第7章 扶養義務について

(7Kap. Om underhållsskyldighet)

 

 第1条 親は、子の必要性と父母の総合的な資力からみて相当とみなされる範囲において、子を扶養しなければならない。親の扶養義務を定める場合、子本人の収入、資産及び子が支給を受けることのできる各種公的年金を考慮しなければならない。

 子が18歳に達したとき、未だ就学中の場合、または19歳に達する前に復学したとき、親はその子が21歳に達するまで扶養の義務を負う。ここに学校とは基礎学校(grundskolan)または高等学校(gymnasieskolan)もしくはそれに類する教育機関(annan jämförlig grundbildning)のことをいう。

 

 第2条 父または母は、次に掲げる場合、子に対して一定の扶養料を支払うことによって扶養の義務を果すことができる。

   1.子に対する監護権をもっていない父または母が子と継続的に生活していない場合、または

   2.父母が共同して子に対する監護権をもっている場合で、且つ子が父または母のいずれか一方のみ継続的して生活を共にしている場合

 扶養料は判決または契約によって確定される。

 子の監護者が未成年者であっても、扶養料に関しは子を代理することができる。後見人もまた扶養料について子を代理することができる。扶養契約は子の出生前でもこれを締結することができる。(1994:1433,1996:1031)

 第3項の規定によって子を代理することのできる者は、子に対する扶養事件において、扶養問題に関して意見を述べることができる。

 

 第2a条 養育費補助法(lagen (1996:1030) om underhållsstöd)の規定によって返還義務を負う者は、子に対して支給された扶養料補助の範囲内で、扶養料の支払い義務を履行したものとみなされる。〈1996年法律第1031号により追加〉

 

 第3条 第2条の規定によって扶養料が決定される場合、扶養義務者は第2項乃至第4項の規定により、自己または家族の日常生活を維持してゆくために必要な金銭を留保しておくことができる。

 扶養義務者自身の生計費留保額には、扶養義務者が日常生活を維持してゆくために必要なすべての生活費が含まれるものとする。住居費は相当とみなされる範囲において計算される。住居費以外の生計費については、基準額をもって計算される。基準額は普通保険法に規定されているバ−スベロップの120パ−セント相当額とする。

 特別の事情がある場合、扶養義務者は、生計を共にしている配偶者のために一定額の金銭を留保しておくことができる。扶養義務者との間に子のいる者が、継続的に、扶養義務者と生計を共にしている場合、その者は配偶者と同様に取り扱われる。留保額は第2項の規定にしたがって計算される。但し、その基準額はバ−スベロツプの60パ−セントとする。

 扶養義務者が2人またはそれ以上の子に対して扶養義務を負っている場合であっても、扶養義務者は自己の許において生活を共にしている子に対して、継子を含めて子の1人に付きバースベロップ40パーセントを留保しておくことができる。但し、特別の事情のある場合、諸般の状況からみてそのことが必要と認められるとき、裁判所は、別に留保額を定めることができる。

 

 第4条 第2条の規定によって、子に対して扶養料を支払うべき者が継続して5日以上、または1暦月の間に6日以上、子を自分の許に滞在させた場合、扶養義務者は、扶養料の支払いに際し、子の滞在期間中、子の滞在費として、1ケ月分の扶養料の中から、1日あたり扶養料の40分の1を控除することができる。但し、その控除額は滞在期間終了後、6ケ月以内の扶養料から控除しなければならない。控除額の計算に際し1クロ−ネ以下の端数が生じた場合、その端数は切り捨てられる。

  特別の事由がある場合、裁判所は第1項に定められている条件と異なる条件を決定することができる。但し、当事者からの反対の意思表示が行われた場合、扶養料に関する訴えが提起される以前にはその命令を行うことができない。

  扶養料の額が主として父母いずれか一方に子が引き取られることを考慮して決定されている場合、子を引き取り扶養している者は子の滞在費について控除権を行使することができない。(1979:1066)(1998年法律第319号により改正)

 

