の事情がある場合、国有財産管理局は、受給者に対して助成金の全部もしくはその一部の返還を命ずることができる。

 財産管理(Förvaltning)

 第14条 相続基金財団に帰属した財産は、国有財産管理局によって、特別の基金として管理される。

 第15条 相続基金財団の所有する財産に対する権利は、国有財産管理局によって行使される。

 第16条 相続基金財団に帰属した財産は、国有財産管理局に引き渡されなければならない。国有財産管理局は、相続基金財団に帰属した財産に関する管理報告書を受領し、その内容を審査しなければならない。

 特別代理人(God man)

 第17条 被相続人が死亡したとき、相続基金財団以外に相続人となるべき者がいなかった場合、もしくは相続基金財団が受遺者となっている場合、死者の財産を管理している者は、国有財産管理局にそのことを届け出なければならない。その場合、国有財産管理局は、国有財産管理局に代わってその財産を管理する特別代理人を選任しなければならない。

 第18条 次ぎに掲げる場合、特別代理人の選任を要しない。

  1. 遺言によって相続基金財団が全く相続から排除されている場合で、且つ、国有財産管理局において異議の申し立てを行う必要がないと判断した場合
  2. 相続法人(dodsbo)の債務がその財産を超えている場合で、且つ、その財産を管理するため特別代理人を選任する必要がない場合
  3. 相続基金財団に特定遺贈として帰属した財産が金銭の場合

 第19条 贈与によって相続基金財団に帰属した財産が金銭以外の財産を含んでいる場合、国有財産管理局はその財産を管理するため特別代理人を選任しなければならない。 

第20条 国有財産管理局は、特別代理人がその職務を履行しているか監督しなければならない。

 本法に規定されている特別代理人については、取引法(handelsbalken)第18章に規定されている受任者(syssloman)に関する規定が適用される。

 相続基金財団に帰属した財産の売却等(Försälning av fondens egendom m.m.)

 第21条 政府、または政府の委任によって国有財産管理局は相続基金財団に帰属した不動産、もしくは公有地借地権(tomträtt)の売却を決定することができる。

第22条 公有地借地権以外の動産については、国有財産管理局において別の決定が行われていない場合、特別代理人はその財産を競売に付すことができる。

 債権についてはそれが回収できない場合においてのみ売却することができる。

 遺言によって別段の定めがある場合、遺言の規定に従う。

 第23条 相続財産(dödbo)の中に親子法第11章第3条の規定によって選任された特別代理人によって管理されている財産が存在している場合で、且つ、その財産が相続基金財団に帰属する場合、その財産の売却については第21条、第22条の規定が適用される。

 第24条 被相続人の意思表示、もしくはその他事情から、そのことが被相続人の最終意思に合致すると思われる場合、相続基金財団に帰属した相続財産または保険金の受け取り権の全部もしくはその一部を第三者のために放棄することができる。それ以外の場合であっても、そのことが相当と思われる場合、被相続人の親族または被相続人と特別の関係にあった者のために、相続財産もしくは保険金の受け取り権の全部またはその一部を放棄することができる。

 第25条 文化史的に、もしくは自然環境、文化環境保護の観点からみて重要な意味を持っている相続財産については、適切な方法でその財産を管理できる法人のためにその財産を放棄することができる。

 特別の事由が存在する場合、その財産を管理するために必要があるとき、その財産と共に相続基金財団に帰属した金銭を当該財産を引き取る者のために放棄することができる。

 第26条 政府、または政府の委任により国有財産管理局は、相続権または保険金の受け取り権を放棄することができる。

 第27条 相続基金財団に帰属した相続財産または保険金の受け取り権の全部もしくはその一部の放棄を請願しようとする者は、国有財産管理局に対してその請願を申請することができる。国有財産管理局が相続放棄の請願申請を受理した場合、国有財産管理局は被相続人が最後に住所を有していた県の県行政府に対して請願申請の調査を依頼することができる。

 国有財産管理局が請願について最終決定を行うことができない場合、国有財産管理局は、自己の意見を付して、その請願書を政府に移送しなければならない。

 相続放棄の請願は被相続人が死亡した時から、もしくは時効によってその財産が相続基金に帰属した時から3年以内にこれを行わなければならない。

 その期間を超えて相続放棄の請願がなされた場合、その請願は却下されなければならない。

 異議の申し立て(Överklagande)

 第28条 第13条及び第27条第4項の規定に基づく国有財産管理局の決定に対して異議ある場合、行政地方裁判所(Länsrätten)に異議の申し立てを行うことができる。それ以外の本法の規定によって行われた決定については異議の申し立てを行うことができない。

 費 用(Kostnader)

 第29条 助成金の配分に要する費用は、政府の決定に基づいて、相続基金財団によって負担される。

 第30条 本法に規定されている相続基金財団の管理に必要な費用は、政府の定めるところにより相続基金財団によって支払われる。

 国会への報告(Redovisning till riksdagen)

 第31条 政府は毎年、1月31日までに国会に対して、前年度の相続基金財団の収支及び次年度の助成計画を報告しなければならない。

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 この法律は、1994年7月1日から施行する。この法律の施行と共に「1928年法律第281号相続基金財団に関する法律」(Lagen (1928:281) om allmänna arvsfonden)を廃止する。

 但し、次ぎに掲げる場合、旧法の規定が適用される。

  1. 本法施行前に行われた助成または相続放棄に関する決定
  2. 旧相続基金財団法第7条の規定に基づいて本法施行前に行われた地方裁判所に対して行われた届け出
  3. 本法施行前に行われた相続財産の放棄申請

以  上


相続基金財団規則

(Förordning om Allmänna arvsfonden;utfärdad den 9 juni 1994.

 政府は相続基金財団規則を次のように定める。

 相続基金財団評議委員会(Arvsfondsdelegationen)

 第1条 相続基金財団評議委員会の任務は、相続基金財団からの助成金の配分、助成金配分のためのプロジェクトの点検、相続基金財団の目的及び相続基金財団から支払われている助成金の配分対象領域等を広く国民に知らせることにある。

 第2条 相続基金財団評議委員会は、相続基金財団法第8条に規定により、相続基金財団からの助成金の配分の問題を審議する。政府は、特別の目的のために助成金を支出する場合、相続基金財団評議委員会以外の官庁に相続基金財団からの助成金配分の審議を委任することができる。

 第3条 次に掲げる場合、相続基金財団評議委員会は、助成金の配分に関し、その決定を政府に委ねなければならない。

  1. 問題が原則的に重大、且つ重要な意味をもっている場合
  2. 相続基金財団委員会において助成額が300,000クローネを超える場合で、且つ政府がその助成金の配分に関して別段の定めを行っていない場合

 第4条 相続基金財団評議委員会は最高7人の委員をもって構成される。相続基金財団評議委員会委員は、所定の期間(en bestamd tid)、政府によって任命される。

 政府は相続基金財団評議委員会委員長と副委員長を選任する。その任期は所定の期間とする。

 第5条 相続基金財団評議委員会は、職務規定に従って、もしくは特別の決定に基づいて委員長、副委員長、その他の委員もしくは委員のグループに対して相続基金財団評議委員会によって審議される必要のない問題に関して、その決定権を委任することができる。

 相続基金財団に対する助成金の申請手続き

 (Ansökan om stöd ur Allmänna arvsfonden)

 第6条 相続基金財団から助成金の交付を受けようとする者は相続基金財団評議委員会または本法第2条の規定に基づいて政府が相続基金財団からの助成金の配分に関して他の官庁にその審査を委任している場合にはその官庁に助成金の申請を行わなければならない。

 第7条 相続基金財団からの助成金申請書には助成金申請の目的となる事業、予算計画、事業の行われる場所、事業目的と実行計画を記載しなければならない。

 助成金申請書には助成金申請団体の規約、最近の事業結果報告書、理事会の構成に関する資料を添付しなければならない。

 第8条 相続基金財団からの助成金申請書に本法第7条に規定されている事項が記載されていなかった場合、主務官庁は相当期間内にその申請書の訂正を求めることができる。申請者がその訂正要請を受け入れなかった場合、助成金配分官庁は申請書の記載事項に従って、その助成金申請を審査することができる。

 国有財産管理局に対する報告

 (Underrättelse till Kammarkollegiet)

 第9条 人が死亡したとき、地方裁判所(tingsrätt)は、死者に相続基金財団以外に相続人となるべき者がいなかった場合、もしくは相続基金財団が包括的受遺者(universell testamentstagare)となっている場合、国有財産管理局(Kammarkollegiet)に報告しなければならない。裁判所において、被相続人に相続基金財団以外の相続基金財団に優先して相続人となる者がいないということが知られていない限り、裁判所が相続法第16章第1条または第2条の規定によって不在相続人または知られていない相続人に対して相続に関する公示催告を行わなければならない。