 第5条 他人の子と生活を共にしている者で、且つその子について監護権をもっている者と継続的に生計を共にしている場合、その者が子の監護権者と婚姻しているとき、または子が監護権者との間に生まれた子の場合、その者はその子に対して扶養の義務を負う。特別の事由がある場合、子が別居している場合であっても扶養の義務を負う。

 扶養の義務は、第1条の規定によって、親の場合と同様の方法をもって決定される。但し、子がその子と生活を共にしていない親から扶養料の支払いを受けている場合、その分については本条の規定は適用されない。

 

 第6条 第2条の規定によって扶養料を支払うべき者以外の者が扶養義務を怠っている場合、裁判所はその者に対して扶養料の支払い命ずることができる。

 

 第7条 扶養料は毎月、月の始めに、前金で支払わなければならない。

 将来の扶養料を一括して支払うことを定める契約または3ケ月より長い期間の扶養料を一括して支払うことを定める契約を締結する場合、保証人2人の署名のある書面によってその契約を行なければならない。子が18歳未満の場合、子または子の監護者が継続して居住している地区の社会福祉委員会の承認を受けなければならない。監護者の双方がスウェ−デン国内に住所をもっていない場合、ストックホルムの社会福祉委員会においてその承認を受けることができる。

 特別の事由のある場合、裁判所は第1項の規定と異なる支払い方法を定めることができる。

 扶養料の支払い方法が一括払いの形で定められている場合で、子が18歳未満のときは、その扶養料は社会福祉委員会に払え込まなければならない。その支払いには第4章第6条第2項後段の規定が適用される。

 本条の規定に反して扶養料が支払われた場合、扶養義務者は本章の規定による扶養料の支払い義務を免れることができない。(1983:397)

 

 第8条 扶養料の確定に関する訴えが提起された場合、その訴えが提起されたときより3年以上に遡ってその請求を認めることができない。但し、扶養義務者がその請求を容認した場合にはその限りでない。

 

 第9条 確定されている扶養料の支払い請求権は第2項または第3項に規定されている場合を除いて、履行期日の到来後、5年をもって時効により消滅する。

 前項の規定に定められているときより前に扶養料に対する強制執行が行なわれた場合、または扶養義務者が破産宣告を受けた場合、扶養料は、差し押え財産または破産財団の中から支払われるものとする。

 第1項に定められている時点以前に会社更生法(Lag (1996:764) om företagrekonstruktion)により会社更正が行なわれた場合、会社更正停止決定が行なわれた時から3ケ月以内に扶養料の請求を行わなければならない。強制和議が成立した場合、扶養債権は、和議が行われたときから3ヶ月以内にその請求を行うことができる。扶養料に対する強制執行、または破産宣告申請が上記期間内に行なわれた場合、第2項の規定が適用される。

 本条の規定に反する契約は無効とする。(1994:1963)(1996:766)

 

 第10条 事情の変更によって扶養料を定めている判決または契約の内容を変更する必要性が生じた場合、裁判所は、その判決または契約を変更することができる。但し、訴えが提起される前までの変更は、相手方が反対の意思表示をした場合、未払い分の扶養料を減額または免除する方法においてのみこれを行うことができる。

 扶養契約は、その内容が、周囲の状況またはその成立の事情、その他諸般の事情からみて不当とみなされる場合、裁判所はその内容を変更することができる。但し、既に支払われている扶養料については、相当の事由のない限り、その返還を認めることができない。

 扶養料の改訂に関する法律第1条の規定に定められている以外の方法で、6年間、扶養料の変更が行なわれなかった場合、裁判所は第1項、第2項の規定により変更の理由を援用する必要のない場合であっても、その訴えが提起された後の扶養料の見直しを行わなければならない。

 子が一定の年齢に達するまでの間の扶養料を定めた扶養判決または扶養契約は、それ以後の子の扶養料に関する問題の審理を妨げるものでない。

 

 第11条 1996年法律第1031号により削除

 