 相続基金財団からの相続財産の放棄(Arvsavstående)

 第10条 国有財産管理局は、相続基金財団法第24条、及び第25条の規定に基づいて、ある者から相続放棄の申請が行われ、且つその相続財産目録による財産の評価額が2,000,000クローネを超える場合、相続放棄に関する決定を行うことができる。

 相続基金財団に帰属した相続財産の放棄に関し、公共の福祉の観点からみて特に重要な問題が生じた場合、国有財産管理局は自己の意見を添えて、その事件をを政府に移送することができる。

 相続基金財団に帰属した不動産の売却

 (Försaljning av Allmänna arvsfondens fasta egendom m.m.)

第11条 相続基金財団に帰属した不動産は、可及的速やかに、可能な限り最高価格(hogsta mojliga pris)、且つ合目的的方法(på ett ändamålsenligt sätt)をもって売却処分に付さなければならない。

 第12条 国有財産管理局は、その財産の状況、性質、もしくは次に掲げる事由がある場合、関係コミューンまたは政府機関に対して通知を行わなければならない。

  1. 公共の福祉(samhallsbyggnadsandamal)のために,当該コミューンまた は政府機関がその財産の取得を必要とする場合、
  2. コミューンまたは政府機関が財産監視するため、その財産の取得を必要がある場合

 第13条 相続基金財団の所有している財産処分の問題は、その財産の価格が最高10,000,000クローネ (10 mjljoner kronor)までの場合には公有財産管理局によって、その価格がそれ以上の場合には政府によって審査が行われる。

 ここに財産の価格とは課税評価額(taxerinjgsvärdet)、課税評価額がない場合には時価価額をもって評価額とする。

 第14条 財産の売却処分は国有財産管理局によって行われる。

 国有財産管理局は政府内の他の官庁に財産の処分を委ねることができる。

 第15条 相続基金財団の財産が公共の利益を目的として、あるコミューンに売却される場合で、且つコミューンと国有財産管理局の間に売買代金、その他取引の条件について協議が調わない場合、売買当事者は政府・コミューン土地委員会(Stats-kommunala marknamnden)に、問題の解決を委ねることができる。

 第16条 恒久的に使用されている住居の売却については、その建物の存在するコミューンが、公共の利益の観点からみて、特にその建物を必要とする事由がないことを国有財産管理局に届け出た場合、国有財産管理局はその建物の借家人に対して市場価格でその財産を処分することができる。

 第17条 国有財産管理局は本規則第11条乃至第16条に規定されている業務の執行のため特別の細則を設けることができる。

 第18条 本規則第11条乃至第17条の規定は公有地借地権(tomträtt)にも適用される。

 異議の申し立て(Överklagande)

 第19条 本規則の規定に基づいて行われた国有財産管理局の決定に対して異議の申し立てを行うことができない。本規則第15条の規定に基づいて行われた政府・コミューン土地委員会(Stats-kommunala marknamnden)の決定についてもまた同様である。


  1. この規則は1994年7月1日から施行される。本規則の施行に伴って、地方裁判所の国有財産管理局に対する報告に関する規定(Kungl.Majt:scirkular (1972:645) till tingsratterna om vissa meddelanden till kammarkollegiet,m.m.)、相続基金財団所有財産の売却に関する政令(förordningen (1991:952) omforsaljning av allmanna arvsfondens fasta egendom m.m.)、及び児童・青少年委員会に関する政令(förordningen (1992:105) om Barn- och ungdomsdelegationen)はその効力を失う。
  2. 1994年7月1日前までに、児童・青少年評議委員会(Barn- och ungdomsdelegationen)の処分に委ねられた特別の目的のために交付された助成金については、児童・青少年評議委員会(Barn- och ungdomsdelegationen)は、1994年の末日までその処分の権限を行使することができる。その場合、児童・青少年評議委員会に関する政令(förordningen (1992:105) om Barn- och ungdomsdelegationen)はその効力を持続する。

                                            以 上(菱木昭八朗訳)参照:菱木昭八朗「スウェーデンの相続基金財団について」家庭裁判月報第47巻第11号(最高裁判所事務総局発行:平成7年11月)


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