 第12条 子の扶養料に関する訴えは、被告の住所地を管轄する地方裁判所に提起しなければならない。子の扶養料に関する請求は、父性の確定、離婚または子の監護もしくは子の居所決定に関する裁判の中でその申し立てを行なうことができる。(1998年法律第319号により改正)

 

 第13条 そのことが調査、審理のために有効と認められる場合、扶養料の支払いに関する二つまたはそれ以上の訴訟は、一つの訴訟において処理することができる。その場合、第12条の規定により訴訟の一つを取り上げることのできる裁判所は、上記の規定に拘らず、訴訟においてその訴えが提起された場合、その訴訟を当該裁判所において審理することが相当とみなされる場合、裁判所は訴訟の中からその一つを取り上げることができる。

 裁判所は第1項の規定により統合された訴訟を再び分離して審理することがで  きる。

 複数の者の中から子の父が確定される場合、裁判所は扶養料の訴えに関し、父性が確定判決によって確定するまで、最終審理を行うことができない。

 

 第14条 子に対する扶養料はそれぞれの扶養期間について異なる定めを行うことができる。扶養裁判において、第11条の規定によって子の扶養料を確保するために監視を行うべき社会福祉委員会は、子に代わって扶養の訴えを適することができる。子のために訴えを提起することのできる者は、扶養事件において自己の意見を述べることができる。

 扶養料は扶養期間の一部について、異なる額を定めることができる。

 裁判所は18歳に達した後の子の扶養については、扶養義務者の意思に反して、確実に扶養義務があると判断されるまでは扶養料の決定をしてはならない。(1996:1031)

 

 第15条 裁判所は子の扶養に関する訴訟において、確定判決また最終決定によってその問題が解決されるまでの間、相当と思われる範囲において、扶養に関し暫定的決定を行うことができる。但し、扶養義務を課すべき正当な事由のある場合でなければその決定を行うことができない。扶養に関する問題が子の父性確定の問題と関連して提起されたとき、その訴訟において複数の者が被告となっている場合、裁判所は扶養料の支払い義務に関する決定を行うことができない。

 前項に規定する決定は口頭弁論なしに行なわれる。決定の言い渡しに先立って、訴訟の相手方はその問題に関し意見を述べる機会を与えられる。その決定は最終判決の言い渡しが行われるとき改めて審理される。

 本条による決定は確定判決と同様の方法で実現される。但し、その決定は裁判所において何時でも変更することができる。(1987:790)

 

 第16条 ある者が証人二人の署名のある書面によって、父性に関する血液検査が確定するまでの間、子に対して扶養料の支払いを引き受けた場合、その扶養料の執行については本法に規定されている扶養債務の執行に関する規定が適用される。

 前項の規定によって行われた扶養料の引き受けについては、第15条の規定によって、裁判所が子に対する扶養料の支払いを命じたときに適用される法律またはその他の規則が適用可能な範囲において適用される。(1979:339)

 

 第17条 扶養料を支払った者が国から補償を受ける場合、扶養料の補償に関する法律の規定が適用される。(1979:339)

 

 第18条 子の父と推定された者が、そのことによって子のための生計費を支払った後、父と推定された者以外の者が子の父であることが判明したとき、先に子の父とされた者は、特別の事情があるに限り、他の一方に対して子のために支弁した費用を請求することができる。(1979:339)

 

第19条 扶養訴訟において子が敗訴した場合、訴訟法第18章の規定と異なって、次の規定が適用される。

 特別の事由がある場合、裁判所は各当事者に対して、それぞれ自分の訴訟費用の負担を命ずることができる。特別の事由が存在しない場合で、且つ訴訟において子が生活を共にする親によって代理されている場合、子に代わってその親に対して相手方訴訟費用の負担を命ずることができる。(1985:358)

 

参照 扶養料の減額に関する法律Lag (1990:668) om nedsattning av vissa underhallsbidrag

支払った扶養料の補償に関する法律[Lag (1969:620) om ersattning i vissa fall for utgivna underhallsbidra

 

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